News 2001年6月26日 11:55 PM 更新

LモードはICカード公衆電話機を救えるか?

携帯電話の普及で存在価値を問われているICカード公衆電話機だが,Lモードの援護射撃で,思わぬ脚光を浴びることになるかもしれない。

 1999年3月に登場したICカード公衆電話機は,変造カードが社会問題にまで発展した磁気カード型公衆電話機に替わる救世主として,NTTが世に送り出したものだった。しかし時すでに遅く,世の中は携帯電話一色。公衆電話を使うことなどほとんどなくなってしまった。あるとすれば,携帯電話の電池が切れた時か,(回線混雑時に公衆電話が優先されるという噂から)コンサートチケット予約の時ぐらいだろう。


ICカード公衆電話機

 テレホンカードも,携帯電話普及前の頃のように,常に持参している人が果たしてどれだけいるだろうか。周囲の人に聞いてみても,携帯電話を2台以上持っている人はいても,ICカード公衆電話機用のテレホンカードを持っている人はいなかった。


ICカード公衆電話機用のテレホンカード

ICカード公衆電話機でLモード

 そんなICカード公衆電話機に再び注目が集まるかもしれない。火付け役は,6月29日午前2時からスタートする話題の「Lモード」だ。Lモード1契約につき,1枚もらえる「Lモードカード」を使うことで,ICカード公衆電話機からLモードが利用できる。LモードカードはICテレホンカードと同じ非接触型で,トップメニューのURLや利用者識別番号,ユーザーID,プロキシサーバのURLといった情報が記録されている。ICカード公衆電話機に,ICテレホンカードとLモードカードを重ねて挿入することで,Lモードメニュー画面が表示され,サービスを利用できるようになる。


ICカード公衆電話機でLモードが利用できる

 Lモードカードには,Lモードのユーザープロファイルが記録されているため,たとえNTT東日本の契約者が関西に行っても同じ環境でLモードを利用できるという。ローミング料金は当初から利用料金に含まれている。Lモードカードの発行料金は500円で,月額使用料は不要。1999年に登場したICカード公衆電話機は,当初よりICカードを2枚まで挿入することが可能とのアナウンスがあったが,このLモードカードで2枚重ねのシステムがやっと活用されたといえる。


ICカード公衆電話機に表示されたLモード画面

 Lモード利用者同士だけでなく,パソコンや携帯電話ユーザーともメールの送受信ができるという「Lメール」のアドレスに電子メールを転送設定しておけば,PDAなどモバイル端末を持たなくても,ICカード公衆電話機でいつでもどこでもメールチェックができるという。今では,メールの確認など携帯電話で簡単にできてしまうが,携帯電話の電波が届かないような場所で,急にメール確認しなくてはいけない状況に迫られたとき,便利かもしれない。

 Lモードによって,やっと日の目を見ることになるかもしれないICカード公衆電話機だが,最大の問題は,使いたい時にすぐそばにあるかどうかだ。

 NTTの発表によると,設置開始から2年経過した2000年度末(2001年3月末)のICカード公衆電話機の数は,全国で3万4000台という。NTT東日本の「公衆電話サイト」で検索すると,2001年5月現在で1万8665台の設置が確認できる。NTT西日本にはこのような検索システムはなく,2000年9月末現在の設置数(1万2141台)が公表されている。2001年度の事業計画では,NTT東日本で1万2000台,NTT西日本で7000台のICカード公衆電話設置を予定しているという。

 一見,多いようにも見える設置数だが,2000年9月末時点の公衆電話設置数が71万4772台ということなので,ICカード公衆電話機の数は全体の5%にも満たないのだ。地域によっても格差があり,東京都の5589台から高知県の6台まで,県ごとの設置台数にも開きがある。当初ICカード公衆電話機は,2004年までに公衆電話の半数に当たる40万台の導入を目標としていたが,このペースでは実現は難しいだろう。

 日比野克彦氏デザインのオレンジ色のICカード公衆電話機を探しているうちに,空がオレンジ色に染まっていたのでは,洒落にもならない。

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[西坂真人, ITmedia]

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