News:「Office XP」初体験 2001年4月2日 11:59 PM 更新

「Office XP」初体験:「なぜ!?」が少なくなったOutlook

細かいながらも非常に効果的な改良がなされている「Office XP」の使用感を,本音ベースでレポートする。

 マイクロソフトが“ユーザーエクスペリエンス”を重視した新しいOfficeを発表した。 マーケティング担当者によると,“ユーザー体験”と言ってほしくないらしい。語感が悪いといったことではなく,体験という単語だけでは開発コンセプトのニュアンスを伝えきれないからだという。

 マイクロソフトの意図は別にして,さすがにエクスペリエンスでは話が分かりにくい。ここでは敢えてエクスペリエンスを体験と訳すことにして,本日入手したばかりの「Office体験」,もとい「Office XP」を自己中心的かつ本音ベースで届けしたい。

 オフィスで働くほとんどの人にとって,Officeといえば「Word」と「Excel」,そして一部 の人にとっては「PowerPoint」が重要なアプリケーションになると思う。しかし,私のように個人で仕事をしていると,もっとも重要な道具は「Outlook」だ。

 仕事のパートナー との連絡はほとんどがメールであり,メールの中に重要な情報が埋め込まれている。 よって情報の検索や管理の対象は,オフィスのファイルではなくOutlookに収められた個人管理情報とメールアイテムなのだ。というわけで筆者がOffice XPの中で最初に体験したOutlookを紹介しよう。

細かくても優れた変更

 実はOutlookは,Office XPの中でマイクロソフトが強くアピールしている「作業ウインドウ」と「スマートタグ」とは無縁のアプリケーションだ。にもかかわらず,ここで紹介するのは,インターネットのユーザーにとって,もっとも触れる時間の長い製品だと思うからだ。


新しいOutlookの画面ショット。あまり変わっていないように見えるが,通常の受信トレイに加えてHotmailの受信トレイが加わっているのが分かるはず(拡大画像

 新しいOutlookでは,従来の個人向けインターネットモードがなくなり,企業モ ードで使われていたMAPIベースに統一されている。マイクロソフトが標準で用意 しているMAPIの管理ツールは大変複雑で分かりにくいものだったが,新Outlookではこの操作を独自に実装したウィザードベースのユーザーインタフェースに変更され, 「Outlook Express」レベルの操作性を実現している。また,メールサーバの設定を行うとき,その場で正しいかどうかをテストする機能が加わったのも,細かいながら優れた変更だ。


MAPIベースの企業モードに統一されたが,標準のMAPIマネージャを使わず独自にアカウント管理を実装している。このおかげで,アカウント管理はかなりシンプルになった

 加えて,Outlook ExpressでサポートされていたHotmailのクライアント機能をOutlook内で実現。サブのメールアドレスとして無料メールアドレスを使いたいユーザーには朗報だろう。「Exchange」やほかのメールアカウントと同時に, Outlook内でチェックできるのはなかなか便利だ。メールの受送信,サーバとの同期を,アカウントごと,オンライン/オフラインのステータスごとに管理できるのもまた,筆者のようにPOPメールとExchangeサーバを同時に利用しているユーザーにはうれしい変更点だ。

 また,作成した送受信のグループに対して,オンライン時に送受信を行うのか,それとも同期を行うのか,それは何分ごとか,さらに,定期的に送受信しないなら終了時に同期をするのか,といったことを設定できる。もちろん,オンライン時に対して も同様の設定を行える(ここでいうオンライン/オフラインとは,Exchangeサーバとのセッションのことを指す)。1つのアカウントを複数のグループに登録することができるので,オンライン/オフラインのステータスごとに柔軟な送受信のスケジュールを組むことが可能だ。


オンライン,オフライン,アカウントの種類それぞれの組み合わせで,複雑な送受信スケジュールをプログラムできるようになった。モバイルユーザー向けとして,かなり強力な機能だ

 例えば筆者の場合,オンライン時は5分に1回POPメールをチェックし,2時間に1度と終了時にExchangeとの同期を取るように設定。オフライン時には5分に1回のPOPメー ルチェックは同じだが,Exchangeとの同期は行わないように設定してみた。利用したメールアドレスの履歴を自動的に保存し,次回以降に利用する際,アドレ スの補完処理を行ってくれるのが気に入っている。自動登録されるアドレスは,自分でアドレスを直接打ち込んだものはもちろん,返信時に自動的に設定される送信先も含まれる。補完処理では,3文字以上マッチした宛先を,1文字ごとにインクリメンタルサーチの要領で絞り込みが行われる。

