News 2001年8月2日 11:29 PM 更新

「地域密着情報」に目を付けた松下電器(2)

 今回の提携の裏では,来年春にサービス開始予定の蓄積型放送サービス「eプラットフォーム」で,地域に密着したこの動画コンテンツを,生活・地域情報の最大の目玉にしたいという狙いが松下サイドにある。また,Hi-HOと連携したパソコン上での情報提供や,カーナビ/携帯電話といった松下グループの情報通信端末と連携してのサービス開発を行っていく。

 「デジタル放送時代には,地域別の情報が重要となってくる。その時はモバイルへも連携していく。さらにITSで全国交通情報網ができてくる。今回の協業は,そのような時代を踏まえてのこと。将来の夢は大きい」(前川本部長)。


地域密着の動画コンテンツは,eプラットフォームにおける生活・地域情報の最大の目玉


カーナビへの地域情報配信も行っていく計画

 タウン情報全国ネットワークは,全国各地の地域情報誌が加入しているタウン情報誌の媒体ネットワークだ。現在,33誌が加盟している。基本的には1県に1誌で,県庁所在地に発行拠点を構えている。タウン誌の歴史は意外と古く,日本初の地域情報誌は長野県の地域情報を集めた「ながの情報」で,1973年に発行している。1972年に情報誌の草分け“ぴあ”が創刊されたが,その翌年にはタウン誌も産声を上げていたのだ。現在,各タウン誌は毎月平均2万〜10万部を発行し,全国33誌の総発行部数は128万部にも及ぶというから,メディアとしても立派なものだ。


記者発表の会場には,各地のタウン誌が並べられた

 タウン誌を「地域密着型の情報メディア」と紹介するのは簡単だが,東京など大都市にいるとなかなかピンとこない。しかし,地元で毎月数万部の発行部数を誇るだけはあり,地域に特化した情報は質・量ともに豊富で,そんじょそこいらの総合情報誌などは太刀打ちできないほど。下手な観光ガイドブックを買うよりも,現地に行ってからタウン誌を購入した方が,地元の人しか行かないような穴場に出会える確率も高い。

 緒方社長は「地元の市長や県知事に取材を申し込んでもすぐにOKが出る。一方で,市場のおじさんにも馴染みがあるというように,地域に根ざした絶大な信頼感がタウン誌の強み」と訴える。

 ブロードバンドが世間の注目を集めて久しいが,いくらインフラが整備されても,そこに流すコンテンツが魅力的なものでなければ宝の持ち腐れとなってしまう。コンテンツの枯渇が叫ばれる中,“地域密着情報”という魅力的なコンテンツを有する「タウン誌」に松下電器が目をつけた。

 同社のコンテンツビジネスは過去を振り返ると失敗も多いが,今回の取り組みもデータベースセンターの構築や各地のタウン誌企業への映像機材調達など,かなりの初期投資が予想される。「内部調達できるものはできるだけ行うなど無駄を省き,数億円に満たない投資で抑えたい」(前川本部長)。

関連リンク
▼ 松下電器
▼ タウン情報全国ネットワーク

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[西坂真人, ITmedia]