News:COMDEX総括 2001年11月17日 03:12 AM 更新

COMDEX総括:神の声は誰の耳に聞こえたのか?(2)

“ワイヤレスがテーマ”の捉え方

 今年のCOMDEX/Fallは,開催前からワイヤレスがテーマと言われた。そしてもちろん,高速無線LAN製品を含め,いくつものハードウェアや技術が展示されたが,私自身がもっとも興味深かったのは,ワイヤレス化によって何が変化するかという,業界展望に関する意見がまっぷたつに分かれたことだ。

 PC業界の視点でこの動きを見ると,高速化によって高品質なビデオを流せるようになり,モバイル機器はワイヤレス機能を内蔵するようになり,ノートPCはその価値を高めることになる。

 しかし,本当にワイヤレスですべてがアドホックに接続されるようになると,PCは中心に存在するもっとも重要なデバイスではなく,ネットワークの中でもっとも高速なプロセッサを持ち,ストレージの大きなデバイスでしかない。

 それでもこれまでと変わらない? いや違う。高速で大きなストレージを持っていたとしても,中心にあるのではなく,ネットワーク参加メンバーの1人にしか過ぎなくなるからだ。

 真にすべてのデバイスがネットワーク化された世界では。それぞれの機器が高い能力を持つ必要はない。ネットワークの中にひとつだけでも高性能なプロセッサがあれば十分だろう。

 各デバイスは,それが使われる場面で最適なユーザーへの顔を持っていればいい。ソニーが提案したユビキタス バリュー ネットワークの中において,PCはワンオブゼムである。

 ソニーの提案は別としても,ワイヤレスで,しかも広帯域にデバイスが接続されているのに,すべてのデバイスが閉じた箱の中に高性能を詰め込む必要性はない。ワイヤレスで接続された別デバイスの能力をネットワーク経由で利用すればいいからだ。帯域さえ広ければ,機能的な制限は無きに等しい。

 だからこそあらゆる処理をソフトウェアと高速なプロセッサの力で行えるPCの価値が高まると考えているのが,PCを生業とする企業。だからこそ中心となるべきデバイスは存在しないというのが,PCを生業としていない企業の考え方だ。

 神の声を聞いた方が勝利を手にするに違いない。どちらが神,すなわちコンシューマの声をよく聞き,より密なコミュニケーションを取りながら出した結論なのか。昨今のコンシューマ市場を見れば,その答えは数年後の決着を見るまでもなく,すでに出ているのかもしれない。

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[本田雅一, ITmedia]