News 2000年10月12日 07:49 PM 更新

Outlookの新版登場,目玉はあるが変化なし

米Microsoftは,MEC2000で「Outlook 10」を紹介した。Local Web Storage Systemへの対応など,大きな機能追加がある一方で,検索機能の改善はなんとUIだけ!?

 ここは1つ,告白をしておこう。私は自分のパソコンに「Outlook」をインストールして愛用している。設定を間違えるととんでもないメールが送られるとか,動作が重くてしょうがないとか,全文検索をすると遅すぎてタバコの本数が増えるなど,さまざまな批判を受け続けながら,Outlook(しかも個人向けのインターネットモードではなく企業モード)を,わずか2人の事務所のサーバとともに動かしている。

 なぜOutlookを使っているか(使わざるを得ないか)をクドクドと書いても仕方がないが,このクライアントソフトは使いやすい部分がある反面で,かなり間抜けな製品でもあった。その結果,やめられないけど不満はたくさん。ということで,「Microsoft Exchange & Collaboration Solution Conference 2000」(MEC2000)で「Outlook 10」が紹介されると聞いたとき,不満の解消具合を確かめるため,このセッションだけは落としてはならないと誓ったのだった。

もうMAPIを使ったウイルスには悩まされない?

 メール関連操作のAPIを共通化するMAPIの巨大なセキュリティホールにより,「Melissa」に代表されるメールウイルスが流行したのは,多くの読者の知るところだろう。クラッカーたちの標的にされているMicrosoftのOutlook(1999年4月1日の記事参照)は,その対策としてMAPIからアドレス帳へアクセスしたり,本人が気付かぬうちにメールが送信されてしまわないようにするパッチが配られた。一方で,それら機能を真面目に使っているソフトの作者は迷惑を被った。

 新バージョンでは,添付ファイルの形式を見て,悪影響を与えそうなファイルをあらかじめダウンロードしないよう設定できる(たとえばスクリプトファイルは受け取らないなど)。また,MAPIを用いて電子メールを黙って送信しようとしたり,黙ってアドレス帳にアクセスする操作が実行されると,ユーザーにその旨を知らせる機能が加わった。

 Melissaとその派生ウイルスに対する少々ベタな対応だが,とりあえずMAPIの恐怖からは逃れることができる。もちろん,企業ユーザーに配慮してウイルス関係の設定は管理者以外が設定を変更できないようにすることも可能だ。

 もっとも,既に古い手口のMelissa型ウイルスへの対応が行われたに過ぎない。世の中には悪知恵の働く人間はたくさんいるのだから,安心はできないが。

Wordメールが使い物になる!?

 「メールの使い勝手を大きく向上させました」とは,Outlook 10開発チームからのメッセージ。そのトップトピックスは,こともあろうかWordメールの大幅改良だ。かつて「マイクロソフト社員ですら,望んで使っている人はいない」とマイクロソフト社内の人間に言わしめた,伝説のメールエディタである。その後,これが使い物になるようにと,懲りずに改良が続けられてきたが,その目的は達成されていない。

 今回は速度アップやメッセージの最小化,WordとOutlookで設定プリファレンスを共有化できるといった改良が行われているという。本当に高速になっているなら使ってみてもいいのだが,果たしてWordはシンプルなテキストエディタより快適に文章を入力できるのだろうか?

 返信時の引用符付加が使えるかどうかを含め,肝心な使い勝手はイマイチ分からないまま説明は終わってしまった。メールアドレスの補完機能が改良されたことはよく分かったのだが。

 このほか,「Outlook Express」にあるHotmailサポートがOutlookでも利用可能になり,メールボックスを自動的に整理する機能が改良されるなどの変更も加えられた。そして,きちんとキャンセルボタンが効くようになるそうだ。これまでのOutlookは,送受信をキャンセルするなどしても,全くいうことを聞かなかっただけに,改良というよりはバグが潰れたと言ってほしかったが,ユーザーにはうれしい変更点ではある。

検索機能の改良って?


