News 2001年8月23日 11:59 PM 更新

DDR DRAMが次世代メモリの勝者になる――AMD Developer's Conference(2)

 コストがPC133 SDRAMと変わらないという事情は,「モジュールレベルでも同じ」と話したのは,メルコ 応用技術グループリーダーの大嶋健康氏だ。同氏によれば「DIMMはもちろん,小型モジュールのSO-DIMM,さらに小型のMicro-DIMMでも,基板サイズ,ピン数,インピーダンスコントロールなど,すべての点で従来のSDRAMと同じコストでモジュールの製造が行えるようになっている」という。

 特にコストに大きく関わるインピーダンスコントロールに関しては,「すべてのモジュールで60Ω±10%の範囲に収めればよく,誤差範囲はPC133 SDRAMと同等であるため,コスト高要因とはならない。この事情は,400MHz,533MHzの転送レートを持つメモリチップ向けに仕様策定が進められているDDR2規格においても変わらない」(大嶋氏)と,DDR SDRAMのメモリモジュールに価格上昇要因はないと話した。

 大嶋氏は2001年のメモリ市場において,DDR SDRAMはわずか3%のシェアしか持たないだろうと予測。あくまでもSDRAMが市場を支配しているとしながら,今年の第4四半期にコストが完全にPC133 SDRAMと同一になるのをきっかけに,普及が加速するとの予測を示した。これは前出のマイクロン 山ノ上氏のプレゼンテーション内容ともほぼ一致する。2002年には15%,2003年には50%,そして2004年には70%に達するだろうとの予測だ。このDDR SDRAMのシェアには,DDR2などの次世代規格も含まれている。


拡大画像

 「過去には性能は高いが,価格も高いというメモリシステムがあった。しかし,それではいくら高性能でも普及が進むことはない。性能が高い上,価格も(現行製品と)変わらないという状況にならなければダメだ」(大嶋氏)とのコメントを聞いていると,まるでRDRAMはすでに過去のものになったかのよう。日本AMD主催イベントということで,多分にリップサービスが含まれるとはいえ,なかなか過激な発言とも受け取れる。

インテルはどう動く

 さらにメモリモジュールの形式について,興味深い話も聞くことができた。大嶋氏に今後,1台あたりのPCに搭載されるメモリ量は,どの程度に落ち着くと考えているかと質問したところ,「一般ユーザーは,用途やソフトウェアの状況を見ると,512Mバイトで落ち着くと考えている。上級ユーザーは512Mバイトを基準に1Gバイトをうかがうような感じになるだろう。そうなると,デスクトップPCのメモリモジュールは,主流がDIMMからSO-DIMMへと移行していくことになるだろう。ノートPCはMicro-DIMMへの移行が進むはずだ」という答えだった。

 メモリチップの容量は今後増え続ける予定だが,メモリチップのパッケージが小型化され,また1チップあたりの容量が増えることで,DIMMでなくとも512Mバイトのメモリモジュールを製造できるようになる。小型メモリモジュールはピン数や基盤サイズなどの違いにより,より高クロックに対応したモジュールを作りやすいため,デスクトップPCでもSO-DIMMが主流になるというわけだ。

 従来サイズのDIMMは1Gバイト以上の高容量モジュールへと移行し,サーバ向けに特化するようになるだろうと大嶋氏は予測する。

 もっとも,DDR SDRAMが本当の意味で成功を収めるためには,インテルも追随する必要があるだろう。現在のところ,インテル製チップセットでDDR SDRAMをサポートする予定なのは,前述のi845しかない。しかもi845のDDR SDRAM対応版は,PC2100をサポートせず,PC1600専用になると言われている(上位チップのi850との差別化という意味合いがあるのかもしれない)。

 しかし市場がDDR SDRAMへと動き始め,PCベンダーがそれを追認する形でDDR SDRAM搭載PCの開発を進めれば,i845でPC2100以上のDDR SDRAMをサポートするなど,計画の変更が行われる可能性もある。メモリチップおよびモジュールベンダーの予測を見る限り,メモリ業界ではインテルがDDR SDRAMを主力に据えると考えているとしか思えない(でなければ70%ものシェアは取れないハズだ)。

 今後,より市場での影響力を増すと予想されるノートPC用メモリとしても,発熱や消費電力の面でDDR SDRAMはアドバンテージを持っており,インテルの動き方次第で市場は一気にDDR SDRAMへと動くかもしれない。

 とはいえ,RDRAMも価格が大幅に下がってきている。AMDを筆頭とするDDRサポーターの思惑通りに,簡単に話が進むとは言い切れない。そしてなにより,現王者であるSDRAMの力はまだまだ衰えていない。意外にも勝者はPC133――という可能性もゼロではないのだ。

関連記事
▼ DDR対応チップセットとマザーボードの最新動向――AMD Developer's Conference

前のページ1 2次のページ

[本田雅一, ITmedia]