News 2001年7月17日 11:55 PM 更新

拡大するDVD-Videoの“見えない市場”

「プレイステーション2」でDVD-Videoの市場が拡大したというのは周知の事実だが,その裏では,統計データには出ない市場が広がっていた。

 DVD市場が拡大している。社団法人日本映像ソフト協会(JVA)の発表では,2001年上半期(1月〜5月)のDVD-Video市場は,タイトル出荷本数が1635万本,売上高は524億円を記録。出荷本数,売上ともにビデオカセット市場を上回ったことになる。これを受けてパイオニアは,「DVDワークショップ2001」に集まったコンテンツ制作者を前に,「パッケージメディアとして,VHSに取って代わったと言っても過言ではない」と,事実上の勝利宣言を行った。

 「プレイステーション2」の登場により,急成長を見せたDVD-Video市場。JVAの統計によれば,2000年のDVD-Video市場は前年比で300%,2001年もここまで前年同期比で181%という大きな成長を見せている。だが,パイオニア アプリケーション営業部の水谷純一氏は,これに加えて,「統計だけでは分からないDVD-Video市場もある」と話す。

 統計データに現れない──つまり,通常の流通経路を通らないDVD-Videoということになるが,もちろん裏ルートを流れる“危ないタイトル”のことではない。結婚式や子供の運動会,ならびに雑誌の付録といった用途が増加しているのだ。「本数としては,DVD-Video市場全体の3割程度は出回っているのではないか」(水谷氏)。

 個人がDVD-Videoを制作するケースが増えてきたのは,業務用中心だったDVD-Rが,個人が手の届くレベルに落ちてきたからだ。DVD-Rフォーマットで記録された映像は,市販のDVDプレーヤーで再生することができる。

 パイオニアは,今年春より民生用DVD-RドライブのOEM出荷を開始。アップルコンピュータの「PowerMac G4」に採用されたのをはじめ,ロジテックやソニーなどからはIEEE 1394接続の外付け型DVD-R/RWドライブが登場した。さらにパイオニアも自社ブランドで,近々ATAPIタイプの外付け型を発売する予定だ。

 また,パイオニアからのOEMではないが,松下電器産業が発売したDVD-RAM/R対応のドライブは,DVD-R/RWドライブの9万円台で売られているのに対し,半額近い5万円前後で店頭に登場。同製品が入手困難な状態となっていることからも,DVD-R人気がいかに高いかが分かる。

DVD-R“for Authoring”とDVD-R“for General”

 パイオニアが2000年6月に発売した業務用の「DVR-S201」は,実売価格が60〜70万円。それから1年でこれほど価格が下がったのは,DVDフォーラムで「DVD-R for General」フォーマットが策定されたからだ。「DVD-R for Generalによって,コスト的なハードルが下がった」とは水谷氏。DVD-R for Generalは,DVR-S201など業務用向けDVD-Rドライブが準拠する「DVD-R for Authoring」と対をなすフォーマットだ。

 両フォーマットの違いを説明すると,DVD-R for Authoringは,大量配布を目的に規格された。強固なコピープロテクション機能やリージョンコードを埋め込む機能を備え(DVD-R for Autoring対応のソフトウェアが必要),同フォーマットのDVD-Rは,量産用のDVDマスタリングとして使用することが可能だ。一方のDVD-R for Generalは,一般ユーザーによる少量配布を目的とした規格。そのため,特別なコピー防止機能はなく,同フォーマットで書き込まれたデータは自由にコピーして,配布することができる。

 このDVD-R for Generalフォーマットが,DVD-Videoの“見えない市場”の拡大に貢献したわけだが,“目に見える”パッケージメディアとしてのDVD-Videoの成長も,ビデオテープを抜いたことで止まるものではない。

 パイオニアなど10数社が参加する「Golden Gate Group」は,DVD-R for Authoringフォーマットで書き込んだデータをそのままプレスマスターとして利用できる「カッティングマスターフォーマット」(CMF)をDVDフォーラムに提案しており,勧告されるのを待っている状態だ。そして,CMFが勧告されれば,現在DLTでプレス工場に入稿しているものを,DVDーRで行えるようになり「オーサリング作業の大幅な効率化が実現する」(水谷氏)。

 もちろん,勧告された段階でプレス工場側やオーサリングツールベンダーの対応が始まるため,勧告されたらすぐDVD-Rで入稿できるといういうわけではないが,水谷氏は,「これによって制作会社の参入が活発になれば,DVD-Video市場のさらなる拡大にも繋がるだろう」と期待を込める。

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[中村琢磨, ITmedia]

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