News | 2001年7月31日 01:00 PM 更新 |
すでに多くの情報が氾濫しているので発表済みのような気になるが,インテルは31日,0.13μmの製造プロセスを使って作られた新しいモバイルPentiumIII-M(Tualatin)を正式に発表した。これに伴ない,PCメーカー各社も同プロセッサを搭載したノートPCを相次いで発表している。
この新しいCPUはTualatinコアを使用しており,クロック速度は1.13GHz,1.06GHz, 1GHz, 933MHz,866MHzの5種類。4400万個のトランジスタからなっており,1.4V以下の動作電圧で駆動する。ゲート長は0.7μm。
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すでに搭載製品すら秋葉原で売られているが,ようやく正式発表されたモバイルPentiumIII-M |
0.13μmプロセスに移行したことで,0.18μmプロセスに比べて1ウェハーあたりに取れるダイ数が約2倍になった。これはもちろん,製造コストの低減に結びつく。なお,現時点では200mmのウェハーを使って製造されるが,来年からは300mmウェハーに移行する計画で,そうなると従来の4倍のダイを製造することができるようになる。
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モバイルPentiumIII-Mのダイイメージ |
このモバイルPentiumIII-Mの売り物は,周知の通り,その低消費電力性だ。これは動作電圧が従来製品に比べて低いというだけでなく,「拡張版インテルSpeedStepテクノロジ」と「DeeperSleep」という技術によって支えられている。
このうち,拡張版インテルSpeedStepテクノロジはバッテリ駆動時に,駆動モードをシステムの動作状況に応じて自動切換えするものだ。たとえば,1.13GHzのCPUの場合,バッテリ使用時の低消費電力モードでは,通常,1.15V/733MHzで駆動する。この時点での平均消費電力は2W以下だ。
しかし,CPUの負荷が高くなっていると見ると,最高性能モードに切り替わり,一気に1.4V/1.13GHzで駆動するようになる。従来の省電力モードの場合,CPUがアイドル状態だと動作電圧を減らすという考え方をするケースが多かったが,「拡張版インテルSpeedStepテクノロジ」は通常使用時を最適化モード(低消費電力モード)とし,グラフィック処理などCPUを使い切る時にだけ最高性能を出すようにしている点が,変わっている点だ。1.13GHz〜933MHzまでの4製品は,最適化モードでは1.15V/733MHzで駆動し,866MHzだけ1.15V/667MHzで駆動する。
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技術説明会での拡張版インテルSpeedStepテクノロジのデモ |
一方,Deeper Sleepは,その名が示すように,従来のDeep Sleepよりさらに消費電力を低減するパワーマネージメントのステータスだ。プロセッサステートを保持しつつ,プロセッサの電圧を最低動作電圧以下にまで落とすもので,今回の製品ではこのDeeper Sleepモードでは0.85Vになる。これはDeep Sleepに比べ,約60%消費電力を軽減できる。このモードの切り替えはACPIのタイミングがトリガーになっており,C3ステートからしばらく経つと,C4ステートに切り替わるようだ。
低消費電力化が図られる一方,モバイルPentiumIII-Mでは高速化へのアプローチも採られている。システムバスクロックを133MHzに引き上げたことがその一例で,従来のバスクロック100MHzに比べてバスバンド幅が33%拡張,システムメモリとI/O,グラフィックスのデータ伝送のボトルネックが軽減された。
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モバイルPentiumIII-Mのテスト用マザーボード。上がモバイルPentiumIII-Mで,その下に見えるのが830。右のチップはI/OコントローラハブのICH-3 |
この他,L2キャッシュは512KBと従来のモバイルPentiumプロセッサに比べて2倍になっており,データプリフェッチ回路の性能向上も図られている。
IntelではモバイルPentiumIII-MをフルサイズA4ノートPCから,サブノート,そして,さらに小型なタブレットPCのような製品までを含めた,ノートPCのすべてのセグメントに対応するプロセッサとして位置付けている。「モバイルPentiumIII-Mと(チップセットの)i830でトップトゥボトムの展開をする。同じアーキテクチャ,同じチップセットで設計できることで,開発コストを下げ,製品を迅速に市場に供給できるようになる」(同社)。
より小さなノートPCへの対応ということで配慮がなされているのがパッケージングだ。提供されるチップパッケージの選択肢はMicro-FCPGAないしMicro-FCBGAだが,この場合,FCBGAの表面実装ベースでのサイズは35mm×35mm,高さは2.5mmとなる。この高さはFCPGAでソケットに挿入した状態でも4.9mmなので,タブレットPCのような非常に小型なPCを設計する際でも,自由度が大きくなるメリットがある。
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用意された2つのパッケージ |
ただ,モバイルPentiumIII-Mでは低誘電率(low-k)の絶縁体を組み合わせるなどの工夫で,消費電力/発熱を抑えながら,高速化を図ったはずだが,実際のところ,1GHzを超えるだけに発熱はかなりのものがあるようだ。
ノートPCベンダーでもこの部分が工夫のしどころになっており,たとえば,日本アイ・ビー・エムの「ThinkPad T23」の場合,これまでのThinkPadのファンが内部から外部への排気となっていた構造を変更,外部から風を吸い込み,CPUをより直接冷やす構造になっている。ソニーの「バイオノートGR」でも,これまでのバイオ固有の「インタークーラーフラップ機構」に代わって「ハイパーサーマルクーリング機構」という新しい放熱機構が採用されている。ノートPCのスリム化という流れもあり,新しいモバイルプロセッサの登場は,ノートPCベンダーに「放熱」という課題を改めて突きつけたようだ。
なお,米Intelの発表によると,モバイルPentiumIII-Mの大口ユーザー(1000個単位)向けの価格はローエンドの866MHz版が247ドルで,以下,933MHz版が278ドル,1GHz版が394ドル,1.06GHz版が499ドルで,ハイエンドの1.13GHz版が625ドルだという。
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