News 2001年10月5日 09:07 PM 更新

見逃していませんか?――CEATECの隠れた一品,ユニークな技術(1)

CEATECで展示された様々な製品・技術をここまで紹介してきたが,まだ漏れているものも多い。特に穴場なのが電子部品・電子デバイスメーカーの集まる「産業」ステージ。ここで見つけた面白そうなものを一挙紹介しよう。

 展示会の華は,最終製品を並べたコンシュマー系のブースが集まる一帯と相場が決まっている。一方,電子部品や電子デバイスなどのメーカーが軒を連ねるあたりは,来場者のほとんどが技術者で,人口密度もコンシュマー系のエリアと比べるとはるかに低い。口の悪いZDNetの某記者など「会場の温度が2-3度低い」とまで言っていた。

 だが,「華」はないかもしれないが,「実」はあるのがこのエリア。今後数年先に普及するかもしれない,興味深い技術やデバイスが,サラっと置いてあったりする。専門の技術者のようには理解できないが,エンドユーザーから見ても面白そうと思えるものを,CEATECの「産業」ステージ(Hall1-3,Hall9-11)から拾ってみた。

充実のTDKブース

 既にお伝えした液晶関連を除けば,CEATECの「産業」ステージで最も面白かったブースがTDKだった。例えば,入り口近くにはDVR-BlueとML-Rという2つの光磁気メディアが並べて展示されていた。

 DVR-Blueはご存知のようにDVDと同じ直径12cmの相変化書き換え型光ディスクだが,青色レーザーを使うことで23GBの大容量を実現する。転送速度も100Mbpsと従来の光メディアと桁違いで,デジタルハイビジョン放送のデータが2時間収録できるという夢の次世代メディアだ。ソニーなどがドライブの参考出展を行っていたが,TDKブースではそのメディアが展示されていた。

 一方,ML-Rは現行のCD-Rの基本仕様をそのままに,約3倍の2GBの容量を実現するという,ユニークな技術だ。米Calimetricsが開発したML(Multi-Level=多値)記録技術を利用したもので,データセル上に記録する際の記録マークを8種類=Multi-Levelにする。これで,1つの記録マークあたり,3bit分のデータを記録できるようになるのだという。

 しかも,このML-R,単に容量が増えるだけではない。これまで640MBのデータを記録していたトラックに2GB分のデータが詰め込まれるので,読み書きのスピードもほぼ3倍になる。従来のCD-R/RWドライブとのハード的な互換性も非常に高く,専用のLSIを組み込むなど,わずかな仕様変更でML-R対応ドライブになる。もちろんこのドライブでは既存のCD-R/RWメディアを読み書きすることも可能だ。

6cm,8cm,12cmの3種類のメディアがあるML-R

 当然,ドライブとメディアの価格も安価で済むだろう。次世代技術というにはずいぶん枯れた技術だが,エンドユーザーの立場で考えれば,結構魅力的な話だ。DVDの書き換えドライブを少しでも早く売り込みたいメーカーからすると,頭の痛い話かもしれないが……。

 同ブースではML-R対応ドライブと,ML-Rのメディアを使ったポータブルオーディオプレイヤーの試作品も併せて展示していた。

シナノケンシ提供のML-Rドライブと,専用LSIも展示されていた

ML-R Portable Audio Playerのプロトタイプ。小さなメディアもあるので携帯も可能

 TDKといえば,HDDのヘッドで有名。その同社が2004年ごろの投入を目指して開発中なのが,TMRヘッドだ。最近のHDDの大容量化・高密度化の進展は驚くばかりだ(大容量化の限界が言われていたのがウソみたいだ)が,既存のGMRヘッドでは再生系で限界が近づいてきているとされる。狭トラック化に伴うMR比の低下や,MR Gapの薄膜化の限界などの問題があるからだ。

 このGMRの代替技術とされるのがTMR素子を使ったヘッド。60-80Gb/平方インチが限界というGMRに対し,TMRでは2004年ぐらいには100Gb/平方インチが実現可能だという。ブースではこのTMRヘッドの実物と最新の技術情報が紹介されている。

これが次世代の大容量HDDを作るTMRヘッド

 堅い話が続いた後には,度肝を抜かれる一品を。写真の携帯電話の左側にあるのは,紛れもなく携帯電話用のソーラーチャージャーだ。これさえあれば,砂漠だろうと,小舟の上だろうとバッテリー切れの不安はない――太陽が照っていれば,だが。

なかなかカッコいいソーラーチャージャー

 残念ながら参考出展のため,細かなスペックは紹介されておらず,携帯電話の充電にどれぐらいかかるのかわからなかった。だが,加賀電子ブースでも同様の太陽電池充電器があった。

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