News 2001年7月24日 11:59 PM 更新

松下電器,「Leica」のレンズでデジカメ再挑戦

松下とLeicaが共同開発したデジタルカメラが今秋にも登場する。Leicaの光学技術と松下の最先端エレクトロニクス技術が結びつくと,どんなデジタルカメラができるのだろうか。

 松下電器産業と独Leica Cameraは7月24日,デジタルカメラ分野で協業することで合意したと発表した。複数機種のデジタルカメラを共同で開発,今秋以降の商品化を目指す。Leicaといえば,多くのカメラファンを魅了してやまない有名ブランド。ドイツのクラフトマンシップが結集されたそのレンズや,質実剛健なボディに,松下の最先端エレクトロニクス技術が結びつくと,一体どんなデジタルカメラが生み出されるのだろうか。

 今回の共同開発では,Leicaがレンズを中心とした光学システム技術を担当,松下が電子部品やデジタル画像処理などエレクトロニクス関連を担当する。AVC社を筆頭に,半導体社,松下寿電子,日本ビクター,ウエスト電気,松下電子部品,松下電池など松下グループの持つ技術力を結集して,デジタルカメラ開発にあたっているという。

 両社は,2000年8月にデジタルAV機器用レンズに関する技術協力契約を締結し,「DECOMER(ディコマー)レンズ」を搭載したDVカメラを発売している。「デジタルカメラの社内プロジェクトは,昨年中旬頃から始まった」(松下電器)というように,どうやら昨年8月のDVカメラ技術協力の際に,両社のデジタルカメラ戦略も同時にスタートしていたらしい。

 Leica CameraのCEO,Hanns.Peter.Cohn氏は「松下との協業は,DVカメラの成功によるものが大きい。デジタルカメラは,我が社にとっても重要な問題。今後3年間で売り上げの25%をデジタルカメラが占めるようにしたい」と語る。


Hanns.Peter.Cohn氏

 両社の共同開発によるデジタルカメラは,年内に3機種が予定されている。第1弾は,9月前半の発表予定だ。以後10〜11月にかけて2機種を順次発表していく。

 共同開発による製品には,Leica認定のレンズを搭載して「Leica」と「Panasonic」のダブルブランドで販売する。「“Leica認定”というのも,単なるブランド貸しではない。設計開発から積極的にLeicaのスタッフが参加したうえでの認定となる」(松下電器)。ただし,レンズの製造はドイツ本国の工場では生産キャパが足りないこともあり,当面は日本国内で製造される。

 気になるスペックは,最低でも100万画素以上の解像度で,400万〜500万画素クラスのハイアマチュア機までをとなる見込み。

 松下は,以前はビデオ事業部がデジタルカメラを担当していた時期もあり,小型軽量がセールスポイントの「COOLSHOT」シリーズが1997年から1999年まで発売されていた。しかし,販売が振わなかったこともあって子会社の松下寿電子工業にデジタルカメラ事業を移管した経緯がある。松下電器産業の専務でAVC社社長を務める戸田一雄氏は「デジタルカメラに関しては,松下電器グループとしても大きな事業成果がなかったというのが正直なところ」と語る。

 それではなぜ,今になってデジタルカメラ市場へ“再参入”するのか。デジタルカメラ市場といえばカメラメーカーやAVメーカー,フィルムメーカーなど10社以上が激しい戦いを繰り広げており,進出よりも撤退やOEMへの移行といった話しの方が多い。しかし,松下の見方は違う。

 同社の予測では,2000年に1100万台というデジタルカメラ市場の規模は,2005年には全世界で4000万台になる。同社では,2003年の世界・日本両市場で,その10%を握る計画で,同社にとってはまだまだ伸びる余地のある未開拓の市場ということになる。

 しかし,デジタルカメラ市場での“Panasonic”ブランドは,決して高くはない。そこで再参入の“秘密兵器”に選んだのが,銀塩カメラのユーザーにも高いブランドイメージのあるLeicaだったというわけだ。


デジタルカメラの市場規模。2005年には4000万台に達するという

 最近ではデジタルカメラの画素競争も400万〜500万画素となり,人間の目の分解能では銀塩フィルムに追いついたとさえ言われている。このように解像度が上がっていくと,画素数の差よりもレンズの性能の方が製品の良し悪しを決める最大のポイントになってくる。ソニーが“Carl Zeiss”ブランドのレンズを前面に押し出してアピールするのも,ニコン,キヤノン,オリンパスといった銀塩カメラ出身のメーカーがデジタルカメラ市場で元気なのも,そのせいだ。

 400万,500万画素と解像度が上がっていくとデジタルカメラの画像も,銀塩なみに「芸術」を表現できる可能性がある。「Leicaのレンズは“温かみ”と“うるおい”与えてくれる」(戸田氏)。そのLeicaの光学技術と松下のデジタル技術,画像処理技術を融合して「“新しいカメラ像”を作っていきたい」(同氏)。

 よく写るようになったが,イマイチ「味」に欠けるデジタルカメラの世界。Leica―松下のカメラは,そのデジタルカメラに新境地をもたらすことができるだろうか。


共同開発の発表会で握手を交わすCohn氏と戸田氏

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[西坂真人, ITmedia]

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