News | 2000年10月13日 06:15 PM 更新 |
米Microsoftが来年リリースを予定している「Office 10」。それに同梱されるLocal Web Storage System(LWSS)をOutlookのメッセージ保存庫として見た時の話は,別記事の中で既に紹介した通りだ。しかし,この仕組みはExchangeだけのために作られたものではない。Webストレージに収めるすべての情報や,Webベースのアプリケーションもまた,ローカルハードディスクの中で動作させることができる。
たとえば,Office 10に同梱されるWebアプリケーション開発ツール「Office Designer」で開発したWeb FormsをWeb Storage System(WSS)に登録しておくとしよう。ブラウザ,あるいはOutlookのWeb Form表示機能でアプリケーションを呼び出せば,当然ながらきちんと動作する。
異なるのはこの先だ。使っているPCのネットワークが突然切断されたとしても,WSS上のアプリケーションはLWSSがWSSの代替わりをすることで,そのまま動作できる。実際,デモでは動作中にネットワークケーブルを切って見せ,問題なく動作することを証明してみせた。
つまりこういうことだ。WSSはストレージサービスとして機能しているWebサーバと言えるものだが,全く同じ機能を持つサーバをクライアント側に持たせたのがLWSSなのだ。ユーザーは「Internet Explorer」や「Outlook 10」などを通じてWSSにアクセスしているように見えて,実はLWSSがプロキシサーバのように間を仲介し,WSSと通信する。LWSSはWSSにアクセスできないときは,透過的にローカルの情報を送出するので,WSSを利用するアプリケーションはオンラインかオフラインかを切り替えることなく,シームレスにオフライン操作を行うことができる訳である。
細かな点について考えると
1. キャッシュされた情報が自動的に消去されることはないのか(たとえばWindows 2000のオフラインフォルダはハードディスクの状況に応じてサイズが変化するため,すべてのファイルが存在する保証がない)
2. Webアプリケーションがキャッシュされる際,依存関係にある情報(参照するファイルやデータベース)を判別してダウンロードしているのかといった疑問も沸いてくるのだが,ハッキリした答えは現段階では不明である。
なお,LWSSには複製マネージャと呼ばれるモジュールが含まれており,キャッシュされている内容が最新かどうかを管理,同期する仕組みを持っている。またLWSS/WSSをデータベースにするアプリケーション側の実装で,特定の情報だけをあらかじめ複製しておくこともできる(Outlook 10のフォルダをオフラインですべて同期させておくなど)。
取材の前,Web Storeの進化形として,あらゆる情報をXMLデータベースとして保存,HTTPでアクセスできるXML Storeが存在すると考えていたのだが,現在のWeb StoreすなわちWSSは,既にXMLストアとして機能しているようだ。
というのも,Outlook 10を用いてExchange 2000に作成した住所録,スケジュール,メモなどの情報は,すべてXMLデータとしてWSSに保存されていたからだ。Exchange 2000に深く関わる開発者には当然のことなのかもしれないが,少なくともOutlookが標準で使っているフォームの保存形式はXMLになっているのだ。
たとえば,Outlook 10で作成した住所録アイテムに対し,HTTPプロトコルでWSSにアクセスすると,XMLで構造化された住所録アイテムの中身が届く。これを利用して,XMLデータをHTMLやCHTML,WMLといったマークアップ言語に変換すると,Outlookで管理している情報をWebブラウザ,携帯電話などで閲覧することができる。
あるいは,Outlookが利用しているXMLスキームに合わせてビューアを作成すれば,プロセッサパワーの低い(たとえばPalm)デバイスで,Outlookの情報を活用することができる。インターネットに接続して情報を閲覧するもよし。XMLデータを保存しておいてオフラインビュー可能にするもよし。非常に簡単にデバイスに依存しない情報のインフラとして利用できるわけだ。
ここではOutlookのデータだったが,WSSをデータベースとして利用するマイクロソフトのソフトウェアは,すべてのデータをXMLで保存していると思われる。リポジトリとしてのWSSが,どの程度のパフォーマンスを持っているのかは,Exchange 2000の詳細な評価を待つ必要があるが,XMLへのコミットを知ってはいたものの,これほど同時期に各種の要素がそろってくるとは思わなかった。
あれだけの大きな会社が一気に方向転換をする身軽さを持ち合わせる。製品の優劣は市場が判断を下すだろうが,それとは別に「.NET」(6月23日の記事を参照)へ着々と歩むマイクロソフトの底力を垣間見た。
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