News 2001年5月17日 10:40 PM 更新

薄さの秘密は,キーボードのギミックと自社開発の表示ユニット――シャープのモバイルノートPC

12.1型液晶搭載機で世界最薄・最軽量をうたう新製品PC-MT1-H1は,シャープの「軽薄・短小」へのこだわりが満載だ。

 シャープは17日,メビウスノートシリーズの新製品4ジャンル7機種を発表した。中でも注目を集めたのが,12.1型TFT液晶ディスプレイ(XGA)搭載機で世界最薄・最軽量を実現したというモバイルノートPC「PC-MT1-H1」だ。


モバイルノートPC PC-MT1-H1

 PC-MT1-H1は,超低電圧版モバイルPentium III/500MHzと12.1型TFT液晶ディスプレイ(XGA)を搭載。新開発のキャビネット一体型表示ユニットを採用し,16.6ミリ(最薄部),1.31キロの小型軽量ボディで,同クラスでは世界最小・最軽量を実現したという。また液晶ディスプレイを開くとキートップが連動してせり上がるポップアップ式キーボードを搭載し,薄型きょう体ながらキーストロークは3ミリを確保。キーピッチも18ミリとなっており,快適なタイピング環境を提供している。

 連続駆動時間は標準で約3.3時間とロングバッテリーライフを実現しており,オプションの大容量バッテリーで最大10時間の連続駆動が可能となるという。インタフェースは,イーサネットポートとコンパクトフラッシュカードスロットを標準装備する。メモリは128Mバイト,HDDは20Gバイト。Office XP搭載モデル「PC-MT1-H1S」も用意。発売は6月23日でオープン価格となっているが,店頭ではH1が20万円前後,H1Sが22万円前後となる予定。

 都内で開かれた発表会で新製品紹介にあたったのは,情報システム事業本部パソコン事業部の川森基次事業部長。シャープ入社以来パソコン一筋という経歴で,古くは8ビット機のMZシリーズや16ビット機のX68000シリーズにも携わっていたという。今年1月に,パソコン事業の責任者として同事業部長に就任した。

 冒頭の挨拶で,今回の新製品がシャープ社内で伝統となっている緊急プロジェクトチーム「金バッチ組」の開発商品であることを告げた川森事業部長は「国内製造業の空洞化が叫ばれているが,生産技術を手放して海外へ移管するという状況は,もはやメーカーとはいえない」と語り,製造業を極めるという意味の「極・製造業」というテーマを掲げて,内製化を推進していくというシャープの戦略を紹介した。今回の新製品PC-MT1-H1では,設計から製造まで国内(シャープ奈良工場)で行うなど,内製化推進商品の第一弾となっている。

 「ノートPCに関する不満調査をメビウスユーザーに実施したところ,サイズや重量への不満が第1位,バッテリーライフへの不満が第2位となっており,持ち歩いて使うというノートPCが持つ本質的な機能への要望が強くなっている」と,新製品の開発経緯を語った川森事業部長。特にPC-MT1-H1には,新しい設計思想と高度な加工技術というシャープ独自のテクノロジーが盛り込まれているという。

 従来,液晶ディスプレイを支えていたフレームを廃して,金属製の表示マスクやカバーで代用することでキャビネット一体の薄型表示ユニットを実現したという。また,自社開発の4面金属ボディーは,表示カバーにマグネシウム合金,表示マスクや本体上下キャビネットにはアルミ合金を採用。本体内部にはマグネシウム製フレームを格子状に配したボックスラーメン構造を採用し,薄型でも堅牢性を確保しているという。


薄いだけでなくスタイリッシュなボディ


薄くても堅牢性はしっかり確保されている

 一目で「薄い!」と分かるボディは,一方で持ち歩く際のクラッシュの不安も連想させる。しかし実際に手に取った印象は,16.6ミリという薄さを意識させない堅牢さを感じた。また,耐久性を追求するため採用された本体上下キャビネットの特殊染色処理が,結果的に落ち着いたボディカラーとなってスタイリッシュな印象を与えている。

 注目は,今回のPC-MT1-H1で初採用となったキーボードの新機構だ。


表示部を開くと,自動的にキートップが本体からせり上がる。試作品のせいか,閉じたときにキートップが液晶画面に接触しているマシンもあった

 キーボードのギミックで有名なIBM ThinkPad 701Cのバタフライキーボードは,横に広がることでフルキーボード並みのキーピッチを確保したが,PC-MT1-H1は液晶ディスプレイを開くとキートップが自動的に本体からせり上がってきて,キーストロークを確保するという仕掛けが組み込まれている。この機構により,3ミリというキーストロークを確保している。ポップアップキーボードと名付けられたこの新機構は,「薄型化」と「キーの打ちやすさ(操作性)」というモバイルノートPCの相反性をクリアしていこうとするシャープの一つの答えとなっている。

 「新しい世紀に入った今年は,物作りによって社会に貢献するというメーカーの原点に立ち返り,シャープでしか作れないような夢と感動を与えるオンリーワン商品を提供していく。軽薄短小へのこだわりは他社に負けないと自負している」と語る川森事業部長の言葉に,モバイル分野に注力するシャープの意気込みが感じられた。

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[西坂真人, ITmedia]

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