News 2000年10月13日 07:21 PM 更新

AIBOはペットか? ロボットか?

 ソニーから発表があったAIBOの新製品(というべきかどうか,でも,ソニーにとっては商品なんだそうで,AIBOホームページにも,『商品情報はこちら』なんてリンクがある。でも,ペットショップだと考えたら,ペットも立派な商品なんだね)には,クラクラとちょっとしためまいを感じてしまった。

 興味深いのは,別売りのメモリースティックアプリケーションとして自律行動を可能にし,学習,成長するという「自律成長AIBO-ware AIBOライフ」,社交的で活発な性格に染める「お披露目用AIBO-ware ハローAIBO!タイプA」,じゃんけんやゲームなどを楽しめる「パーティー用AIBO-ware パーティーマスコット」といったものが用意される点だ。

 従来型のAIBOがお好みなら,筆頭の「自律成長AIBO-ware AIBOライフ」を使い,そうでなければ,別のアプリケーションを使うことで,異なるAIBOを楽しめる。これは,同社がAIBOを,人間の友だちとしてのペットというよりも,人間を楽しませてくれるエンターテインメントロボットとして扱おうとしている姿勢を証明するものだ。

 ぼくは今まで,AIBOを買う人は,彼をロボットとしてではなく,ペットとして買うんだと思っていた。以前,ポストペットの八谷和彦氏にインタビューしたときに,「ペットはペットなんだから,いつかは死ななくちゃリアリティがない」って話を聞いて,妙に納得してしまったことを思い出す。ぼくのまわりで,AIBOを手に入れた人の1人は,しばらくいっしょに暮らすと,愛着がわいてしまって,とてもリセットなんてできないといっていた。でも,ロボットならそうじゃない。パソコンをAlt+Ctrl+Deleteでリセットするように,抵抗を感じることなく,真っ白の状態にしてしまえるんだろう。だからこそ,メモリースティックアプリケーションなんてものが用意される。でも,自律成長する従来タイプのアプリケーションを走らせたAIBOは,やっぱり,ロボットじゃなくて,ペットとして扱われるのかもしれない。

友達ロボットと道具ロボット

 AIBOが真性ロボットへの道を進み始めた証明の1つに,ワイヤレスLAN機能への対応がある。つまり,パソコンからAIBOを自由自在に操れるのだ。これは,まさにロボットの領域だ。ただ,ロボットといっても,機械と人間のコミュニケーションという観点から考えると,鉄腕アトムと鉄人28号……もとい,たとえが古すぎる,ドラえもんとガンダム(これでも古すぎるか)の対比をしてみるといい。同じロボットでも全然違う(なんだか,やけに括弧くくりの言い訳が多くて恐縮だが,ガンダムはモビルスーツでロボットじゃないというのには目をつぶってほしい)。今度のAIBOは,そのどちらにもなれる素養を持ったわけだ。

 ぼくは,どっちかというと,アトムやドラえもんがそばにいてくれた方がいいなと思う。それは,楽しいに違いないという期待はもちろんあるし,正直なところ,便利だという気持ちも強いからだ。でも,鉄人28号やガンダムでは,飼い主というか,持ち主の技量や感性を超えることはできないだろうから,裏切られることはない代わりに,期待以上のこともしてくれないんじゃないかという気がするのだ。前者はペットというか,友達ロボットであり,後者は道具ロボットだ。

 今は,すっかり道具になり果ててしまったパソコンだが,黎明期にコンピュータに興味を持った人たちは,この機械に,いったい,どっちのタイプを期待したのだろう。パソコンを思い通りに操りたいと思う反面,暴走すれば容赦なくリセットをかけながらも,愛おしい気持ちは持っていたんじゃないだろうか。ぼく自身も,使えば使うほど,日々賢くなっていく日本語入力システムの辞書なんかを見て,パソコンを育てているという気持ちに近いものを持った覚えがある。懐かしい日々だ。今ならさしずめ,音声認識ソフトを使っているときなどが,パソコンに対する親近感を感じる瞬間だ。自分の発声が,どんどん文字になっていったり,音声コマンドで命令通りにオペレーションが進む様子を見ると,形こそ無愛想なパソコンにも,それなりのかわいらしさを感じてしまうことがある。ユーザーインタフェースとして画面に表示されるキャラクターエージェントに親近感を感じるのではなく,機械としてのパソコンに親しみを感じるのだ。でも,世の中の多くの人は,パソコンにそんな気持ちを抱くことはないかもしれない。しょせん,道具だからだ。

 育つ前のAIBOと,計画的に育ってしまったAIBO,新しいAIBOは,どちらが多いのだろう。ぼくはそれが知りたい。今の世の中がロボットに求めるのは何なのか。ソニーには,ぜひ,メモリースティックアプリケーションの出荷比率を公開してほしいものだ。

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[山田祥平, ITmedia]

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