News | 2001年7月6日 11:58 PM 更新 |
7月6日に,従来の2倍の精度となる大口径電波望遠鏡の実験成功が発表された。VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉計)という最先端技術を応用したもので,電波星からの信号を2つ以上のアンテナで受信,コンピューターでシンクロ・合成処理を行うことで,2点間の距離に相当する口径の仮想望遠鏡を実現する。
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VLBI技術を応用した観測実験のシステム図 |
VLBIのプロジェクトは,通信総合研究所(CRL)と国立天文台,宇宙科学研究所,NTTの共同研究によるもの。NTTの内部では,NTT情報流通基盤総合研究所がVLBI技術の研究を行っている。同研究所主幹研究員の魚瀬尚郎氏が,7月4日に行ったセミナーの中で,VLBI技術が地震予知に応用できる点を示唆した。
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VLBI技術について語る魚瀬氏 |
VLBI技術の研究を6年前から行っているという魚瀬氏だが,VLBI技術の応用例として「2つのアプリケーションがある。1つは大口径の電波望遠鏡,そしてもう1つはアンテナ間の距離を高精度に測定できることを応用した地震予知だ」と語る。
同研究所はCRLとの共同研究で,関東一円の4カ所(小金井,三浦,館山,鹿島)に,11メートルアンテナの専用電波望遠鏡を設置。それぞれの地区で一日おきにクエーサーなど電波の強い対象天体を計測し,VLBI技術を応用して地殻変動の定常的な距離測定を行っている。超高速ネットワークとさまざまな補正技術によって「測定精度は驚くべきことに,数ミリの誤差」(魚瀬氏)。
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関東一円に設置された,専用電波望遠鏡 |
この研究の鹿島〜館山間を結ぶ基線の距離計測の結果で,昨年7月に起こった伊豆半島の噴火の予兆が確認できたという。「1996年から3年間はたいした距離変化もなく推移したが,今からちょうど1年前に大きな変化があり,急に距離が縮まった。そして7月に伊豆諸島で噴火があった。我々にとっても面白い研究結果となった」(魚瀬氏)。
この観測結果は,定期的に地震予知連絡委員会などに提出され,地震予知の参考データとして利用されているという。
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鹿島〜館山間の距離変動を示すグラフ。2000年6月頃から急激に距離が縮まっている |
「こんな研究を行っているのは,世界中でも我々だけ」と魚瀬氏。NTTによるギガビットクラスの安定したデータ転送が,VLBIという超高速ネットワークの研究に貢献している。ギガビットクラスのインフラが整えば「日本とアメリカの大口径電波望遠鏡が数ギガビットクラスの学術インターネット網でつながれば,未知の天体が発見できるかもしれない」(同氏)。
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