News 2001年10月25日 07:35 PM 更新

トヨタ&ソニーのITカー「pod」を徹底解剖!(1)

「東京モーターショウ2001」で大きな注目を集めているコンセプトカーがある。トヨタとソニーが共同開発した「pod」である。「感情表現ができる」「成長する」といった従来のクルマでは考えられない機能を持つこのpod。その魅力を徹底解剖する。

 ついにここまできたか――。トヨタとソニーが「人とクルマの楽しい関係」をコンセプトに共同開発した「pod」。感情を表現し,オーナーと付き合うち成長するという,従来のクルマでは考えられない革新的な特徴を持つ。もし,カール・ベンツやヘンリー・フォードが生きていたら腰を抜かすに違いない。それほどのインパクトなのだ。当然,「東京モーターショー2001」の会場でも,これほど異彩を放っているクルマは見当たらない。


デザインも近未来的なpod。時代を先取りした機能が満載だ

衝撃その1:主人を出迎える?

 犬は散歩やエサの時間になると,尻尾を激しく振って喜びを表現する。podも,オーナーが近づくと似たような行動をとる。

 podには,「ミニpod」という何やら不思議な形をした専用キー(写真下)がある。このミニpodとpodは無線で通信を行う仕組みで,オーナーが接近していることをpodが感知すると,車高を上げてドアを開き,ドライバーを出迎えてくれるというのだ。なんだか,偉くなったようで嬉しくなる。


ご主人様を歓迎するの図。ピカピカ光るその姿は,デコトラのようでもある


こちらも,妖しげに光るミニpod。神秘的なデザインだ

 運転中は,このミニpodをセンターコンソールにはめ込んでおく。キーなのだから当たり前である。ちなみに,ミニpodを取り外すとエンジンは停止し,podは車高を低くして「眠り」の状態に入る。犬で言えば「伏せ」に相当する。


中央に見えるのがセンターディスプレイ。各種インフォメーションが表示される。その下にあるのが,ミニpodをはめ込むスペース。凝った演出だ


シートは,「自然な臨場感」(ソニー)を提供する音響効果システムを搭載。ヘッドレストには100Hz〜100kHzの再生能力を持つフルレンジスピーカーならびにスーパーツィーターを装備し,クッション下部にレゾネーションウーハーを設置する。AV機能満載のシートだが,ホールド性は期待しないほうがよさそう?


podには,ハンドルがない。ついでに,アクセル/ブレーキペダルもない。全て,写真の「ドライブ・コントローラ」に集約される。操作方法は,レバーを前に倒すとアクセルオン,後ろに倒すとブレーキ。左右で旋回。斜め左前に入れると加速しながら左旋回といった具合。「慣れが必要ですね」とトヨタ担当者。従来の免許じゃ運転できないだろう

衝撃その2:喜怒哀楽?

 ただ,ウェルカムパフォーマンスは,podの特徴である感情表現のほんの一部にすぎない。真価は走行中に発揮されるのだ。

 まず,どんな感情があるのか,例を紹介しよう。

 種類としては,「ウインク」「元気」「怒り」「眠い」「恐怖」の5つがあり,ボンネットのヘッドライト(目)・ヘッドライトカバー(眉)・タイヤ(手足)・アンテナ(尻尾)の動きを組み合わせることで,外部に感情を伝える。また,「怒り」の場合はボンネットが赤く,「恐怖」の場合はボンネットが青く光るなど,より効果的な表現を実現するための工夫が施されている。


感情によって,podの“顔色”が変わる。ウインクや元気は感情とは言えないような気もするが,細かいことは言わないことにしよう。あくまでコンセプトなのだ


写真では分かりにくいかもしれないが,ヘッドライトカバーが半分ぐらい閉じて情けない表情を演出。同時に涙も流すなど芸が細かい

 では,どんなときに怒ったり恐がったりするのだろうか。ソニーの担当者によれば(感情モードを考案したのはソニーである),想定されるシチュエーションとしては,ガソリンがなくなりそうになったら恐怖モードになり,側道から人が飛び出してきて危ない場合などは怒りモードになって警告する――などが考えられるという。

 ガス欠で恐怖モードとはなかなかシュールだ。さらに,顔面を紅潮させて怒っているクルマに轢かれそうになったら,もう2度と飛び出しはしなくなるはずだ。最初,podはナイトライダーのようなクルマを目指したのかと考えていたが,どうやら「ロジャー・ラビット」に登場する,あのしゃべるクルマに近いようだ。

 さらに,pod同士は会話することもできるという。podが2台いれば,「電波ホーン」と呼ばれる無線通信により,「進路をゆずってください」「ありがとう」などのメッセージを相手の車内に音声で伝えることができるという。現在のクルマだと,パッシングやハザードランプなどでドライバーの意思を伝えているが,将来はこうしたスマートなやり取りが標準になるのかもしれない。

 ただ,podみたいなクルマがそこらじゅうに走っていたら,夜の街は,まるで東京ディズニーランドのパレード状態になってしまう(もしくはデコトラの集会か)。


クルマに尻尾。アンテナの役割も果たすようだが,かなりデカイ。これがぶんぶん振り回されたら,かなりの迫力だ

衝撃その3:運転技術を評価?

 podの感情表現は,外に向けて発せられるものだけではない。ドライバーに対しても感情をあらわにする。

前のページ1 2次のページ