News 2000年12月1日 09:19 PM 更新

次世代iモードのブラウザを探る──JavaとSSLで変わるiモード

503iはJavaが載るだけではない。128ビットSSLを搭載し,通信のセキュリティが向上する予定だ。その詳細をiモード用Webブラウザの最大手,アクセスに聞いた。

 一般にはあまり知られていないが,実はiモード端末に載っているWebブラウザはある製品が非常に大きなシェアを持っている。そのWebブラウザはアクセスの「Compact NetFront」。iモード端末のWebブラウザで7割のシェアを持つ。

 Compact NetFrontはまさに隠れた名作ソフトだ。iモード端末では三菱電機(D),富士通(F),NEC(N),ソニー(SO)などがWebブラウザとして採用している(自社開発しているのは有名なところでPとSHくらい)。


アクセスの企画本部の本部長代行兼企画開発室長である猪坂郁子氏
 ZDNNでは,アクセスの企画本部の本部長代行兼企画開発室長である猪坂郁子氏に,次世代のiモード用Webブラウザにはどんな機能が入ってくるのか話を聞いた。

503i用Java仮想マシンの開発はアクセス

 来年早々に登場すると言われているJava搭載iモード503iでも,ほとんどの端末メーカーがCompact NetFrontを搭載してくる。503iで注目点となるJavaの仮想マシンもアクセスの開発によるものだ。

 これはJ2MEの中でも特に小さなJavaの仕様であるKVMと呼ばれるもの。しかも規格制定元であるSun Microsystems製ではなく,アクセスが独自に開発し,Sun Microsystemsの認定を受けたものだという。「Sunの仮想マシンは(モバイル機器に)最適化されていないし,どうせ手を入れなくてはいけないなら,自分たちで書いてもいいのではないか」(猪坂氏)。

 このJava仮想マシンは,Webブラウザにプラグインという形で実装される。では,どんな位置付けのJavaなのか? 下の図を見て欲しい。


現在のJavaは「Enterprise Edition」「Standard Edition」「Micro Edition」の3つに大きく分かれる。その上さらに細分化されているわけだが……

 503iに搭載されるJava仮想マシンは各エディションの中でも相当機能の少ないものだ。猪坂氏が「これがなかったらJavaじゃない」という,DCL(ダイナミッククラスロード)もサポートされていない。そのため,10Kバイトというサイズの制限の中で必要なクラスはあらかじめ持っておかなくてはならない。

 最大の問題は,"どんなプラットフォームでも動く"というJavaの宣伝文句がどこまで通用するかだ。503iのJavaは,KVMにコアクラスを足したCLDCに,DoJaと呼ばれるiモード専用のプロファイルを足したものだ。ここに各端末メーカーが独自にユーザーインタフェース系のAPIを加えているのだが,この独自APIが曲者なのだ。

 あるメーカーの端末用にJavaアプリケーションを書いた場合,「例えばN用に書いたJavaアプリケーションがFで動かない」(猪坂氏)といったこともあり得るという。結局,コンテンツプロバイダは機種ごとにプログラムのテストを行う必要があるわけだ。

 猪坂氏は,「(503iは)Javaに対する試金石」と言う。503iが成功すれば,インストールベースで最大数のJavaプラットフォームとなる。そのときに初めてJavaの真価が問われることになる。

128ビットのSSLをサポート

 もう1つ,503iで追加される大きな特徴は128ビットSSLへの対応だ。SSLとはブラウザとサーバ間の通信を暗号化するもので,Windows用のWebブラウザではSSL通信中にブラウザの右下にカギマークが出るのでおなじみだろう。

 SSLに対応することで,端末とドコモのゲートウェイサーバ間の通信が暗号化され,セキュリティが高まる。それによりB to Bなどの通信にiモードが利用できるようになるとドコモでは期待しているようだ。また,セキュリティの向上によってバンキングサービスなども,銀行窓口に近いサービスの充実が見込めるはずだ。

 しかし,SSLの搭載には無理も多い。「けっこうCPUパワーを喰う」(猪坂氏)と言うように,10〜13MIPS程度しかパフォーマンスのない携帯電話のCPUでは,まずキーの生成に時間がかかってしまう。

 しかも9600bpsという現在のiモードの通信速度では,データの送受信でも長い時間がかかる。ドコモが出している"15秒以内に接続を確保"という仕様を満たすのは,けっこう大変なことのようだ。

 503iではJavaが載ることもあり,「メモリやCPUのクロックは向上している」(猪坂氏)と言うが,より低消費電力で高速なCPUと高速な通信速度が実現するまでは,SSLの実用性にも不安が残る。

次世代Compact NetFrontはどうなる?

 現在iモードサイトで使われているコンパクトHTMLは,実はアクセスが開発して1998年に国際標準として提唱したものだ。世界標準と言われていたWAPも,WAP NGと呼ばれる次世代WAPでは,「iモードとWAPは融合する」(NTTドコモ)と言われている。

 アクセスの猪坂氏は「IMT-2000の開始までには次世代版(Compact NetFront)を出せそう」と言う。来年5月,IMT-2000の開始とともにiモードは世界にはばたくのか。

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▼ W3C:Compact HTML

[斎藤健二, ITmedia]

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