News 2001年7月12日 11:58 PM 更新

ネット端末のオープンな実行環境を目指す協議会が発足

ネットワーク機器のコンテンツやアプリケーションを,特定のOSやハードウェアに依存せずに実行できる“オープンなプラットフォーム”を提唱するOCPAは,我々ユーザーにどんなメリットをもたらしてくれるのだろうか。

 京セラ,シャープ,日本ビクター,英Tao Group Limitedの4社は7月12日,「オープン・コンテンツ・プラットフォーム協議会」(Open Contents Platform Association:OCPA)を今年9月に設立すると発表した。

 インターネットによって提供されるさまざまなサービス。これを利用するプラットフォームとしては現在のところ,PC,PDA,携帯電話/PHSなどが一般的なところだが,今後はテレビやFAX,デジタルカメラなど情報家電にもインターネットの世界は拡がっていく。

 このように,プラットフォームが多様になってくると,困るのはコンテンツプロバイダーだ。携帯電話を例にとっても,iモード,EZweb,J-skyなど多様なコンテンツサービスがあり,それぞれの方式に合ったコンテンツを用意しているのが現状だ。サービスを提供する側としては,接続される機器の環境に応じてコンテンツやアプリケーションを制作しなければいけない。当然,コスト高につながってくる。

 また,ハードウェアベンダー側にとっても,プラットフォームごとに異なるソフトウェア実装が必要となり,その結果生じるコスト増が,結局は本体価格に上乗せされてしまう。いずれにしても最終的には,ユーザーに不利益な結果を招いているのだ。

 このような制約にとらわれることなく,自由にビジネスを展開することができる“開かれた環境作り”を目指すのが,今回発表されたOCPAのコンセプトだ。


オープン・コンテンツ・プラットフォームのイメージ

 このオープンなプラットフォームを実現するために,Taoが開発したデジタル情報家電用の組込みJava環境「intent」が選ばれた。携帯電話やPDA,デジタルテレビ,ゲーム機などのネットワーク対応製品群で,Javaアプリケーションを高速に動作させたい場合や,マルチメディア機能のアプリケーションを簡単に作成したいケースに適している。


intentの仕組み

 Javaアプリケーションを高速に実行できる秘密は「仮想CPU技術」だ。CPUに依存しない仮想のCPU命令セット(Virtual Processor:VP)を用意しており,実行時に実際のCPU命令に変換する。ARM/StrongARM,x86,PowerPC,SH,MIPSなど幅広いCPUをカバーするほか,OSにも依存しないので,Linux,Windows95/98/NT/CE,OS9,iTRON,QNX4など数多くのOSをサポートする。プラットフォームやプロセッサーから独立するオブジェクトベースで,プログラムをC/C++で書こうが,Javaで書こうが,実行できる“マルチ実行環境”を提供するという。

 このintentを組み込むことにより,ハードウェアベンダーは自社製ネット端末向けにコンテンツを用意する必要がなくなる。また,ソフトウェアベンダーもOCPAの仕様に準じたコンテンツを作ることで,機器ごとのコンテンツ作りが不要となる。

 OCPAではこのオープンプラットフォームを実現するために必要な各種仕様の協議を行って標準仕様として策定。標準化された仕様を一般に公開する。また,制作されたアプリケーションやコンテンツ,機器などの動作確認や相互接続性の検証などを支援し,プラットフォーム普及に向け,セミナーの開催や各種展示会への出展などプロモーション活動を行う方針。API策定などはソフトウェアベンダーが中心になって行われる。

 現時点では,カプコン,ジャストシステム,セガ,タイトー,バンダイネットワークス,富士通プライムソフトテクノロジなど,ソフトウェアベンダーを中心に22社がOCPAに賛同を表明している。


OCPA設立発表会。左から,京セラ木村一氏,シャープ花田恵太郎氏,日本ビクター柴本猛氏,Tao GroupのFrancis Charig会長

 OCPA設立の発表会には,京セラ,シャープ,日本ビクターのハードメーカー3社が“発起人”として顔を揃えた。ソフトウェアベンダーの参加が無かったのは少々寂しいが「今回は我々ハードメーカーがプラットフォームの“受け皿”を作りましたよというアナウンス。今後は,ユーザーにより近いソフトウェアベンダーが中心となり,細かな仕様を決定していってもらいたい」(日本ビクター技術開発本部の柴本氏)。

 今後の予定としては,7月17日から始まる「モバイルインターネット・ソリューション展」のコンファレンスで一般向けに概要説明を行い,8月下旬から正式受付を開始。9月下旬にはOCPAを設立し,第1回総会を開催する予定。

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関連リンク
▼ 京セラ
▼ シャープ
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▼ Tao Group Limited

[西坂真人, ITmedia]

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