News 2001年12月25日 06:54 AM 更新

Windows XPの「意外な敵」と「意外な味方」

Windows XPの目玉機能の1つである「高速起動,高速休止,高速復帰」。だが,デスクトップではその効果が発揮されないことも少なくない。その裏には,ある意外な「敵」が存在している。

 先頃発売されたWindows XPだが,メディアの論調は,これまでのWindowsと比較して,相対的に否定的な意見が多いようだ。これには,メディア側の心理的な面も影響していると思われるが,やはり,そうした意見の背景には,GUIがこれまでとは大きく異なったこと,そして処理速度が相対的に遅くなった(=いわゆる“重く”なった)ことがあるだろう。

 しかし,この“Luna”にまつわる種々の問題を,あえて抜きに見れば,XPは2000と比べても機能が強化されている点が少なくない。中でも,電源管理周辺の処理速度は「美点」といえる。

 ご存じの方が多いと思うが,この「高速起動,高速休止,高速復帰」は,XPの目玉機能のひとつだ。Win XPとACPI 2.0対応BIOSのコンビによって実現するこの環境は,一度慣れると,もはやWindows 2000でさえも戻れないぐらいの魅力を持つ。特にノートパソコン中心のユーザーにとっては,それこそ「これがあるから乗り換える」というユーザーが多いほどのものだ。

 しかし,デスクトップパソコン,とくに自作系のユーザーにとっては,この高速起動の威力がノートパソコンほど発揮されないことがある。原因はいくつかあるが,実はデスクトップパソコンに潜む“意外な敵”が影響していることが多い。それはビデオカード――正確に言えば,ビデオカードのBIOSである。

 ビデオカードのBIOSは,初期化の際にビデオメモリのクリアやビデオチップの自己診断,メモリ容量などの値のセットといった重要な作業を行う。

 問題は,こうした初期化作業に,当然ながら時間がかかることだ。もちろん,こうした作業は絶対に必要な手順なので,省略はできない。しかし重要なのは,この手順に関する時間が,ビデオカードによって大きく異なる点だ。

 短いもの(Matrox社製のカードが有名だ)では1秒程度で終了してしまうが,長いものでは5〜7秒程度の時間を要する製品も存在する。

 乱暴な言い方をすれば,ビデオカードの種類によって,起動時間に5秒程度の差が出てしまうことになる。

ビデオカードBIOSの起動時間改善は見込み薄?

 ビデオカードBIOSの影響はこれだけではない。VIA Technologiesのチップセットを採用したマザーボードでは,スタンバイからの復帰にも影響を及ぼすからだ。

 というのも,VIA製チップセットを搭載したマザーボードでは,ACPIのS3ステート(いわゆるサスペンド・トゥ・RAMモード)によるスタンバイ状態からの復帰作業で,ビデオBIOSの初期化を経由するためだ。ほとんどの製品がこのようになっていることから,これはリファレンスBIOSがこうした設計となっているものと想定される。

 こうした事情から,現状ではビデオカードのBIOS起動時間により,起動やスタンバイからの復帰に関する時間のほうが,影響は大きい(高速な製品で起動が30秒・復帰が5秒ぐらいだ。それで5〜6秒の影響があるのだから,小さいとはいえない)。

 Microsoftが提唱していたOnNow構想では,スタンバイからの復帰は5秒以下が理想とされているが,Windows XPとBIOSがしっかりしたマザーボードを使うと,実際にこの数値を出すことは不可能ではない。

 しかし,それがハードウェア側の問題で15秒となってしまったのでは,せっかくのXPの特徴が殺されてしまう。これはXPの側に立ってみれば,由々しき(と言っても過言ではないと思う)問題だろう。

 この問題に関しては,さらに困った話がある。実は,このビデオカードBIOSの起動時間が短縮される見込みは,予想外に薄いのだ。ビデオカードのBIOS改良に関しては,各ビデオカードメーカーに任されているのが実状だからである。マザーボードのBIOSに関しては,IntelやMicrosoft,そして各BIOSメーカーなどが高速化の取り組みを行ってきたのに比較すると,大きな差がある。

 起動時間の高速化については,IDF(Intel Developer Forum)などのハードウェア開発者会議などでも,比較的頻繁に話題になる。しかしそこでも,マザーボードBIOSについての高速化手法の話は出ても,「ビデオカードの起動時間に関してはビデオカードメーカーの改善に任せる」という話しか出てこないのが実情だ。

意外な味方は“ビデオ統合チップセット”

 しかし,この問題に関して,最近になって意外な方面から“味方”が現れている。それは,ビデオ機能をオンボード搭載したマザーボードや,ビデオ機能統合型チップセットを搭載したマザーボードだ。

 ビデオ統合チップセットの場合,ビデオBIOSの起動時間をマザーボードBIOSと協調するように設計できるため,BIOSの処理にかかる時間を短くすることが可能だ。その上,単体ビデオカードでよく見られるビデオBIOSのバージョン画面を表示する必要もなくなるため,さらに短くできる。

 こうした効果を組み合わせると,ビデオ搭載マザーボードの場合は,ビデオカードで消費していた起動時間を,ほぼ0に近づけることが可能になる。

 実はこのメリットは,最近のメーカー製PCで,単体ビデオカードがめっきりと少なくなった理由のひとつでもある。起動時間の短縮はWindowsロゴ取得の,いわゆる“実質上の推奨条件”ともなっているほど重要なものだからだ。

 現時点ではローコストな製品として見られているビデオ統合チップセットだが,こうした点では単体ビデオカードを凌ぐ――この点は,もう少しクローズアップされるべき問題ではないだろうか。

 そして,従来はほとんど夢と思われていた高性能なビデオ機能統合チップセットも,NVIDIAのnForceシリーズを皮切りに,市場には登場しつつある。

 ビデオ機能統合チップセットと単体ビデオカードの性能が同等になるというシナリオは,現在の性能差からすると考えにくい。しかし,Windows XPの目玉機能の「敵」になっている限り,単体ビデオカードの立場が今後弱くなっていくことは避けられないだろう。

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[橋本新義, ITmedia]

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