News 2001年6月14日 11:50 PM 更新

省電力性能を大いにアピール,次期Crusoeも紹介――Transmetaセミナー

世界初のモバイルPCネット中継も行われたCrusoe Seminar 2001。次期Crusoe「TM5800」も紹介された。

 米Transmetaは6月14日,都内で「Crusoe Seminar 2001」を開催した。基調講演では,次期Crusoe「TM5800」も紹介。世界に先駆けて日本で紹介されたTM5800は,ニューヨークで開催されるPC EXPOで6月26日に正式発表される。

 同セミナーはインターネットで「4時間耐久,ノンストップ・インターネットライブ中継」として流された。中継システムとして,Crusoe搭載機の「バイオGT」を使用。同社によると,モバイルPCによるネットライブ中継は世界初という。


バイオGTで世界初のネットライブ中継。大容量バッテリーを搭載している。Crusoeの省電力をここでもアピール


無線LANカードでストリーミングデータを送信

 ビデオカメラ搭載のバイオGTで,セミナーの模様を撮影。無線LANでダイヤルアップルータに接続し,ISDNで送信したストリーミングデータは,ソニーの動画配信サイト「パーキャスTV」を通じて中継されたという。


Transmeta創設者でCTOのDavid R. Ditzel氏

 基調講演の壇上に立ったのは,同社の創立者でCTO(最高技術責任者)のDavid R. Ditzel氏。冒頭の挨拶は日本ユーザーへのリップサービスなのか「こんにちは。TransmetaのDavid Ditzelです。今日はCrusoeについて話せることを光栄に思う」と,はっきりとした日本語でスピーチを行い,さらに「Crusoe搭載のWindows PCが販売ランキングで1番と2番になったニュースを聞いて,大変嬉しく思う。このスピーチはインターネットで生中継されているので,これからは英語で話したい」と,日本語での冒頭挨拶を締めくくった。

 英語のスピーチに戻ったDitzel氏は,「通信とコンピュータ機能の融合でモバイルニーズが台頭し,一日中持ち歩けるバッテリーや軽量化へのニーズが高まると考えた」と,Transmetaを創立した背景について触れた後,「過去15年間にプロセッサの電力消費は約100倍に増えており,バッテリー駆動を考えた場合ベストとはいえない。熱量も凄まじく,コーヒーを温める加熱板以上の熱を発生している。このままいくと,原子炉に匹敵する熱量になってしまう」と語り,過剰に電力を消費するプロセッサへ警鐘を鳴らした。

 さらに,クロック当たりの動作量について述べ,「i486で1命令だったクロック当たりの動作量は,Pentium Proで4命令となったまではいいが,その後Pentium 4でさえ1クロック当たり4命令しかこなせていない。スーパースカラー方式は行き詰まっている」と訴えた後,ソフトウェアによって完全に命令セットが実行されるCrusoeチップの優位性を,コードモーフィングソフトウェア(CMS)やVLIWハードウェア,LongRunパワーマネジメントなど,Crusoe独自のテクノロジーを交えながら説明した。


スーパースカラー方式の行き詰まりを示した

 LongRunパワーマネジメントの紹介では,モバイルPentium IIIとCrusoeで,DVD再生時のパワーマネジメントを比較。Crusoeでは,アプリケーション持続に必要なレベルにまで周波数を減少させながら,スムーズなDVD再生を続けられるというデモンストレーションを披露した。


モバイルPentium IIIとCrusoeで,DVD再生時のパワーマネジメントを比較

 また,先日Intelが発表した超低電圧版/低電圧版モバイルPentium IIIにも触れ,「低電力消費と高性能化は同時にはできないため,(超低電圧版と低電圧版の)2つの違ったチップを導入するしかなかった」とし,同チップ採用のPCとCrusoe搭載PCとの性能比較を紹介。DVD再生時のバッテリー消費テストの比較では,Crusoeでは4時間4分の再生が可能な条件でも,超低電圧版Pentium III搭載機ではフレームドロップ多発で再生不可能となり,低電圧版Pentium IIIは1時間59分であったという結果を挙げ「低電圧版では映画1本分かろうじて再生できる。ただし,ラストシーンは見れないかもしれない」と語り,会場の笑いを誘った。


DVD再生時のバッテリー消費テストの比較

 会場では,Crusoeプロセッサのロードマップも公開された。


Crusoeプロセッサのロードマップ

 TM5800では0.13μメートルプロセスが採用され,動作クロックは600MHz〜1GHzを予定。周波数の高速化,低消費電力,ダイサイズの縮小,生産コストの低下といった特徴を持ち,量産向けに設計されているという。メモリはDDR SDRAMを採用し,CMSはTM5600のバージョン4.1から4.2へ進化する。


TM5800の特徴

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[西坂真人, ITmedia]

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