News 2001年7月27日 01:58 PM 更新

次の勝負は“eウォレット”で――AOL+AmazonでMS Passportに対抗(1)

先日発表されたAOLとAmazonの提携は,大きな意味を持っている。この提携によりAOLとMicrosoftの戦いは,新たな戦場へと舞台を移すことになる。マーケティングに強いAOLは,Microsoftの技術に対抗するため,Amazonの力を借りることになる。

 AOL Time Warnerは先日,オンライン小売大手のAmazon.comに1億ドル投資した。この提携は,今後台頭してくるであろう重要な新市場での,AOLとMicrosoftの対立の構図を浮かび上がらせている。

 長年,インスタントメッセージング(IM)サービスやインターネット接続サービスの市場で競い合ってきたAOLとMicrosoftだが,両者は今,電子商取引の分野――特に,Webナビゲーションとオンラインでの商品購入をしやすくするための技術――をめぐって,対決の姿勢を整えている。「eウォレット」(電子財布)と呼ばれるこの技術は,ログイン名や商品配送先,クレジットカード番号など,消費者が頻繁に入力を要求される情報を保管するもの。この技術が集める情報は,消費者や企業のインターネットの利用法をコントロールするための重要な道具にもなる。

 AOLの内部関係者によると,7月23日に発表された提携は,Amazonの電子商取引技術を利用して,AOLのeウォレットや関連する認証サービスのレベルアップを図ることが狙いだという。Amazonは「顧客サービスに強い」という評価を得ているが,Amazonのこうした名声を支えているのが同社の電子商取引技術。このAOL関係者は,Amazonとの提携によってAOLは,Microsoftが提供する人気の高い認証サービス「Passport」と直接渡り合うための武器を得た,と付け加えている。

 このことの意味は大きい。インターネット上の何十億もの取引を支える技術を制することができれば,非常に多くの顧客データにアクセスできるからだ。

 Sun MicrosystemsのCEO(最高経営責任者),Scott McNealy氏は,23日にカリフォルニア州カールスバッドで開催されたIndustry Standard Internet Summitで次のように語っている。「もし“次の世代は私たちとは違ってオンラインで実際に買い物をするようになる”という見方を基本的に信じるなら,まずはオンラインディレクトリを勝ち取ることだ」

 同氏は,AOLとAmazonの提携については特にコメントしなかったが,「大きな戦いが繰り広げられている。この戦いを誰が制するのか考えるとワクワクする」と述べた。この戦場では,AOLとMicrosoftに加えて,Yahoo!もメジャープレイヤーと捉えられている。

 Microsoftを長年敵対視しているMcNealy氏は,Microsoftを指して,倒すべき会社だと語っている。同氏は,MicrosoftはWindowsでデスクトップを支配しており,このため簡単にサービスの配信やデータの収集ができてしまうのだと批判している。例えば,Micosoftの強化型IM機能を使うには,Passportへの登録が必要だ。Microsoftは,10月に発売が予定されている次期OS「Windows XP」に,強化型のIMソフトを組み込もうとしている。

 Microsoftは,Passportを今後の事業の中心に据えている。同社は既に「HailStorm」というコードネームで呼ばれる計画の詳細を明らかにしている(3月21日の記事参照)。HailStormはその機能を,Passportの認証技術に大きく依存する。まだ開発中だが,このサービスで加入者は,例えば予定表などの文書を,PCからだけでなく,いろいろなデバイスで共有し,見ることができる。

 こうしたサービスは,顧客と長期に渡る関係を築き上げるための強力な武器になると見られている。例えば,Webユーザーは,電子メールアドレスが変わってしまうため,インターネットサービスプロバイダ(ISP)を変更するのを嫌がる傾向にある。Passportを通して,これまでより広い範囲で利用できるインターネット上のIDを提供することで,Microsoftは自身の顧客だけでなく,Passportを利用する数百万のユーザーとのビジネスを考えるWeb企業に対して,非常に大きな影響力を行使することができる。

 AOLがこれに本気で対抗しようとするなら,Amazonとの提携は,その足がかりとなるだろう。

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