News 2001年8月29日 03:58 PM 更新

IDF基調講演――「スピード狂時代の終焉」を宣言したIntel(2)

 そのうちの1つは,かつて高評価を得ながらお蔵入りとなってしまった統合型プロセッサのTimna(99年10月28日の記事)を開発したイスラエルのグループが取り組んでいるBaniasである。

 Baniasはモバイル向けに特化したマイクロプロセッサで,消費電力あたりのプロセッサパワーを高めるように工夫されたものだ。つまり,クロック周波数とは別に,消費電力の低さを付加価値としてアピールする製品となる。

 詳細なアーキテクチャは公開されていないが,プロセッサ内部を細かくセグメント化し,利用しているユニットだけを動作させるようにしたり,回路設計のレイアウトや各部のサイズを最適化することで消費電力の低減を図る。

 また,命令デコーダから実行ユニットまでの一連の処理方法を一新したμOPsフュージョンというアーキテクチャを採用し,クロック当たりの命令実行数を増やすことで消費電力あたりのパワーを改善している。

 Baniasの詳細はまだ不明だが,明日,基調講演を行うMobileプラットフォーム担当副社長のFrank Spindler氏が,より詳しい内容の説明を行うと見られる。Baniasの製品投入は,2003年前半の予定だ。

SMT技術を応用したHyperThreading

 もう1つは,SMT技術を応用したHyperThreadingという技術だ。これは1つのプロセッサに対して,2つのスレッド(マルチタスクOSで実行されるプログラムの最小単位)を割り当てられるようにしたもの。異なるスレッドは,それぞれ依存関係がないため,並列処理を行いやすい。

 ソフトウェア(OS)側から見たとき,HyperThreadingを搭載したプロセッサは仮想的に2個のプロセッサとして見えるようになっており,それぞれに別々のスレッドを割り当てられることから,「バーチャルマルチプロセッサ」という呼び方もしていた。

 HyperThreadingはPentium 4コアをベースにしたXeonプロセッサの将来版に搭載される。コードネームでFosterと呼ばれていたものだ。Intelでは,このHyper Threadingを搭載するXeonを,2002年に投入する計画。

 Fosterの基本的なアーキテクチャはPentium 4と同じだ。しかし,1つのスレッドを処理するだけでは,Pentium 4が持つ3本のパイプラインをすべて使い切ることができない。即ち,動作していないユニットが虫食いのように出てくる。HyperThreadingでは,その空いているユニットを利用して,もう1つのスレッドを動作させる。


実行ユニットの利用状況を示した模式図。一番右のHyper Threadingで色分けされているのは,それぞれ別々のスレッド。従来プロセッサでは空いてしまうリソースを使って効率よく処理を行う。

 基調講演中に行われたHyperThreadingのデモ(3Dレンダリング)では,おおよそ20〜30%のパフォーマンスゲインがあるように見えた。仮想的にマルチプロセッサのように動作するとはいえ,バスやキャッシュ,そして実行ユニットを共有するためか,物理的なマルチプロセッサほどの効果はないようだ。

 しかし,HyperThreadingと物理的なマルチプロセッサを併用すれば,2つのプロセッサで4プロセッサのような動作をさせることも可能になる。なお,基調講演に駆けつけたマイクロソフト副社長のJim Allchin氏によると,Windows XPはあらかじめHyperThreadingへの最適化を済ませてあるという。

 これら2つの新しい付加価値は,モバイル分野ではプロセッサパフォーマンスと消費電力のバランス,サーバやワークステーションの分野では瞬発的な速度だけでなくシステムの処理容量という,それぞれのマーケティングセグメントごとに特化したソリューションを提供し,それによってPCシステム全体の価値を高めていこうという意図が感じられる。

 もちろん,クロック周波数そのものの価値が変わったわけではない。相変わらずハイエンドデスクトップPCの分野では,クロック周波数は大きな意味を持つからだ。

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[本田雅一, ITmedia]