News 2001年12月19日 11:23 PM 更新

2001年のAIBO=10年後のAIBO?

「2001年は,AIBOブランドが確立された1年だった」とソニーERCの天貝プレジデントは振り返る。では,今後,AIBOはどのように進化していくのだろうか──。

 10年後,ロボットが人々の生活に密着した存在になっているとしたら,2001年は,ロボット社会への第1歩を踏み出した重要な1年だった,と振り返られることになるかもしれない。2000年末に開催されたパーソナルロボット展「ROBODEX2001」での勢いを失うことなく,この1年の間に,エンターテインメント系からお掃除系まで,多くのパーソナルロボットがお目見えした。

 中でも,「ERS-220」「ERS-311/312」(ラッテ&マカロン)という2種類のペットロボットを世に送り出したソニーの功績は大きいだろう。バリエーション展開を図るだけでなく,AIBOと連動したテレビ番組をスタートさせるなど,周辺ビジネスの開拓にも精力的に取り組んだ。これまでは高嶺の花であったAIBOに,実際に触れる機会が格段に増えたはずだ。

 ソニーエンタテインメントロボットカンパニー(ソニーERC)の天貝佐登史プレジデントは,「AIBOというブランドが確立された1年だった。この市場の開拓者として,消費者に飽きられないように次々と商品を出していくことが必要だと考えていた。世界経済がこんな状態なので,ビジネス的な広がりは思ったより厳しいが,所期の目的は達成できたのでは」と今年を振り返る。

 9月にラッテとマカロンを,11月に「バルキリー」のような風貌をしたERS-220を,と立て続けにリリース。第2世代AIBOと呼ばれる「ERS-210」の発売から約1年が経過していたものの,その存在が色褪せることはなく,むしろ,新型AIBOは人々に驚きをもって迎えられた。

 単に,ERS-210をマイナーアップグレードしただけならば,それほど話題にもならなかっただろう。だが,1年ぶりに新しいAIBOが出たかと思えば,あんなにキッチュになっていて,往年のAIBOファンの間で議論をよんだかと思えば,今度は,マニアゴゴロをくすぐるバルキリーである。驚くなというほうが,無理だろう。

 天貝氏は2001年にリリースした2つのAIBOについて,「フレキシビリティを大事にした」と強調する。


AIBOたちに囲まれるソニーERCの天貝佐登史プレジデント

 従来モデルから大胆にイメージチェンジを図ったラッテ&マカロンと,天貝氏も自ら「濃い」と言うERS-220。ある意味,両極端で強烈な個性を放っているだけに,好き嫌いがはっきりするところだが,天貝氏は,「エンターテインメントロボットという市場が確立されたわけでもなく,消費者のニーズも流動的。固定観念は通じない。逆にいえば,可能性は無限にあるということ。正直なところ,こちらが予想したターゲット層に,きちんと売れるかどうかも,分からないほどだ。意外な層に受け入れられたりしている」と話す。

 AIBOが誕生してから3年。まだまだ守りに入る段階ではないというわけだ。

10年後のAIBO?

 ペットロボット市場は,これからの市場である。AIBO以外では,初の本格派ペットロボットと呼べる「ネコロ」が登場したのも,今年10月になってのこと。天貝氏は,「AIBOがペットロボットの代名詞になるのは嬉しいが,こうした製品がどんどん出てくることで,市場ができていく。本当に毛をつけたり,コミュニケーション機能に特化しているのも面白い」とライバルの出現を喜ぶ。

 では,来年以降,AIBO自身はどのような進化を遂げるのだろうか? 

 天貝氏は「いかにして,AIBOとユーザーのコミュニケーションを活性化させるか」ということが重要だと語る。「モーションや人工知能など,まだまだやるべきことはたくさんある。ユーザーからも,音声認識機能の向上や,自分の顔や声を特定できるようにしてほしいという要望がある」(同氏)。

 ネコロ的なコミュニケーション機能も,積極的に取り組んでいこうということだろうか。また,天貝氏は,AIBOが進むべき道について,こうも話す。

 「10年後,デジタル化が進み,先進的な世の中になっていたとする。そういう環境はややもすると,息の詰まるものだ。そうすると,暖かみや潤いというものが,非常に重要になる。その頃には,AIBOが本当に相棒となるだろう」。

 実際,今でもAIBOに感情移入しているオーナーは珍しくない。つまり,今も10年後も,AIBOの存在意義は変わらないということだ。天貝氏が,「人工知能などAIBOの要素技術が,ソニー全体に伝播していく可能性もある」と話すほど,AIBOは先進技術の塊だが,その存在が“アナログ的”というのも,どことなく不思議な話だ ──。

 余談になるが,ソニーERSのオフィスがあるフロアの入り口には,クリスマス用の衣装を着たAIBOのぬいぐるみが飾られている。天貝社長によれば,これは,熱心なAIBOオーナーがソニーにプレゼントしてくれたものだという。そこまで思い入れの強いオーナーがいる商品など,AIBO以外にはなかなかない。天貝氏も「製造業者冥利に尽きる」と喜びを隠さない。

 そして,「そうした期待を裏切らないようにしたい」という天貝氏の言葉に,今後のAIBOへの期待が膨らむ。

関連リンク
▼ AIBOホームページ

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[中村琢磨, ITmedia]

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