検索機能はユーザーインタフェースが改良されただけ

 検索機能の改良に期待しないOutlookユーザーはいないだろう。Exchangeに接続した状態で検索するときには,サーバ側にサードパーティソフトが入ってさえいれば,高速な全文検索機能を利用できたが,まぁ,それ以外の場合(つまりほとんどのユーザー)は,Outlookの中に潜む情報を探すため,データベースの最初から後ろまでを舐め回す検索機能を使わざるを得なかった。

 検索機能の改良に期待が膨らむが,残念ながら,これは検索のユーザーインタフェースが改良されたに過ぎない。簡単に検索範囲を指定できるようになったことで,より使いやすくなったとか。しかし,検索エンジンそのものは変わらないようだ。少し気を失いそうになった(私のメールボックスサイズは800Mバイトほどだが,全文検索をさせると数分間Outlookが使えなくなる)。

グループスケジュールの変更

 カレンダーの予定を色でラベルできるようになっている。Macのファインダーに似た操作で,選択中の予定に対してメニューから好きな色を割り当てられる。

 個人でOutlookを使っている人には無関係だが,グループスケジュールを入れるための手順が簡略化されている。より多くのユーザーの予定を把握しやすいようにユーザーインタフェースが改良され,ほかの予定との重なりに関しても,どの時間帯が一番重ならないのか(空いているのかではない。重なるのは仕方がないが,なるべく少なくという発想)などの情報を一覧しながら作業できる。

一番の目玉商品がLocal Web Storage System

 最も役立ちそうな改良は,Exchange 2000と組み合わせて利用したときの「Local Web Storage System」(WSS)への対応だろう。これまでも,Exchangeと組み合わせたときには,オフラインフォルダを設定し,メールボックスの一部(もしくは全体)に可搬性を持たせることができた。


WSSとOutlook,Exchangeのしくみ

 オフラインフォルダはWSSによって置き換えられ,ユーザーはExchangeのメールストレージであるWeb Storeの内容を,オフラインでも参照できるようになる。それほど大きな変更点ではないように聞こえるかもしれないが,両者にはいくつかの大きな違いがある。

 WSSは複製マネージャ(Replication Manager)によって,Web Storeの一部を複製することができるが,一方でキャッシュ的な動作もする。つまり,指定したメッセージフォルダを複製しておくのはもちろん,複製していないフォルダのメッセージも,一度クライアントから読み込むと内容に変更がない限り,WSS内に残るのだ。これにより,あのとき見たあのファイルは,複製を指定していなくても,オフラインで読むことができる。

 またオンライン中でもローカルに情報があるときには,1度しかダウンロードが行われないため,回線負荷が軽くなり,サーバレスポンスに依存しない操作性を実現できる。さらにダウンロードはメッセージ単位ではなく,プロパティ単位で行われる。たとえば数Mバイトの添付ファイルがあるフォームに変更が加えられたとき,変更が加えられたプロパティ情報のみがダウンロードされ,添付ファイルそのものは再ダウンロードされない。

 またWSSとWeb Storeへのアクセスは,クライアント側から見て透過的になっているので,サーバへの接続が突然失われても問題なく作業を続けられる(ローカルに必要な情報が残っていることが前提)。

 これでもうExchangeが落ちても大丈夫だ。

Macintoshも本格的にサポート

 Mac OSのサポートも,やっと本格的に行われる。どれだけMacユーザーに受け入れられるかは不明だが,Outlookの機能をすべてサポートするMac用のクライアントを開発中だとか。別の技術セッションで,その詳細について語られることになっているが,ともかく2つの画面ショットが公開されている。

 ただし,リリース時期が明言されているわけではない。来年かもしれないし,もっと先かもしれない。あるいは,サポートそのものが中止されてしまうこともあり得るだろう。

関連リンク
▼ Melissaウイルス,Microsoftの責任は?
▼ 10回の延期を経て発表された「Exchange 2000」──MEC2000基調講演
▼ 文書に対する単一のアクセス方法を提供する「Tahoe」

[本田雅一, ITmedia]

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