News 2001年10月2日 11:14 AM 更新

「PM-950」――2001年のエプソンはインクジェットで何を目指したのか(2)

 とはいえ,インクドロップサイズを変化させることは画質面で良いことばかりではない。異なるサイズのドットが並ぶため,細かな部分で質感を(ごく僅かではあるが)損なってしまう。そこで,PM-950Cでは2ピコリットルの極小ドットだけで塗りつぶす2880dpiモードを追加したわけだ。

 しかしながら,縦横ともに2倍の解像度になると,配置しなければならないドットの数は従来の4倍に膨れ上がる。PM-950Cでは,ドット吐出の周波数(単位時間あたりの吐出数)をPM-920Cの2倍に向上させたほか,双方向印刷を新たに採用した。前者で2倍,後者で1.5倍の高速化を行えるという。トータルの印刷速度はPM-920Cの最高画質時と比較した場合で80%ほどになってしまう。

 また,紙送り精度の問題があるため,フチなし印刷時とロール紙印刷時は,2880dpiの印刷を行うことができない。

 果たして速度を犠牲にしてまでも,このモードが必要なのか?という疑問に駆られる人もいるかもしれない。拡大して見た時の印象はさておき,パッと見には両者に大きな画質の差はないからだ。そうしたユーザーには,むしろPM-920Cの最高画質モードが高速に印刷できるようになったことの方が大きな意味を持つだろう。

 それでも2880dpiモードの高画質を前面にアピールしている理由は,ハイエンドユーザーへの期待に応える製品作りに取り組んだことと,ライバル中もっとも高画質な写真プリンタをラインナップに置くことで,カラリオシリーズ全体のイメージを向上させることになると考えたためだろう。毎年,"きれいではやい"と謳ってきたエプソンが,今年は"はやい"を強く言わなくなっている。

 また,各色独立インクタンクを採用することで,ダークイエローをブラックと交換し,高速な実用プリンタへと変身させるオプションを用意した。ビジネス向けインクジェットプリンタEMシリーズの実用性能と,PMシリーズの写真画質の両方を1台で提供するためだ。

 ただし,ヘッド内のインクを排出しなければならず,交換時には約1ミリリットルのインクを消費する。このため,用途に応じて頻繁に取り替える使い方をしてしまうと,インクコストが嵩んでしまうのが難点だ。

より楽しさを追求した各種付加機能

 ここ数年,エプソン関係者は「高画質の写真プリントを,より簡単に,より楽しく使えるようにすることで写真印刷の機会を増やせば,エンドユーザーも,よりプリンタを有効に活用できる上,プリンタベンダー側もプリンタとしてのビジネスを成立させやすい。Win/Winの関係を構築するためには,高画質プラス楽しさ,使いやすさが大切」と話していた。

 そこで対応が進められてきたのが,フチなし印刷やロール紙印刷,CD-R印刷などの付加的機能である。これらは“紙へ印刷を行う”というPC用プリンタとしての目的からすれば,あくまで“付加的”でしかないものだ。しかし,そうした楽しさを演出することで,写真を印刷する機会が増やす事ができる。

 今年はCD-R印刷用フレームが背面ではなく,前面からローディング可能になり,背面にスペースを作る必要が無くなった。また,ロール紙のペーパーパスを独立させたほか,ロール紙のオートカッターを5000円で用意している。また,フチなし印刷時の速度も大幅に向上しているという。

 同じ考え方はデジタル画像を簡単にレイアウト印刷できるPhotoQuickerという付属ソフトウェアにも表れている。これは一昨年から添付されているホームDPEソフトだが,今年はPRINT Image FramerがPhotoQuickerに追加されている。あらかじめ用意されたフォトフレームを使って,簡単かつ高画質にフレーム合成を行う機能だ。

 フレームはあらかじめ組み込まれているデザインの他,インターネットから新作をダウンロードできるという。また,フォトフレームを作成するためのツールが提供されるほか,PhotoshopやIllustratorで利用可能なフォトフレーム出力プラグインも用意される。

 エンドユーザーに,プリンタを使って出力を行うことが楽しい作業だと思ってもらうように努力する。ハイエンドの写真画質もエプソンのイメージをリードする大切な技術だが,こうしたエンドユーザーソリューションの充実こそ“エプソンらしい”ところと言えるだろう。

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[本田雅一, ITmedia]