News 2001年3月9日 11:59 PM 更新

電話と変わらない“IP電話”(2)

判別できないIP電話

 試験通話では,東京〜大阪間に限られていたものの,市外局番「06」地域にある任意の電話番号にかけることができた。手順は,一般的な電話機から電話番号の先頭に「0038」を加えてダイヤルするだけ。通話品質は通常の電話と変わらず,IP電話だという予備知識があっても判別するのは難しかった。もちろん,音声の遅延もみられない。今回の試験通話に限っていえば,従来の電話と全く遜色のないレベルだといえる。

 試しに,頭に「0038」を付けずに同じ人に電話をかけてみた。聞き比べると,むしろフュージョンの回線のほうが声が大きく聞こえるのだが,「大阪で接続される電話回線によって,多少の違いが出る。それは従来の電話でも同じ」(同社)だという。

 また,同社のIP電話サービスは,データ通信やFAX,ISDNにも対応するというのも特徴だ。アナログモデム搭載のPCで大阪にあるアクセスポイントにダイヤルアップする実験も行われたが,こちらも支障なく繋がっていた。

Webからの申込みも可能に

 従来のVoIPの概念を覆そうとしている同社だが,当面のネックとなりそうなのが,品質を検討してからサービスを申し込むことができない点だ。他社なら,電話番号の先頭に識別番号(0038など)を付加すれば,利用者登録をしていなくても通話することができる。しかし,同社の場合,まず登録しなければならず,それも現在は郵送のみの受け付けとなる。これには2つの理由がある。1つは,利用者数を把握しておき,それによって設備投資(帯域幅の拡大)をしなければならないということ。2つめは,新規事業者であるが故の準備不足だ。ただし,受け付けについては「4月中旬を目途に,Webによる受付も開始する」(同社)という。なお,申込み書は電話で取り寄せる方法のほか,オンラインでの資料請求,そして同社サイトから申込書のPDFをダウンロードすることもできる。

フュージョンのIP技術とは?

 今回の説明会では,大手町のフュージョン本社内に設けられたラボとオペレーションセンターも公開された。

認証,ルーチング制御などの呼制御は,SunのUNIX WS(写真上)を使ったソフトウェア・スイッチが行っている

 市来氏は,「採用したIP技術は,基本的にはクローズド(独自)だが,標準規格も取り込み,他社との接続には全く支障はないものだ」と説明している。

 NTTの交換機では,音声信号を64Kbpsのデータとして扱うのが主流だが,フュージョンではこれにヘッダを加えて100Kbps程度で伝送する。音声はリアルタイムにカプセル化され,帯域保証された専用IP網に流すという手順だ。変換は米Sonus Networkの「GSX9000」(写真下)によるハードウェア処理。「ソフトウェアで変換する手段もあるが,それでは処理が追いつかない」(市来氏)という。

社内に置かれたラボ。実際のものと同じ環境を構築し,新しいサービスを開発する際にシミュレーションを行っている

全国18の拠点を集中管理するオペレーションルーム。NTT交換機の様子なども24時間365日監視する

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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