News 2001年7月26日 09:56 PM 更新

コナミ・ハドソン提携はなぜ進められたのか

コナミがハドソンを傘下に――。この提携はなぜ進んだのか。コナミの上月社長は,ゲーム業界再編の波は,まだまだ始まったばかりだと強調する。

 再編が続くゲーム業界。今度は,コナミとハドソンだった。

 コナミは7月26日,ハドソンと資本提携を含む戦略的提携を結ぶと発表した。コナミは,ハドソンが8月に実施する第三者割当増資を引き受け,ハドソン株38.81%を保有する筆頭株主になる。また,コナミは12月1日付けで子会社のコナミ コンピュータ エンタテインメント スタジオ(コナミSTUDIO)の札幌事業を分割,ハドソンがこれを吸収する。その際,ハドソン株との交換を行うので,グループ会社を含めたコナミのこの時点での持株比率は,45.48%まで上昇する。「ハドソン」ブランドは存続するものの,これでハドソンは実質的にコナミグループの傘下に入ることになった。

 両社の説明によると,今回の資本提携の話が持ち上がったのは,今年6月の第1週目のこと。これはスクウェア,ナムコ,エニックスの三社連携が発表されてから約1カ月というタイミングで,話を持ちかけたのはコナミの上月景正社長のほうだった。

 ハドソンの工藤浩社長は,当初,上月社長の話に「非常にとまどった」と胸の内を明かす。だが,「正念場を迎えたゲーム業界を,一社だけで生き抜くのは困難」と判断,最終的には受け入れることに決めた。コナミの上月社長とはCESA(コンピュータエンタテインメントソフトウェア協会)の常任理事として長い付き合いだったことも,決断を後押ししたようだ。

 ゲーム業界では老舗のハドソンにとって,躓きの石になったのは,4年前の1997年11月,メインバンクの北海道拓殖銀行が破綻したことだった。おかげで同社は「新作タイトルの開発資金の調達すら困難な状況に陥った」(工藤社長)。

 結局,同社が生き延びるために選んだのは,他社ブランドの商品開発である「RSD事業」で,これまで「マリオパーティ」(任天堂)などの開発を手がけてきた。工藤社長は「RSDで手がけた製品は高い評価を得たと思う」と言うものの,独立系のゲームソフトベンダーとして,自社タイトルの開発に資金をまわせないのは,非常に悔しい思いだったに違いない。

 今回の提携のポイントも,そこにあった。ハドソンの中本伸一副社長がいみじくも「コナミの出資により,当社の財務体質は非常に良くなる」と述べたように,今回の提携で,ハドソンは開発資金の問題を一気に解決することができる。増資で50億円近い資金がハドソンの手元に残るが,その大半はゲーム制作資金に充てられる予定だ。

 また,開発力という面では,コナミSTUDIO 札幌の統合効果だけではなく,コナミが上海に持つ下請け制作会社など,コナミ側のリソースをハドソンは利用できるようになる。これは人材不足を嘆くハドソンには願ってもない話だ。課題であった販売力も,「コナミの流通網でハドソンのタイトルを販売することも協議していく」(コナミ CS事業本部長の北上一三氏)と,提携によるシナジー効果で大幅な改善が期待できる。

 後は,自主独立の旗を降ろすことへの抵抗感だったが,ハドソンの社名やブランドを残し,「ハドソンの社内文化を尊重することも約束されている」と,コナミ側がハドソンのプライドを傷つけない条件を提示したことで,それもなくなった。

好き嫌いの問題ではない

 記者会見の席,コナミの上月社長は,「ハドソン以外のソフトメーカーと資本提携を結ぶつもりもない」とハドソンが特別な事例であることを強調した。さらに「出資比率を引き上げる計画もない。ハドソンは子会社ではなくパートナーだ」とも述べ,ハドソンを気遣っている。

 このように上月社長がハドソンを評価するのは,モバイルとオンラインゲームの2ジャンルに“強み”を持つと考えるからだ。

 モバイルゲームでは,NTTドコモの「iアプリ」向けに「ボンバーマン」や「スターソルジャー」など往年の名作を移植。積極的に事業を展開しているほか,「次世代携帯電話向けのタイトル開発でも,既にかなりのノウハウを蓄積している」(中本氏)。

 一方,オンラインゲームでは,現時点で商用サービスを行っているわけではない。だが,マリオパーティーやボンバーマン,ならびに「桃太郎電鉄」などで培った“マルチプレーヤー”の技術がハドソン側の財産になる。両社で今後,どのようなオンラインゲームを開発するのか具体的には明かされなかったが,説明から推測する限りでは,「ボンバーマンと桃太郎電鉄ブランドの再構築」を基本線に進められる模様だ。

 もちろん,それ以外の分野でも,協業の効果は期待される。ハドソンの中本氏が描いて見せたのが「ハドソンの技術力に,コナミの経営資産」という組み合わせ。コナミはJリーグや日本野球機構,K1,日本ゴルフツアー機構と結んだライセンス,ならびに人気キャラクター「遊戯王」の版権など,ゲーム開発の前提になる豊富な資産を持っている。「技術力はあるが,商売は得意ではない」(中本氏)というハドソンも,これらの資産が用意されていれば,「キャラクターを活かした面白いコンテンツをどんどん作っていく」(同)ことができる。

 「ゲーム業界は淘汰の時代」――記者会見では何度もこのフレーズが使われた。上月社長は今後の業界動向について,「数年以内に勝ち組み,負け組みがはっきりする。その頃には,業界は2極,または3極化しているだろう。再編はこれからだ」と予測する。

 今回の提携で懸念されるのは,「コナミ傘下」に入ることで,ハドソンのRSD事業に悪影響が出ること。コナミはゲーム業界では一人勝ち状態であり,その分,軋轢もある。だが,ハドソンの工藤社長は,そんな懸念を一笑に付した。「出る杭は打たれるの例えのとおり,コナミのことを嫌いだと言うところもある。だが,今のゲーム業界ではそんなことを言っている場合ではない」。業界の現状は,そこまで厳しいというわけである。

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[中村琢磨, ITmedia]

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