News 2000年12月20日 11:59 PM 更新

ついに始まったDSLのスピード競争,その焦点は?

イーアクセスがADSL回線を下り1.5Mbps/上り512Kbpsに高速化すると発表。DSLのスピード競争が本格化しそうだ。

 イー・アクセスは12月20日,同社が提供しているADSL回線の通信速度を現行の下り640Kbps/上り320Kbpsから,下り1.5Mbps/上り512Kbpsに引き上げると発表した。一方,アッカネットワークスも「フレッツ・ADSLと同等のスピード」を目指して検証を進めている(12月20日の記事参照 )。NTT東西地域会社の本格参入は,ADSLサービスのスピード競争を引き起こしたようだ。

本当に1.5Mbps?

 イー・アクセスが採用しているG.liteのAnnex Cでは,下りの最高速度が1.5Mbpsに設定されている。だが,DSLサービスでは電話局からの距離や外来ノイズの干渉など,さまざまな要因で情報が劣化するため,個々のユーザーで転送レートに差が出るは当たり前。Annex CはISDNの干渉に強い仕様だとはいえ,数字はあくまでも「最大値」だ。実際,フレッツ・ADSLにしろ,イー・アクセスの発表にしろ,「実験室の数字をそのまま持ち出しただけ。実際のサービスでどこまでスピードが出るかは分からない」と指摘する声も多い(NTTもAnnex Cを採用している)。最大1.5Mbpsを謳うのなら,少なくとも実効速度で1Mbpsは欲しいところだ。

 こうした声に対し,イー・アクセスでは「実験では平均1.35Mbpsだった。商用サービスでも8割以上のユーザーが1Mbpsは使えるはず」と自信を見せている。イー・アクセスが今年8月に発表したADSLの試験サービス結果では,全モニターの平均転送レートが下りで約1.35Mbps,最大値は約1.54Mbpsだった(8月22日の記事参照 )。

動きが早すぎる

 一方,こうした動きに戸惑いを見せているのが,東京めたりっく通信だ。というのも,同社は当初から上位サービスとして最大1.6Mbpsのメニューを設けているため。同社が採用しているAnnex Aは,G.dmtの実用化により,仕様上は最大6Mbpsまで高速化できるようになっている(一部でAnnex Cも使用している)。しかし,「Single 640」や「Family 640」(どちらも下り640Kbps/上り250Kbps)のスピードを上げれば,上位メニューとの差別化が図れなくなってしまう。両メニューのスループットを底上げするか,あるいは値下げするか……幾つかの選択肢はあるが,まだ結論は出ていないという。その理由の1つが「スピードを上げるのは,バックボーンを整備してからにしたい。中継回線の増強を行わずに末端だけ高速化しても意味はない」(同社)という点。

 東京めたりっく通信は,子会社の東京ふぁいばあ通信により,Gigabitの中継回線網を都内に張り巡らせる計画を持っている。しかしながら,NTTがダークファイバー(光ファイバーの貸与)を開始していない現状では,中継回線網の増強を短期間に実現するのは不可能だ。「(他社が)早く動き過ぎた」(同社)。

カギを握るのはダークファイバー

 バックボーンの増強は,東京めたりっく通信のみならず,アッカやイー・アクセスにとっても早急に対応しなければならない問題だ。両社が,たとえすべてのユーザーに1.5Mbpsのアクセス回線を提供できたとしても,電話局から先が細ければ,文字通りのボトルネックになってしまう。そして,ユーザーが増えるに従い,実効速度は確実に落ちていく。DSLの高速化競争は,バックボーンの整備状況にかかっているといっていい。

 フレッツ・ADSLという競争力の高いサービスを発表し,一方で公正取引委員会から警告を受けてしまったNTTは,近い将来,ダークファイバーを開始するはずだ。その時に,いかに迅速に対応できるか焦点になる。

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[中村琢磨&芹澤隆徳, ITmedia]

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