News 2001年5月25日 06:36 PM 更新

IT政策,お金の使い方を間違ってませんか?

 日本アイ・ビー・エムが,夏モデルとして出荷するコンシューマー向けのサブノートパソコン,「ThinkPad i Series s30」に,IEEE 802.11b無線LANを内蔵したモデルを用意したのに伴い,各所で無線LANによるインターネット接続サービスの試験提供を開始するという。

 最初は,成田空港にある日本航空の施設「サクララウンジ」で,引き続き,京王プラザホテルや,ホテルオークラでのサービスが開始される。

 これらのスポットでは,手持ちのノートパソコンに無線LANの機能があればそのまま,ない場合は,カードや,パソコンなどの貸し出しを受けて,無線での高速インターネットアクセスが可能になるという。同社としては,こうしたクローズドな空間におけるLANの主流がIEEE 802.11bになると予測し,その普及に向けての戦略を展開していくそうだ。今回のサービス開始は,その一環だ。

 ホテルや駅,空港といった公共のスペースにおけるモバイルコンピューティングでは,インターネットへの接続が必要になったとき,古くはグレーの公衆電話を使ってきたし,今ではPHSや携帯電話を使う。ぼく自身はそうだった。それが,こうしたスペースで無線LANが使えるとなれば,とても便利だし,嬉しい。しかも,特別な機器が必要なのではなく,廉価になってきたIEEE 802.11b準拠の装置があれば,それでいいというのが分かりやすくていい。

社会インフラとして有効な無線LAN

 ヒトがコンピュータを使うであろう公共のスペースというと,いろいろなところが想像できるが,確かに空港のラウンジでは,ノートパソコンに向かいながら出発を待つ乗客をよく見かける。また,ホテルなどで開催されるミーティングやカンファレンスでも,パソコンを携帯しているビジネスマンはたくさんいる。

 逆に,駅では,そういうユーザーを見かけることはあまりない。携帯電話でメールを読み書きしている光景は日常的なものになってしまったが,未だに,ノートパソコンを開いて何かをしているという状況は,人目を引くし,物珍しげにも見られる。でも,ニーズはあるのかもしれない。というか,あるに違いない。

 こうしたサービスが,どんどん浸透していき,インターネットへの接続という行為が,限りなく無償に近いものになっていくことを期待したい。もし,政府が国のIT化を推進するのなら,公共の場所には,無線LANの施設の設置を義務付けるといった政策をとってくれてもいいんじゃないかと思う。

 もちろん,認証されたユーザーだけが利用できるサービスとして提供する方法もある。たとえば,DHCPによってIPアドレスを割り当てられると同時に,デフォルトゲートウェイが決まり,ブラウザを開くと,呼び出したURLにかかわらず,認証画面が表示され,IDとパスワードを入れれば,外に出ていけるといったシカケを作ればいい。

 こうしたシカケで,ユーザーを特定できるようにしておかないと,ネットワークを使った犯罪に使われる可能性だって出てくるだろうから,誰でも自由に使えるという便利さは魅力でも,ちょっとした敷居を挟んでおくべきかもしれない。ちょうど,GRICなどの,インターネットローミングサービスのようなスタイルで,各施設の無線LANが使えるようになればいいんじゃないだろうか。取引先の企業を訪問したときにも,セキュリティを考慮した上で,訪問者が無線LANを使えるようになっていると便利だ。

 今,モデムを内蔵していないパソコンを探すのが難しいように,こうした状況が整っていけば,無線LANを内蔵しているパソコンが普通になるかもしれない。携帯電話などのデータ転送速度を上げることも重要だが,Mbps単位のスピードが気軽に低コストで得られるという点では無線LANに軍配が上がる。こうした社会的なインフラこそ,官民一丸となって推進してほしい。少なくとも,「インパク」にカネを使うよりは,ずっと日本のインターネットユーザーに大きな恩恵をもたらすと思うのだけれど。

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[山田祥平, ITmedia]

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