News 2001年11月9日 09:50 PM 更新

子供の様子がケイタイで確認できる――クロス・リモコン

携帯電話やPDAから,PC/サーバの画面を呼び出して遠隔操作できるクロス・リモコンは,携帯情報端末の新たな利用方法として注目されている。

 携帯電話やPDAから,PC/サーバの画面を呼び出して遠隔操作できる――フレックス・ファームが先月発表した「クロス・リモコン」は,ブロードバンド・常時接続時代における携帯情報端末の新たな利用方法として注目されている。

 PCをリモートコントロールするアプリケーションは,すでに登場している。ただ,これらはPC上で動作するソフト。つまり,遠隔操作する側にもPCが必要だった。

 クロス・リモコンは,Javaアプリケーションを使うことでプラットフォームの垣根を取り払い,Java対応の携帯電話やPDAで遠隔操作を可能にした。スペックの貧弱な携帯電話でも動作するよう,基盤レベルのプログラムは10Kバイト以下で作られている。(詳細は10月10日の記事を参照)

 また,遠隔操作対象のPC/サーバも,Javaベースのサービス制御プログラムが動けば何だってかまわない。Windowsだけでなく, Solaris, Linuxなど,さまざまなOS搭載機器をコントロール可能だ。


クロス・リモコンのシステム構成図

 同社技術本部第一製品開発部長の美馬勝氏によると,クロス・リモコンの応用分野は「金融SFA」「ASPサーバ管理」「ホームセキュリティ」と多岐にわたるという。

 その中でも,一般ユーザーの利用例としては,メインPC内のデータを外出先から遠隔操作することや,Webカメラと連携したホームセキュリティへの応用などがある。

 例えば,外出先から自宅PCにあるExcelデータを確認したい時や,添付ファイル付きのメールを自宅PCのメールアドレスで送信したいといった時に,これらのPC操作が携帯電話やPDAの画面で行える。

 また,クロス・リモコンに1万円前後のWebカメラと数万円程度の小型サーバとを組み合わせて,ローコストな監視カメラシステムを作る事も可能だ。カメラの画像が,いつでもどこでも携帯電話で確認できるのだ。「応用例として,保育園や幼稚園にこのカメラシステムを取り付け,父兄が携帯電話で子供の様子を確認するといったサービスも考えられる」(美馬氏)。

 ビジネス分野では,モバイルPCで行っていた業務の代替利用も期待されている。

 金融関連では,もともと業務支援用端末としてモバイルPCを導入しているケースが多い。しかし,外交員がお得意様に訪問する際に,応対事例や取引状況などを参照する程度のことなら,クロス・リモコンで十分代用できる。

 さらに,訪問直前でチェックしたいような項目もある。「金融の世界で二重督促はタブーなので,支払い督促のチェックには細心の注意が必要。これも,訪問する直前に確認できれば,トラブルは避けられる」(美馬氏)。

 ところで,携帯電話やPDAの小さな画面で,果たしてPCの操作など可能なのだろうか?

 現在,120×160ピクセルが主流となっている携帯電話の画面サイズでは,そのままの解像度ではウィンドウのごく一部分しか見ることができない。


マイコンピュータのウィンドウを携帯電話の解像度で見るとこうなる

 携帯電話よりは画面サイズが大きいPDAでも,QVGA(240×320)程度。SVGA(800×600)クラス以上を前提としているPCソフトを使うには辛いものがある。

 しかし,クロス・リモコンでは,画面情報をベクトル形式で扱うため,拡大・縮小が自由自在に行える。もちろん,文字情報は,ある程度拡大しなければ判読できないが,画像データの確認や一覧性が必要なケースには便利な機能だ。

 「建設現場で使う図面をダウンロードした時でも,拡大機能によって細部の確認ができる」(美馬氏)。


画面情報の拡大縮小が自由自在に行える

 美馬氏によると,むしろネックとなるのは,モバイル環境での通信インフラだという。

 専用ブラウザを使ってPCの画面を携帯電話に表示した場合,9600bpsのスピードでは一画面のデータを取り込むのに5〜10秒ほどかかってしまう。また,携帯電話の小さな画面での作業にスクロールは欠かせないが,時間のかかるデータ取り込みは,画面をスクロールさせるたびに行われる。これでは,お世辞にも実用的とは言い難い。

 同社でも,ブラウザによるGUI環境は,PDAにP-in Comp@ctなどPHSカードを挿入して利用することを想定しており,携帯電話での利用は,あくまでも非常時に操作できるというレベルの位置付けとしている。

 「ただし,今後FOMAなど高速通信が可能な次世代携帯電話が普及していけば,携帯電話からのブラウザ利用も十分考えられる」(美馬氏)。

 ちなみに,クライアントプログラムは,キャラクタベースの画面でも操作することができる。こちらは,通信速度の遅い携帯電話でも,軽快に操作できるようになっている。

 年内には出荷されるというクロス・リモコン。我々一般ユーザーには,同社からライセンスを購入した企業がサーバなどに組み込んだシステムとして販売されるか,携帯電話/PDA向けサービスの1つとして提供されていく。

 一般家庭にも常時接続が当たり前となり,ホームサーバが設置されるようになると,ネットワーク対応型の家電も増え,サーバを通じて家電が制御できる時代がやってくる。クロス・リモコンのような遠隔操作のテクノロジーは,これからのブロードバンド社会でさらに注目されていくだろう。

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[西坂真人, ITmedia]

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