News | 2001年4月13日 05:51 PM 更新 |
先週のコラムに対して読者の方からメールをいただいた。ここにちょっと引用してみよう。
「この記事は,定額制インターネットを使っている人の立場で書かれていると思いました。
日本では非常に多くの人がダイヤルアップでインターネットを使っています。あのアメリカでさえ,ダイヤルアップ利用者が大多数です。この視点に立てば,市内通話料金の低下の重要性が分かると思います。マイラインが過当競争だと,あちこちのマスコミが報道します。その最大の原因は,NTTの高い回線接続料にあるのではないでしょうか。
今の市内通話料金の低下は,まだ十分なものではありません。インターネットの普及促進には,さらなる引き下げが必要です。マスコミ全体にいいたいことですが,もうすこし高い視点で記事を書いて欲しいと思います」
常時接続による定額制インターネットを使っている立場から書いた記事であるという指摘は正しい。その通りだ。ただ,言葉足らずだったかもしれないけれど,ぼく自身も,今の市内通話料金が十分に安いとは思っていない。
でも,インターネットの普及促進に,さらなる電話料金の引き下げが有効かというと,それは,ちょっと違うんじゃないかと思う。もちろん,まるっきり影響がないと言い切ることはできないけれど,それに努力をするよりも,定額常時インターネット接続のコストを下げる事業に力を入れてもらった方が,幸せになれる人が多いと思うのだ。そのためにしわ寄せがきて,電話料金が今より安くならないなら,それは許してもかまわないとさえ思う。マイライン戦国時代を戦う電話会社は,インターネット接続のためのインフラを支える事業者としても有望株なのだ。
さらに,インターネットインフラは,電力会社やケーブルテレビ事業者など,電話会社以外もどんどん参入し,競争相手は増える一方だ。その競争激化は大歓迎だ。安くて速くて常につながっている,ちゃんとしたインターネットインフラが電話とは別にあれば,一般の家庭で,1日に何時間もつなぎっぱなしにするような電話の使い方はなくなる。そんな流れの中で,音声電話の需要が,今後激増することはないと踏んでの電話料金引き下げでは,消費者のメリットもそんなに大きくはない。
折しもNTTが,4月11日付けで,各社の報道を受け,2つのリリースを出した。「本日の一部報道について」(日本経済新聞夕刊等)と,(NHKニュース)がそれで,どちらも,抜本的な合理化に関する報道への反論リリースだ。報道の真偽はともかく,電話会社としてのNTTが,かなり苦しい状況にあることは想像に難くない。それを追いつめるNCC各社が,同じような状況に陥ることが,ありえないとは限らないわけだ。マイライン戦国時代の結末が,そこに収束してしまっては,インターネット普及促進どころの話ではなくなってしまう。
ともあれ,こうして自分が書いた記事に対して,いろいろなご意見をいただくのは,本当にありがたい。高い視点とはいったいどういうものなのかは,未だ,自分では分からないのだけれど,ぼく自身は,常に極端でありたいと思って文章を書いている。事象に対する方向付けや,トレンドを引っ張る力が,ぼくの記事にあるかどうかは,まるで自信はないけれど,「ふつー」よりも,半歩先を歩こうとすれば,いろんなことが見えてくる。一歩先では急ぎすぎだ。その見切りが難しい。ぼくが,そういう立場を目指していることを分かっていただいた上で,電話回線を使った既存のダイヤルアップによるインターネット接続を,これ以上促進するのは,インターネット,そして市民の未来にとって望ましくないのだと言い切っておきたい。
どうか,今後ともこの連載をご愛読くださいますように。
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関連リンク
NTT「本日の一部報道について」(日本経済新聞夕刊等)
NTT「本日の一部報道について」(NHKニュース)
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