News 2001年4月5日 11:59 PM 更新

低価格化の功と罪──名古屋めたりっく通信

この数週間,「ISDNより遅い!」という,悲鳴にも似た声がユーザー掲示板に溢れた名古屋めたりっく通信。だが同社は,明日行われるバックボーンの増速工事により,「かなり余裕が出る」と自信をみせている。

 名古屋めたりっく通信は4月5日,名古屋市内にある36のNTT局すべてに対する設備工事が終了したことを発表した。また併せて,加入申込みが7000件を超えたことも明らかにしている。しかし一方で,急激なユーザー増による弊害も起きているようだ。

 名古屋めたりっく通信は,2000年12月1日に申込み受け付けを開始し,今年2月には月額利用料金を大幅に引き下げる価格改定(Home 640で3980円)を行った。名古屋は,早くからインターネット接続サービスを展開したCATV事業者が多く,“ブロードバンドの激戦区”といわれる地域。価格改定も他社の増速や値下げに対抗した結果だが,同社によると「値下げ前の2カ月間では約700件だった申込みが,値下げ発表からこれまでに約6300件になった」という。業界最安値のインパクトが,ユーザー増加に貢献したのは明らかだ。「当初予想の4000件を大幅に上回る数字になった」(同社)。

 しかし,アクセス回線の工事が進むにつれ,利用者の増加によってスピードが落ちるという弊害が起きた。非公式のユーザー掲示板では,3月末頃から「ただ今56Kbpsモデム並み」「これじゃISDNの方が速い」といった,悲鳴に近い書き込みが急増。あるユーザーからZDNNに寄せられた報告によると,「4月1日現在,平日昼間や早朝などでは下り1Mbps前後というほぼ期待通りの速度が計測されるものの,一般に使われる夕方や夜間は概ね100K〜200Kbps程度,特に午後11時以降(つまりテレホーダイタイム)には,基地局によっては10K〜20Kbpsというアナログモデム以下の速度しか出ない」という。

 原因は,バックボーンネットワークの容量不足だ。名古屋めたりっく通信では,3月28日に「お詫びとバックボーン増速のお知らせ」という告知をWebサイトのトップページに掲載し,4月6日に上位ISPと同社NOCを接続する回線を100Mbpsに増速することを明らかにしている。「先週から開通するユーザーが増えたが,バックボーン増速が工事の都合で延びてしまい,スピードが出にくい状況になった。一部,局間の中継回線が遅くなっていた部分もあるが,そちらは対応済みだ」(同社広報)。つまり,ユーザーの増加に合わせてバックボーンを強化する予定が狂い,今の状況を作り出してしまったということ。利用者数が膨らみ続けるブロードバンドインフラにあって,増速のタイミングを誤るとこうなってしまうという例だ。

 しかし,名古屋めたりっく通信では,6日に行われる増速工事によって「かなり余裕が出る」と話している。一部ユーザーからは「現在75Mbpsのバックボーンを100Mbpsにしても焼け石に水」との声も聞かれるが,同社は現在のバックボーン容量を公式には明らかにしておらず,あるいはもっと低速だった可能性もある。いずれにしても,同社は明日以降のスピードに自信を持っているようだ。

より安く,より高速に

 一方,名古屋めたりっく通信は,下り3Mbpsの高速メニューや,さらなる値下げを検討していることも明らかにした。下り3Mbpsのメニューは,既に東京および大阪のめたりっく通信がラインアップに加えているが(1月18日の記事を参照),こちらも同様のサービスになる見込み。G.dmt(フルレート)のAnnex Cを使い,早ければ6月にも提供される見通しだ。価格も,グループ他社と同レベルになるという。ただし,ADSLは電話局からの距離などさまざまな要因でスピードが落ちるため,このメニューを申し込めるのは「全体の2割程度」(同社)と見られている。

 現在のメニューを値下げする計画もある。下り640Kbpsの「Home 640」は,なんと2000円台という戦略的な価格に,また下り1.5Mbpsの「Home 1500」は「4000円を切りたい」(同社)という。新料金の適用時期は未定だが,年内を目途に調整を進めるとしている。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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