News 2001年3月27日 09:49 PM 更新

IT&ネットワークソリューション企業への転身を図る松下AVC社

松下AVC社が中期経営計画を発表した。これには,ネットワーク時代の高付加価値家電製品の開発とソリューションの提供,そして経営体質の改善が盛り込まれている。

 松下電器産業は3月27日,AVC社における「創生21」の概要を発表した。創生21とは,松下が全社的に推進する2003年までの中期計画(2000年11月30日の記事を参照)。松下電器産業の専務でAVC社社長を務める戸田一雄氏は,ホームおよびモバイルのネットワーク普及によって新しい文化と需要が発生するという見通しを挙げ,これに対応した「IT&ソリューションネットワーク企業」を目指すとした。

 戸田氏は,家電業界の現状を“アナログ成熟期”と表現する。白物家電やアナログAV機器の需要は一巡し,この分野は既に閉塞状態にある。平均単価は長期に渡って下落し続け,低価格化に対応するために製造拠点は海外に移さざるを得なくなった。その結果,「既に,日本では組み立てそのもので利益を得ることが難しい状態になり,空洞化と雇用問題が発生している。このサイクルを断ち切るためには,日本でしか作れないものを開発・生産することだ」(戸田氏)という。つまり,最新技術を取り入れた高付加価値製品へのシフトが,AVC社の出した答だ。

 高付加価値製品というと,TVなら液晶やプラズマが直近の製品として挙げられるが,同社はさらに,ブロードバンドネットワークを取り込むためのインターネット対応TV(同社は“IP-TV”と表現している)を展開する方針。また,動画やデータ通信を前提としたマルチメディアターミナルとしての携帯電話,インターネットから情報を取り出せる電子レンジや健康機器などの開発も進め,それらが連携できるようなソリューションを提供するという。「これまでは,A(Audio),V(Visual),C(Communication)が単独3峰型の事業を推進してきた。しかし,これでは生きていけない」(戸田氏)。

 しかし,そこでも莫大な開発投資と経営スピードの確保という問題が残されている。これに対応するため,AVC社では事業構造を見直す3つの改革案を提示した。1つは,マトリクス事業グループ制の導入,2つめがファクトリーセンターの展開,そして3つめがWeeklyマネジメントの導入だ。マトリクス型の事業体制とは,カテゴリ別の縦割りグループに加えて横の連携を強化することで,投資効率のアップと開発スピードの向上を図るというもの。また,事業部別に所有している工場は,開発拠点としての性格を強め,自主独立のファクトリーセンターとする。「他社にはできない固有技術の開発がポイントになるだろう」(戸田氏)。そして,開発した製品を効率良く販売ルートにのせるため,SCMを週毎に検討する。これがWeeklyマネジメント制だ。

 同社の事業に関連する,通信・放送サービス,端末,そしてコンテンツといった市場は,2010年までに5.6兆円規模にまで拡大するという(出典:旧郵政省,情報通信21世紀ビジョン)。戸田氏は,「経営体質を強固にし,ITとネットワークソリューションを提供する。開発投資に対して適切なリターンを確保することが大事だ」とまとめた。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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