News 2001年8月31日 10:17 PM 更新

求められるネットワーク高速化――その「鍵」になるのは?

Intel Developer Forum基調講演の最後を飾ったのは,Sean Maloney氏だった。同氏は業界標準のイーサネットの将来や,自社のIXAなど,今後,ネットワークがどういう方向に向かっていくのかという点について,その見解を示した。

 Intel Developer Forum Fall 2001で一番最後の基調講演に登場したSean Maloney氏(執行副社長兼Communications Group ジェネラルマネージャー)は,業界標準であるイーサネットの将来性や,自社が提供しているIXA(Intel eXchange Architecture)などについて話した。同氏は,世界的な経済状況の悪化を背景に,インターネットインフラを支えるネットワーク機器に対して,低コスト化の要求が一段と強まっているとの見解を示していた。


イーサーネットの将来やIXAについて語るMaloney氏

802.11aへのシフト

 Maloney氏は2001〜2003年の動向として,イーサネットをベースにしたさまざまな技術の可能性について説明した。

 まずワイヤレス分野では,802.11bに基づくネットワークが普及を始めているが,これがより高速な802.11aへとシフトする。Intelのテストでは,802.11aは802.11bに比べ,10フィートまでの短距離では最大で4.5倍の性能を発揮するという。この差は距離を増すごとに縮まるものの,それでも230フィート地点で最大2.5倍のパフォーマンスを持つ。

 現在の802.11bは,互換性の高さや最近の価格低下などで急速に普及しはじめているものの,パフォーマンス的にはまだ不足気味だ。企業用途はもちろん,個人向けの高速インターネット接続が増加するだろうことを考えれば,より高速な規格への移行は自然の流れと言える。また,家庭向けにはビデオなど,帯域をより多く必要とするストリームデータが使われる可能性も考慮すれば,802.11aの必要性も見えてくる。

チップセットに無線LANとギガビットイーサを統合

 Intelはこれまで,PC向けチップセットのI/O機能として,さまざまなインターフェイスをチップ内に統合してきたが,将来のチップセットには,無線LANとギガビットイーサネットの機能を統合するという。現在のチップセットでは,オーディオサポート用のAC97,100Mbpsイーサネット,Home PNA,グラフィックアクセラレータ,USBホストコントローラなどが内蔵されている。

 別途,プロセッサをテーマにしたセッションでは,PCのメインプロセッサを利用して802.11aのプロトコルをエミュレートする話題も出ており,チップセットとの組み合わせで無線LANを低コストで標準サポートする考えのようだ。

 一方,ギガビットイーサネットに関してだが,前回のIDFではじめて1チップ化に成功したギガビットイーサネットインターフェイスが発表されていた。前述の話を元にすれば,これも将来はチップセット内蔵となる。同氏は,100Mbpsの100BASE-TXが96年から99年にかけて市場シェアを4.5倍に増やした実績を振り返り,近い将来にギガビットイーサネットが主流になると述べていた。

 その道筋だが,まず,インターフェイスカードが,ギガビットイーサネットの1チップ化,そしてチップの縮小などにより価格が下がることで普及。端末の10/100/1000マルチ対応が進むことで,ハブやスイッチのギガビットイーサネット対応が急速に進むという展開だ。

 背景としては,PCの高速化やI/Oバスの高速化によって,ネットワークの速度がボトルネックとなってきていることが上げられる。普及のカギとなるのは,いつチップセットに内蔵されるかという点だが,その時期については明言しなかった。

 Intelは他のネットワーク機器ベンダーと比べ,優れた半導体製造技術を持つというメリットを持っている。そこで,チップの小型化や機能の統合を行うことでコストを引き下げ,標準技術であるイーサネットという巨大市場に向けて製品を投入することで,優位に立とうとしている。

メトロポリタンネットは10Gbps

 こうした考え方は,メトロポリタンネットワーク向けの「光電子モジュール」でも踏襲される。メトロポリタンネットワークは都市圏程度のエリアサポートを前提に考えられた高速ネットワークで,光ファイバーを用いた高速通信インフラを整備するために使われる。Intelでは,顧客と共にメトロポリタンネットワークに対して毎秒10Gビットの性能を持つ光電子モジュールを提供するという。

 さらにIntelはIXAで,PC的な水平分業のパラダイムをネットワーク機器に持ち込んでいる。自社が得意とする半導体技術をもとに,低コストかつ高性能を武器にしてネットワーク機器の心臓部を支えるベンダーになろうとしている。ネットワーク機器の分野は,PCと比較すると保守的で新規参入者に冷たい市場だが,あるIntel関係者は景気後退によるコストの下げ圧力が,Intelに味方するだろうとの見方を示した。

 たとえば毎秒10Gビットのパケットを流さなければならないとき,ネットワーク機器は35ナノ秒という短時間で,受信からパケットの識別,モディファイ,QoS,暗号化などさまざまな処理を施して適切なポートにフォワードしなければならない。そして,それらの処理は,すべてコスト効率の良い標準技術に基づく必要がある。さらに毎秒40Gビットのデータ量になると,ネットワークプロセッサに与えられる時間は僅か8ナノ秒だ。

 前述したように,業界標準のイーサネット,そして光ファイバーによる都市圏ネットワークで,ネットワーク帯域の急速な増大が予想されることから,Maloney氏は高性能で柔軟な開発環境を持つネットワークプロセッサの必要性を訴える。

 IntelはIXAに基づくネットワークプロセッサとしてIXP1200を持っている。IXP1200はStrongARMコアをベースにしたものだが,第2世代のIXPではプロセッサコアをXScaleへと更新し,パケット単位の並列処理を行うMicroEngineの改良,最高1.4GHzのクロック周波数などの機能を組み込んでいく。また,ターゲットとするネットワーク帯域を上下に広げ,100Mbpsから最大40Gbpsまで,広いレンジの顧客に対して幅広い製品ラインナップを整えていく。

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[本田雅一, ITmedia]

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