News 2001年5月11日 07:04 PM 更新

家電へのハードディスク搭載は“両刃の剣”


HDDビデオレコーダーの先駆けであるソニー「Clip-On SVR-515」,MSのゲームコンソール「Xbox」,パイオニアの「HDDサイバーナビ」

 ビデオデッキにハードディスクが付いて驚いたのも今は昔,今度は,カーナビにハードディスクだそうな。先頃,パイオニアが発表したハードディスクドライブ(HDD)搭載カーナビ,カロッツェリア「HDDサイバーナビ」は,従来のDVDカーナビに,若干予算を上乗せするだけで,それに十分見合うだけの恩恵を享受できるという。カーナビばかりは,自車に積んでしばらく使ってみないと評価はできないけれど,その軽快さは想像できる。

 また,マイクロソフトは,家庭用ゲームコンソール「Xbox」の特徴の1つに,HDD搭載を挙げる。こちらは,いわば,コンテンツのキャッシュとして使うことで,DVDなどのアクセス速度の低いメディアでは不可能だったテンポのよさを提供する。

抜群の容量単価,でも……

 電子部品の中で,もっとも壊れやすいとされているHDDが,ここにきて,トレンドとばかりに,注目されているのには,ちょっと意外な印象を受ける。

 壊れない,うるさくない,電気を食わないという条件さえ満たしてくれるのなら,HDDは,容量あたりの単価も安く,読み書きも高速で,きわめて魅力的なメディアだ。なにしろ,ベアドライブなら,秋葉原あたりで探せば,60Gバイト程度のものを2万円以下で買える。先日,秋葉原で,100枚1980円というCD-Rメディアを見つけて,なんと安いと思い,つい,その場で購入してしまったが,HDDのバイトあたり単価は,その10倍程度にまで下がっているのだ。

 ただ,当たり前の話ながら,逆のいい方をすれば,HDDは壊れやすく,うるさいし,電気を食う。しかも,書き込みができるということは,大事な何かを消してしまえるということでもある。これは両刃の剣だ。

 とはいうものの,テレビ,ラジオ,電話,FAX,各種AV機器などなど,HDDが付いていれば,きっとさらに便利になるであろうデバイスは,どこのリビングルームにでも見かける種々雑多な家庭電化製品の中にたくさんある。何しろ,クルマの中で使われるデバイスにHDDが付いたのだから,相当,荒っぽい扱いにも耐えられるはず。だとすれば,応用範囲は一気に広がるだろう。今は,少量のフラッシュメモリなどを使って実現されている機能も,HDDを使うようになる。そして,HDD搭載デバイスは,ますます増えていく。きっと,携帯電話にHDDなどというのもアリなんだろう。しつこいようだけれど,壊れにくく,静かで,電気を食わないというHDDがあればという前提での話だ。

信頼性はどこまで向上した?

 クラッシュと背中合わせでHDDを使うというのは精神衛生上もよろしくない。ただ,IBMの「Microdrive」を使い始めたときには,奇妙な不安感を覚えたものだが,実際に使ってみると,そんな不調は全くなく,個人的には,いまだ,Microdriveで,クラッシュという悲劇には遭遇していない。でも,ラフに扱う勇気はない。結果的にコンパクトフラッシュを扱うときよりも,ずっと気を使って抜き差し持ち運びをしているようだ。こうした意識をしなくてもいいHDDがあればいいと思う。

 ちなみに,今回のパイオニアカーナビ,こんな注意書きがある。ちょっと長いが引用しておこう。クラッシュしたときなどを考えると,これは,ちょっとないんじゃないかとも思うのだ。

「本製品(AVIC-H09/-H07/-XH07V)のバージョンアップは従来のDVD−ROM方式とは異なり,内蔵ハードディスクをお預かりして有償にてデータの書換えをさせていただく方式となります。バージョンアップ書換え作業中※は,ナビゲーション・DVD−VIDEO(AVIC−H09)・CD・ミュージックサーバーはご使用できません。また,バージョンアップ時には,お客様がご自身で本製品に登録された情報内容についての保証は致しかねます。予めご了承ください。重要なデータは,別売オプション商品により,予めバックアップを取っていただきますようお願い致します。別売PCカード・CNFC−8Mをご利用いただくことにより,登録地点を保管していただくことができます。また,別売ハードディスク・ND−HD10をご利用いただくことにより,登録地点・ミュージックサーバーの音楽情報を転送・保管していただくことができます。バージョンアップの詳細については,本製品ご購入後に登録手続きをしていただいたお客様に対しご案内させていただく予定です。本製品同梱の「保証書発行兼お客様登録カード」を弊社までご返送ください。

※書換え作業は10日間程度を予定しておりますが,一時的に書換え数量が集中した場合などは,10日を越える場合があります」。(パイオニアサイトより)

 ブロードバンドの時代。バンド幅とストレージサイズと圧縮技術という3つのテクノロジーが,メディアリッチな環境を提供する。圧縮技術が進めば,バンド幅やストレージは大きくなくてもいいし,バンド幅やストレージが十分に大きければ,何もデータを劣化させてまで圧縮する必要はない。でも,この3つが,それぞれさらに進化すれば,もっとすごい何かが起こる。あとは,それに見合うコンテンツを用意できるかどうかだ。

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[山田祥平, ITmedia]

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