 また,Wordを使ってメールを編集できるWordメールが実用的になったのもニュースだ。もっとも,既存ユーザーは「Wordメールなんて使うやつはいないだろう」と言う に違いない。従来のWordメールは引用符を付けることができない,改行位置がおかし くなる場合があるなど,インターネット用のメールエディタとしては,かなり使いにくかったからだ。


「Office 97」以来,ずっと使われてこなかったWordメールがやっと実用的に

 Wordメールの設定は,メール用のテンプレートに対してWord内で行う必要がある(Outlook内で設定できない)といった使いにくさもあった。しかし新しいWordメールは,通常のインターネット用のメールエディタが持つ機能をすべてサポートした上で,設定なども全てOutlook側のものをWordメールに反映できるようになっている。これにより,スペルチェックや文書校正といった Wordの機能を(実質的に初めて)活用可能になった。文字レイアウトや行間バランスなども,Wordメールの方が良いため,使い心地はかなりいい。

 ただ,Wordメールのサポートには残念ながらネガティブな要素もある。従来なら,どんなメールでもWordで読み込んで閲覧できたのだが,新OutlookからはExchangeリッチテキスト形式のメールしかWordでメール閲覧を行えなくなった。つまり,インターネ ット中心で使っているユーザーは,せっかくWordでメール作成できるようになったに もかかわらず,メールの閲覧には(字間が詰まって左マージンもない)Wordよりも文字レイアウトの能力に劣るOutlookの内蔵ビューアを使うしかないことになる。

「使ってみたい」と思う製品

 最後に,さまざまなところでキャンセルが効くようになったことも挙げておきたい。従来のOutlookでは,キャンセルボタンが出ている場面でキャンセルしても,そのボタンの意味がないほどキャンセルが効かない機能があった。

 例えばMAPIモードで送受信を行っているとき,大きなファイルをダウンロードし始めたので,キャンセルしてあとで受信処理をしようと思っても,なかなか止まらない。また複数のメールアカウントが設定されていると,同時にいくつもの 送受信処理が順番待ちになり,キャンセルしたつもりなのに,次の処理がすぐに始まるといったこともよくある。こうした問題は,新バージョンで全て解決された。順番待ちに入っている送受信処理も,すべてリストを見ながらキャンセルすることが可能だ。

 また,検索機能もキャンセルが効きにくかった機能の1つだ。数年もOutlookを使っていると,受信トレイ,あるいは整理用のフォルダが数千通のメールで埋まるようになる。前述したように,この中には打ち合わせでやりとりした重要な情報があるため, 全文検索をかけることが多いのだが,検索キーワードを間違ったときに処理を中止しようとしても,なかなかキャンセルできない(その上,メールデータベースが大きいと時間がかかる)。

 新Outlookではキャンセルがきちんと動くようになったのはもちろんのこと,検索 がバックグランドで動くようになった(逆にいえば,今までは検索中だとOutlookでなにもできなくなっていた)。検索はヒットしたものから順次リストアップされ,検索を継続しながらヒットしたメールアイテムを開いていくことができる。今までできなか ったことがおかしいほどの機能だが,これで作業は格段に楽になった。

 と,メールに関する改善点を多数挙げたが,もちろん,スケジューラなども大きく改善されている。スケジュールアイテムごとにラベルを付けて色分けできるようになったり,グループスケジュールの手順が大きく改善されるなど改善点は少なくない。もともと,Outlookはコンセプト的にも機能的にも,優れた面を多数持つアプリケ ーションだったと思う(からこそ使っているのだ)が,一方で「なぜこうなってい るんだ!?」と思わず声に挙げてしまうような“ダサい”ポイントも存在した。キャンセルがなかなか効かないなど,その最たる例だと思う。

 マイクロソフトがアピールする派手で理解しやすい機能も結構だが,メールクライア ントやスケジューラは,毎日必ず使うアプリケーションだけに,使うたびに感じていたダサさがなくなったのが,いちユーザーとしては非常に嬉しい。地味な改善点を多 数挙げたが,今回のようなユーザーサイドに立った改良こそ,これまでのOutlookに足りなかった部分だろう。そうした意味では,筆者にとってのOffice XP初体験は,地味ながらもユーザーの 意見が取り入れられた使いでのあるバージョンアップ,という印象だった。

 もちろん,それはまだOutlookに限ったことであるが,新機能の一覧を眺めていると,なんとなくどんな機能でも使えそうな気がしてくるから不思議だ。本音ベースの話でも,Office 2000の時には感じなかった「使ってみたい」という 気持ちが沸いてくる製品だと思う。もっとも,個人的にはWordやExcelの改善点よりも,情報共有Webアプリケーションの 「SharePoint Team Service」の方に俄然興味が沸いている。早速インストールして動か してみたが,なかなかどうして。かなり使えるのだ。こちらについても,機会があれば近日中にレポートしたい。

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[本田雅一, ITmedia]

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