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2002/03/13 20:33 更新


「CDS? あれはプロテクトじゃないです」――再び、コピーコントロールCDを考える (1/3)

エイベックスから13日、リリースされたコピーコントロールCD。音楽業界は概ね歓迎のようだが、プロテクト技術の専門家たちは厳しい見方をしているようだ。

 様々な波紋を投じながら、エイベックスから13日、“コピーコントロール機能付きのCD”がリリースされた。簡単にプロテクトが外せたり、あるいはそもそもプロテクトとして認識しないでリッピングできてしまうCD-Rドライブやソフトがある一方、普通に再生すらできない再生装置が存在することが、すでにわかっている。

 このコピーコントロール機能付き音楽CDをどう見るべきなのか。それはなぜ生まれ、どうなっていくのか。コピープロテクト技術開発の専門家と、光磁気業界の事情に詳しいジャーナリストの2人に、話をうかがった。(聞き手・構成、中川純一)

あれはプロテクトじゃない

――エイベックスが13日、コピーコントロール機能付きの音楽CDをリリースしました。早速、一部で問題になっているようですが……。

コピープロテクト技術の専門家、M氏(以下、M氏):コピープロテクトを作っている私たちから言わせてもらうと、あんなのはコピープロテクトじゃないですね。非常に問題の多いやり方で、そのくせ、有効なプロテクトにはなっていない。

――どこが問題なんでしょう?

M氏:問題だらけです(笑)。エイベックスが今回利用したCactus Data Shield(CDS)という規格は、専門家にとって禁じ手のオンパレードなんですよ。ああいうやり方があるのはみんなわかっているけど、だから誰もやらなかった。

ジャーナリストK氏(以下、K氏):物理アドレスが-1から始まっている件とか。

M氏:そう、第1の問題は、トラック1の始まりが「-1」に前倒しされていて、フェイクTOC、つまり誤ったTOC(=CDの時間情報が書き込まれている領域)を使っているということですね。このフェイクTOCというものは、音楽CDでは絶対使ってはいけないんですよ。フェイクTOCのせいで読み出せないプレイヤーやドライブができてしまう。

 この技術を使ったCDのTOCを見ると、あるドライブではすべての曲のスタート時間とエンド時間が重複して表示されたり、別のドライブでは1曲目のLBAが異常になったりする。前者なら読み出せないし、後者でもいろいろと問題が出る。

K氏:これがソニーのPlayStation2で1トラック目が読めない原因ですね。

M氏:アタマで引っかかってしまう。一部のドライブやプレーヤーで読めないのも同じ理由です。

 CDSを入れたCDをドライブに入れると、メディアのマウントが遅くて、その後サーボが外れるカッタンカッタン音がすると思います。それでフェイクTOCをやっていることがわかります。で、PlayStation2で読めないことで、アドレスを前倒ししていることがわかる。

 第2の問題は、音質が必ず劣化するということです。CDはデジタルで「0」と「1」だから音質は変らないと言う人がいますが、大きな間違い。データの0と1は同じでも、様々な要素でCDは音が変わるんです。

 最大の原因は面ブレなんですが、こういったCDをプレスすると、再生機では読み込みづらくなる。読み込みづらいということは、それだけドライブに負荷がかかると思ってください。そうすると信号なんかも非常に汚く崩れるんですよ。ジッターが上がるとか。サーボが動けば動くほど、アナログでノイズが混じりますし。これは音質に悪影響を及ぼします。

――はっきりわかるぐらいの影響があるもんなんですか。

M氏:ありますよ。いい再生機で聞けば、スピーカーの前に重いカーテンがかかっているぐらいの影響は出る。どんよりとした音になります。

K氏:エイベックスさんの音楽CDはノイズに強いというか、元々あえて音を歪ませたりしているものが多く存在していますね。最近は、そういう音に慣れたユーザーが多くいる。だから、CDSを採用できたんでしょう。エンドユーザーが再生品質にうるさいような音楽だったら、音質が相当な問題になったはず。それにCDSを使ったCDでは、ポータブルCDプレーヤーで音トビすると言われてます。

M氏:ストレスがそれだけかかりますからね。米国で発売されたディスクを見てみると、ものすごいんですよ。ジッターとエラーレートが。三洋電機の「UM Doctor」でわかるぐらいですから。エラーチェッカーにかけるとすごいデータが出ます。それとRF信号(再生信号)が汚い。

バックアップをすれば、音質がよくなる?

――CDSというのは結局、フェイクTOCと-1フレーム前倒しということなんですか?

M氏:それとCD-ROM mode-2を使っているみたいですね。1セッション目がCD-DAで、2セッション目がmode-2になっている。mode-1と表示されますが、これはおそらく誤認識していますね。詳しくは解析していませんが。このmode-2採用というのも、音質に影響が出る。

K氏:ソフト/ドライブによっては最初のセッション(1セッション目)の1トラック目がmode-1と表示されたりします。また、正しく表示されることもあるみたいですね。

――これだけ問題のある技術を搭載して、どれぐらいのCD-Rドライブでリッピングを防ぐことができるんでしょう。

M氏:4割ぐらいのドライブでは、そのままリッピング出来てしまいますね。データからQサブコードを生成できるドライブとか、RAWモードをサポートしているドライブとか。ソフトとの組み合わせにもよりますので正確には言えませんが。引っかかるのは、まともにTOCを見に行ってCDに書かれているトラック情報の判断を行ってしまうドライブだけでしょう。

 でも、それもあまり意味がありませんよ。こんなプロテクト、簡単に落とすことができますから。古いライティングソフトには、CDに書き込まれている情報の物理アドレスの始まりと終りをきちんと指定してリッピングできるものがあります。例えば、EasyCD ProとかGearとかの昔流行ったソフトですね。ちなみに、EasyCD Proなら、秋葉原のお店とかで100円とかで売っていますよ(笑)。

 そういうソフトでリッピングしたい曲の始めと終わりの物理アドレスを直接指定してリッピングするとか。あるいは-1アドレスを自動認識できるソフトでリッピングするとかですね。リッピングさえできれば、後は、通常のライティングソフトで音楽CDを作ればいい。INCAT Systemsの流れを汲んで、そのエンジンを使っているDisc JugglerとかでもPQ(後述)をきちんと取得するので、時間はかかりますがリッピングできてしまうはずです。

――その物理アドレスの求め方って難しいのでしょうか?

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[中川純一,ITmedia]

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