News 2001年7月17日 07:05 PM 更新

見えてきた「ポストDVD」

デジタルTVやFTTHに対応するポストDVDの次世代光磁気書き込み規格。目下,各社がさまざまな提案を行っているところだが,主要ポイントでは一致しつつあるようだ。DVDの二の舞は避けられるのだろうか?

 2001年上半期のメディアコンテンツ出荷量で,DVDがついにVCRを抜いたようだ(関連記事)。名実ともにDVD時代が訪れたわけだが,急速な情報ネットワーク技術の進歩は,早くも「ポストDVD」へと業界関係者の目を向けさせている。

 このポストDVD規格については,これまでは多分に研究開発レベルの要素が強かったため,各社が各様の規格を提唱していた。だが,光関連産業の総合展示会である「インターオプト2001」(主催・財団法人光産業技術振興協会)で講演を行ったパイオニアの松本慶一氏によると,ここにきて各社の開発方向が一致しつつあるという。

 同氏によれば,ポストDVD,すなわち次世代の光磁気ディスク規格が求められるのは,次のような性格だ。

 まず,第一に「デジタル放送時代の映像記録メディア」であること。これには,HDTVを記録するのに十分なだけの記憶容量を有するとともに,「著作権保護されたコンテンツの正当な記録手段である」ことが必要だ。もうひとつは「ブロードバンド時代の情報記録メディア」であることで,FTTH時代のアーカイブや,ホームサーバの記録手段足りえることが求められる。容量・著作権保護など,どの面をとってもDVDでは力不足というわけだ。

 そこで,次世代光磁気メディアに求められる仕様をまとめると,次のようになる。

容量:HDTVの映像を2時間以上記録できること,すなわち片面単層で少なくとも「23GB程度」の記録容量が必要になる。ただ,松本氏によれば,D-VHSを上回る50GB以上の容量を達成することが目標だという。(以下の仕様の話は,すべて直径12cmのディスクを前提にしている)。

速度:データ転送速度は30Mbps以上。これまでのCDやDVD規格では,記録の取りまとめ時に倍速記録への考慮がなく,それが倍速以上に高速化したときの互換性問題やエラーの発生などにつながってきたが,この新しい規格では倍速記録も考慮すべきだという話が出ており,その場合は70Mbps以上のスピードになる。

著作権保護:デジタルストリーム記録への対応。エンクリプションされたままのデータストリームを記録できるようにする。(トランスポートストリームでの記録)

 この著作権保護についてはCPTWG(Copyright Protection Technical Working Group)などで検討されることになるが,方向としては,「違法コピーを防止する」というDVD時代の考え方から,「視聴制限をする」という方向へ,議論の中心が変わってきているそうである。つまり,従来はユーザーは「コンテンツを買って所有」していたが,今後は「見たり聞いたりする権利を買う」という形になるわけだ。

ポストDVDはグルーブ記録方式で一致

 以上のような要求仕様をベースにした結果,各社の開発方向と仕様の提案内容は,ほぼ次のような点で一致しつつある。

  • 波長が405nmの青紫レーザーを光源に利用

     
  • 厚さ0.1ミリの薄型カバー層

  • 高N.Aレンズ N.A(0.85)の利用−−N.A.(=開口数)は,レンズの明るさを表す指標のひとつで,値が高いほど解像度が向上する。N.A(0.85)は現時点で最高レベル。

  • グルーブ記録−−DVD規格ではこの面の不一致が最大の問題だったが,ROMとの互換性が取れるという点からグルーブ記録で一致しつつある。実際,DVD-RAM規格がランド・グルーブ記録方式を採る上での最大の提唱者であった松下電器産業が方向を転換。今春米国で開かれた光記録の国際会議「ODS2001」で,片面単層で25GBのグルーブ記録方式のポストDVD規格を提案している。

  • 多層化技術の採用−−書き換え型にも多層化技術を応用する。その結果,単層で23-25GB程度(12cmディスク)が,2層であれば43-50GB程度になる。

     以上のような要件から,この新しいディスク規格は同じ12cmのディスクで考えた場合,DVDの約5倍という18Gbit/inch2の記録密度を有する。

     もっとも主要ポイントで一致は見たものの,「ODS2001」でも,松下,NEC,パイオニア−TDK,ソニー−Philips(DVR-blue)などのように,各社が各様の仕様を提案しているという現実には変わりがない。ユーザーからすれば,プラスだのマイナスだので混乱したDVD規格の悪夢の再現だけは避けて欲しいところだが,さてどうなるか。松本氏は講演の締めくくりで,こう期待を持たせてくれた。「(書き込み記録についてメーカーは)かつてはオリジナルフォーマットでかまわないという考え方があった。だが,オープンな方向へ向かってきている」。

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    [中川純一, ITmedia]

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