News 2002年2月4日 08:10 PM 更新

爆破シーンはなくても大いに盛り上がった「ROBO-ONE」(2)

 TA-17は,毘夷零号機よりも機動性に優れていただけでなく,日本刀という武器も備えていた。これは,相手を切り倒すというよりも,試合開始間のデモンストレーションタイム用の装備。ペットボトルを何本か並べ,刀を振り回して小気味よくはじき飛ばしていた。

 ミスマッチの象徴的な試合は,TA-17対「R-BlueIII」だ。R-BlueIIIは,大会開催前日のマスコミ向け説明会でデモンストレーションを行ったほど,完成度の高いマシンである。いわゆる2足歩行ロボットと言ったときに,まず最初に想像しそうなロボットである。

 そういえば,某テレビ局のアナウンサーが,ROBO-ONEを「世界初の人型ロボット格闘大会」と紹介していたが,実際に人型だったのは,このR-BlueIIIを含め,数体にすぎない。

 話がそれたが,それほど完成度の高いR-BlueIIIは,関係者の間で優勝候補の筆頭に挙げられていた。ところが,バルキー同様,自分よりも小さいロボットに対して,攻撃手段をほどんど持たなかったため(R-BlueIIIは膝を曲げた状態で攻撃を繰り出すこともできたが,その場合,動きが止まってしまうという弱点があった),TA-17の餌食になってしまう。


R-BleuIIIと開発者の吉村浩一さん。3位決定戦では毘夷零号機に敗れる波乱も。ミスマッチには勝てなかった

 ただ, R-BlueIIIの名誉のために,この試合が関係者の間では「あれが事実上の決勝戦だった」と言われるほどの盛り上がりをみせたことも,付け加えておこう。

大きな収穫


 また,キワモノだと思われた「YRCドム」は,実はかなりの実力派だったことが判明した。腰部が360度回転式になっており,全方向に移動できるという機構は,アイデア賞もの。相手を倒すのに使われたことはなかったが,バズーカ砲も装備。開発者の片迫春夫さんは「これで,多くの人がロボット作りに興味を持ってくれたら嬉しい」とコメントしていた。

 YRCドムは,決勝戦でTA-17に敗れた。準決勝では,ミスマッチをものともせず,毘夷零号機を撃墜するなど,ポテンシャルの高さを見せつけたが,毘夷零号機をグレードアップしたようなTA-17には歯が立たなかった。

 こうして試合を見てみると,ロボットのサイズでカテゴリー別に試合を行うなど,ルールやレギュレーションを改正したほうが,もっと迫力のある試合が見れそうな気がした。

 だが,何といっても今回が世界初である。そういったルール改正は今後,ロボット愛好家のすそ野が広がってからでもいいのかもしれない。実際,今回は,ロボットを愛するホビーイストたちと,悪天候のなか,この格闘大会に駆けつけた人々が,大いに盛り上がれただけでも,大きな収穫があったと言えるだろう。

「先行者」の開発者も

 このほか,ROBO-ONEでは来場者を楽しませるために,いろいろなイベントが用意されていた。その筆頭が,あの「先行者」を開発した中国・長沙国防科学技術大学の馬宏緒・同大教授ならびに周華平・同大副教授の講演会だ。馬教授は,大勢の来場者を前に,先行者の生い立ちなどについて説明した。


ロボットたちの戦いに熱い視線を送る馬教授(手前から3人目)。その隣(手前から2人目)が周副教授

 また,馬教授はROBO-ONEの試合も観戦。熱心に見入っていた。もしかしたら,馬教授の頭の中では,こうしたロボットたちと戦う先行者の姿があったのかもしれない(もちろん,“中華キャノン”などではないだろうが)。

 また,ガンダムに心を奪われたアニメ世代のお父さんとたちは異なり,子供たちに大人気だったのは,バンダイの「BN-1」や,NECの「パペロ」。会場の一角に用意された体験コーナーは,もはや託児所状態に。四つん這いになってBN-1とじゃれ合う子供の姿も見られた。


女の子にはやっぱりガンダムよりもかわいいBN-1

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関連リンク
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[中村琢磨, ITmedia]