News 2000年10月20日 10:42 PM 更新

電源ケーブルという呪縛

 昨日の記事にもあるように,USB2.0の周辺がにぎやかだ。インテルがコントローラをチップセットに統合するタイミングで飛躍的に普及する可能性を秘めているし,各社もそれを期待している。ただ,家電製品とPCの接続という点では,まだまだIEEE1394に分がある。

 ユーザーにとってみれば,どちらの規格がどれだけ優れているかということよりも,ちまたで入手できるデバイスが,どちらの規格に対応しているかの方が重要だ。そういう意味では,既にポートを持つPCや対応機器がたくさん出荷されているIEEE1394は,とても現実的で分かりやすい。

 でも,USBが2.0になって,電源の問題が解決されなかったのは,個人的にとても残念だ。上位互換性を保ち,ケーブルも以前のものがそのまま使えることを保証するためには,仕方がなかったのだと想像しているのだが,ポートあたり500ミリアンペアというのは不自由が多い。また,IEEE1394は6ピン端子を使うことでUSBよりずっと高い電力を供給できるが,多くのPCが装備するのは,電源ピンのない4ピン端子だったりする。

敵はゲンコツアダプタ

 結局,どちらかの規格,あるいは,両方の規格が,今よりポピュラーになったとしても,電源ケーブルの呪縛からは逃れることができないのだ。PCに内蔵されたデバイスは,あまり電源のことを考える必要がないので,コンピュータの周りをすっきりさせることに貢献しているが,USBやIEEE1394は,それに対する解決が難しい。以前にも機器周辺のスパゲティ配線に関してはこの連載で取り上げたことがあるが(1999年9月17日の記事を参照),このドッグイヤーとも呼ばれる進化の中で,このテーマに関しては,ほとんど進化していないんじゃないだろうか。

 今,自分の身の回りを見ても,いかに多種多様な電源が使われているかを痛感する。ACケーブルをそのままコンセントに差し込めばいいもの。四角い電源アダプタでDCを供給するもの。電源アダプタとACプラグが一体化したいわゆるゲンコツ型のACアダプタ。別途,充電器が必要なリチウムイオンバッテリー,単3型のニッケル水素電池などなど。

 ぼくは,今の家に引っ越してきたときに,部屋に装備するコンセントの数を,当初仕様の4倍にしてもらう工事をお願いしたのだが甘かった。それでも足りない。アッという間にタコ足になってしまった。また,家具をおいてしまうので,死角位置のコンセントが無駄になってしまっているものもある。せめて,機器からACケーブルが出ているだけであれば,もう少し美しい配線が可能なのだが,あのゲンコツアダプタだけはいただけない。

 アダプタを必要とせずに,信号線を接続するだけで使えるようになることの便利さは,たとえば,ノートパソコン用のCD-ROMドライブで,PCカードから電源を供給するタイプのものなどを一度でも使ったことがあれば身にしみて分かるはずだ。その手軽さの前には16ビット転送のスピードの鈍ささえ許せてしまったりもする。

コストという大敵

 本体に電源を内蔵せずに,アダプタを使用するのは,やはりコストを考えてのことなのだろう。汎用の部品を使えるアダプタは,コストの点で優位だ。そのおかげでリテールプライスが安くなり,コンシューマーにとっても入手しやすい。また,きょう体の発熱などに関しても有利だし,電源が故障した場合も,アダプタだけを交換すればいいので,迅速な対処が可能というメリットもある。つまり,けっこういい所だらけなのだが,それでも不便さがつきまとう。事業用途ならともかく,家庭での使用では,ただでさえ,コンセントの少ない一般の住宅では,本当に不便を強いられる。家庭での使用を考慮した次々世代のバス規格を考案する際には,ぜひ,このあたりをなんとかしてほしいものだ。

 もちろん,機器から生え出るケーブルを1本だけにするソリューションは今もある。電源ケーブルを省略するのが難しいなら,信号ケーブルを無線にすればいいのだ。かつては,IrDAがその役割を担っていたし,今はそれが,無線LANやBluetoothなどに代替されようとしている。

 コンピュータに限らず,デバイスはケーブルフリーが快適だ。それは,レガシーフリーなんてことより,ずっと大事なことなのだと思うのだ。プラグアンドプレイ? ここに「プラグ」なんて単語があることからして,そもそも……。

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[山田祥平, ITmedia]

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