News 2000年10月5日 11:23 PM 更新

iモードで商品を注文,受け取りはローソンで──ローソンやドコモなど4社,携帯活用のECで新会社を設立

ローソンとNTTドコモなど4社は,iモードを利用したECサービス会社を月内にも設立。iモードで商品を注文し,コンビニ店頭で受け取れるサービスを来春に開始する。

 ローソンと松下電器産業,三菱商事,NTTドコモは10月5日,iモードとローソン店舗を利用したECサービス会社「アイ・コンビニエンス」を設立することで基本合意したと発表した。新会社は,iモード端末で商品を注文し,ローソンの店頭で代金決済や商品の受け渡しを行う24時間サービスを提供する。物販に加え,iモード端末とローソンのキオスク端末「Loppi」とを連動させたポイント制度なども導入していく予定。サービスは2001年3月に開始する。


新会社を設立する4社の代表。左から三菱商事の佐々木幹夫社長,ローソンの藤原謙次社長,松下電器産業の中村邦夫社長,NTTドコモの小野伸治常務

 新会社は10月末に都内に設立される予定で,資本金は20億円。ローソンが51%,松下と三菱商事が18%ずつ,NTTドコモが13%を出資する。社長はローソンが派遣する方針で,社員は各社から出向により20〜30人程度になる見込み。ローソンは47都道府県の約7500店の店舗と物流網,松下はシステム開発・運用など技術支援,ローソンの大株主である三菱商事は,コンテンツや協力先のグローバルな調達を担当する。

 新会社は,iモード対応携帯電話とローソン店舗を連携させるECサービスに特化する。具体的には,まず来年3月に,CDやDVD,書籍などの物販や宿泊チケットの取り扱いを開始。2001年夏には,Loppiで購入できるゲームや花の注文も開始する上,iモードで提供されている地図や株式情報などを店頭のプリンタで印刷したり,iモードで貯めた割引クーポンを店頭で利用できるようにするなど,iモードと店舗を連携させたサービスもスタートさせる。

 2002年以降,Java対応端末やW-CDMA端末を使い,ユーザーの購買履歴に応じて商品を推薦する「ショッピングエージェント」の導入や,動画や音楽などマルチメディアコンテンツの配信も手がけていく考えだ。さらに携帯電話と次世代Loppi,POSレジとをBluetoothや赤外線で結び,クーポンやポイントを発行するサービスも具体化していくという。

 ローソンやドコモでは,4日現在で約1280万人の加入者を抱えるiモードと業界2位の規模を持つローソンが組むことで,今後の急速な成長が見込まれるモバイルECにおけるデファクトスタンダードを目指す。2005年の新会社の取扱高は,約1000億円を見込んでいる。

「1300万台のLoppiが手の中に」

 ローソンはキオスク端末のLoppiをいち早く店頭に設置して旅行券やゲームソフトの販売などを開始。「今年,Loppiからの売上は400億円」(同社)という実績を上げている。また7月にはデジタルガレージとECで提携,LoppiをEC端末として活用していく計画を発表している(7月7日の記事参照)。新会社を設立する4社は今年5月,「モバイルe kioskプロジェクト」を発足させ,事業化に向け検討を重ねてきた。

 ローソンにとって,iモード端末は「ユーザーの手の中にあり,そして24時間どこでも利用できる1300万台のLoppi」(ローソン新規事業本部の青木輝夫副本部長)。iモードの主要ユーザー層である若者はコンビニエンスストアのメイン顧客層とも重なる。

 さらにLoppiやPOSレジは,新機種への更新に時間と莫大なコストが必要だが,携帯電話はスペックアップが常に行われる上,ユーザー自らが積極的に新機種に変更してくれる。そのため「高機能なサービスが順次提供可能になる」(同)といいことづくめ。ローソンは,モバイルEC自体の売上効果に加え,「公共料金支払いに訪れる客は1店舗に1日平均で28人。新サービスでも早くこの程度の客を獲得したい」(ローソンの藤原謙次社長)と集客力の向上にも期待をかける。

 コンビニエンスストアを活用したECでは,業界1位のセブン-イレブン・ジャパンが,ソニーや三井物産ら7社と共同でセブンドリーム・ドットコムを設立(1月6日の記事参照),7月にサービスを開始している。また業界3位のファミリーマートと4位のサークルケイ・ジャパンなど17社が,携帯端末や店頭キオスク端末に情報を配信するサービス会社を合弁で設立している(7月4日の記事参照)。

 ローソンはNTTドコモのiモードという“鍵”を握ったことで,成長確実なモバイルECのメインプレーヤーを狙う。三菱商事にとっては,出資先のローソンの企業価値の増大,松下にとっては「最重要課題」(中村邦夫社長)というモバイル分野でのシステム構築とサービス開発で実績を上げることができる。

 NTTドコモも,「iモードとコンビニエンスストアがこれほど普及している日本ならではの成功事例にしたい」(モバイルマルチメディア事業本部長の小野伸治常務)と意気込む。だがその一方で,「まずは新会社の立ち上げと新ビジネスモデルの確立が大事。だが,その後でほかの会社から話があればその都度検討する。iモードはオープンなものだから」(同)。モバイル分野のキャスティングボートを握る,ドコモならではのしたたかな戦略も垣間見せた。

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[小林伸也, ITmedia]

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