News 2002年2月13日 06:45 PM 更新

「イノベーションをもってリーダーシップを堅持」――AMD次期CEOが来日会見

AMDの次期CEOに就任予定のHector Ruiz社長兼COOが来日会見を実施。イノベーション(革新)をもって技術/製品面でリーダーシップを取ってきた同社の取り組みや,UMCとの合弁事業,Alchemy Semiconductorの買収について語った。

 日本AMDは2月13日,AMD社長兼COO(最高執行責任者)のHector Ruiz氏の来日にあわせた記者会見を行った。Ruiz氏の来日会見は,昨年6月以来2回目となる(2001年6月6日の記事参照)。


来日会見に臨むAMD次期CEOのHector Ruiz氏と日本AMDの堺和夫社長

 Ruiz氏は2000年1月に同社の社長兼COOに就任した。それ以前はMotorolaに22年間在籍し,Motorola半導体製品部門(SPS)の社長を務めた経歴を持つ。今年4月には,設立以来30年以上に渡りAMDを支えてきたJerry Sanders氏に代わり,Ruiz氏が同社のCEOに就任する予定となっている。

 壇上に登場したRuiz氏は「我々は数々のイノベーションをもって,リーダーシップをとってきた。情報経済においては,イノベーションこそが最も重要」と革新的な技術の重要性を強調した。


「情報経済においては,イノベーションこそが最も重要」と語るRuiz氏

 Ruiz氏の前に挨拶に立った日本AMDの堺和夫社長も「皆さんご存知の通り,AMDの技術的優位性はマーケットで認められている。技術面,製品面でのリーダーシップは確固としたものがある。3D拡張命令や第7世代CPUの発表,DDR SDRAM採用,銅配線プロセス導入などイノベーション(革新)をもたらしたあらゆる技術が,AMDが(Intelよりも)先に取り組んだ」とし,技術/製品面でのリーダーシップをアピールした。

 一方でRuiz氏は「革新のための革新は意味がない」と単なる技術競争に警鐘を鳴らす。「我々が力を入れている“カスタマフォーカス”こそが,真の意味での革新。これが競合との差別化になっている。AMDは常にユーザーの成功が我々の成功につながると信じてきた。ユーザーのニーズあった革新を遂げることが,これまでも,そして将来もリーダーシップを取りつづけるために必要なこと」(同氏)。

 Ruiz氏は同社の革新性を表す指標として,同社とIntelの米国特許取得数を比較したグラフを紹介した。それによると,1998年まではIntelの特許取得数が上回っていたが,Athlonプロセッサが投入された1999年には同社が初めて上回り,以後2000年,2001年とIntelを超える特許を取得し続けている。


同社とIntelの米国特許取得数を比較したグラフ

 同社の革新性は,ダイサイズの移行にも表れている。「現時点の第7世代プロセッサでの比較でもAthlon XPのダイサイズはPentium 4に比べて60%小さい。次世代のThoroughbredとNorthwoodとではさらにこの差は大きくなる」(Ruiz氏)。

 このダイサイズの差は,1ウェハーあたりプロセッサ何個分が取れるかという効率性につながる。つまり,ダイサイズが小さければ,その分製造コストも低くなり,結果としてプロセッサを安く提供できるというわけだ。


ダイサイズが小さくなれば1ウェハーで取れるプロセッサの数も増え,コストダウンにつながる

 同社は,将来のイノベーションに向けた2つの大きな“布石”を今年発表している。

 その1つが,1月31日に発表したUMCとの合弁事業だ。そのアライアンスは,300ミリウェハーに対応した新工場を両社出資によってシンガポールに設立し,2005年の半ばには65ナノメートルプロセスで稼動を開始するというものだ。「UMCとの合弁事業は,AMDが目指す革新のクリエイティブな対応の1つだ。300ミリウェハーへの移行によって,現在の200ミリウェハーに比べて30%コストセーブが可能。今回の協業で,業界最先端の稼働率を確保し,競合に対してコストアドバンテージをとることができる」と語る。

 もう1つの布石が,2月6日に発表したAlchemy Semiconductorの買収だ。MIPSベースのマイクロプロセッサを手がけるAlchemyを買収することで,PDAやウェブタブレット,無線/有線のIAデバイスなど「ノンPC」分野への事業を強化していく構えだ。

 「高性能で低消費電力のプロセッサをパーソナルコネクティビティ向けに提供してきたAlchemy Semiconductorは,AMDの製品ラインを補完していく役割となる。また,AlphaやStrongARMといった優秀なプロセッサを開発した技術者がいるAlchemyの経験豊富な人材を評価した。PDAや携帯機器などパーソナルコネクティビティ分野で進んでいる日本市場には(この面で特に)期待している」(Ruiz氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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