News 2002年3月15日 11:11 PM 更新

「バイオW」開発秘話――キーボード一体型PCが成功した理由

 発売以来,デスクトップPCのランキング1位を快走する「バイオ W」。発表当初は,キーボード一体型PCの販売に疑問視する声もあったが,フタを空けてみれば,入荷待ちのショップまで出てくるほどの人気ぶりだ。デスクトップPCの新しい可能性を提示した同製品の開発担当者に,話を聞いてみた。

 2月9日の発売以来,いきなりデスクトップPCのランキング1位を獲得し,1カ月以上経過した現在でもトップを快走する「バイオ W」。発表当初は,キーボード一体型PCというスタイルから「本当に売れるのか」といった声があったが,いざフタを空けてみれば,入荷待ちのショップまで出てくるほどの人気ぶりだ。

 ノートPCに押されがちだったデスクトップPCに,新しい可能性を提示したバイオ W。開発に携わったバイオデスクトップコンピューターカンパニー商品企画部の国則正人氏にZDNetがインタビューを行った。


バイオ Wの開発に携わった国則氏

ZDNet : バイオWが人気ですね。デスクトップPCの店頭販売では,発売以来ずっと連続1位をキープしているようですが。

国則氏 : 店頭での販売構成比は,発売から2週間で17%に達したという結果が調査会社から出ています。現在ではもう少し上がり,20%弱ぐ<らいになっていると聞いています。

ZDNet : デスクトップPCの5台に1台がバイオWというわけですね。バイオWは,キーボード一体型のスタイルが特徴的ですが,開発の経緯を教えてください。


キーボード一体型のスタイルがバイオWの特徴

国則氏 : もともとバイオシリーズはホビー色の強い商品を提案しており,デスクトップはその傾向が特に強かったのですが,そこで「そろそろ別のアプローチをしようか」という声が社内から上がったのが開発のきっかけ。キーボード一体型のスタイルは,コンパクトで一体感のあるデスクトップPCが欲しいというデザイナーやエンジニアからの意見がバックグランドになっています。

ZDNet : キーボード一体型のデスクトップPCは,過去にもいくつかのメーカーが市場に投入していますが,いずれも成功したとはいい難い結果に終わっていますが。

国則氏 : バイオWの企画が上がったのは,発売から1年前となる昨年初頭。新カテゴリー商品は,だいたい1年ぐらいは開発期間を設けますが,バイオWの時に特徴的だったのは“ディスカッション”に時間をかけた点です。開発の手を止め,議論だけに時間を費やした期間が2カ月もありました。他社が失敗してきた過去の例を踏まえて,社内ミーティングを何度も重ねてきたのです。

ZDNet : キーボード一体型にこだわった理由は?

国則氏 : 現在でも,キーボードは外せた方がいいといった意見を多く頂いています。しかし,今回のバイオWはコンセプトメッセージを明確にしたかったのです。その意味では,「キーボード一体型」というメッセージは,実に明確でした。

 ただ,コンセプトを追求するあまり,使い勝手の面で問題があっては意味がないので,多くの議論やテストを重ねて,ユーザーの使い勝手を追求しました。ディスカッションだけで2カ月間もかけた理由がそこにあります。

ZDNet : 15.3インチのワイドTFT液晶搭載をはじめ,TVチューナー内蔵,DVD-ROM/CD-RWコンボドライブ,各種インタフェース標準装備,AV機能を生かす豊富なアプリケーションなど,盛りだくさんのスペックにもかかわらず,実売16万円前後というプライスも,ユーザーに支持されている大きな要因の一つだと思いますが。

国則氏 : 常にコストとの戦いでした。バイオWのコンセプトとして「1人1台のPC」を謳っていたため,20万円以内は絶対条件でした。  「激安ですね。新カテゴリー普及のために採算割れで提供しているのでは」とよくいわれますが,きちんと利益は上がっています。オリジナルデザインのボディが目立って,独自パーツを多く使ったPCに見えるのでしょうが,ユーザーに見える部分はオリジナルでも,中身はかなり汎用部品を使っているのです。

 バイオWはデザインが先行して開発が進んだ商品。できるだけデザインを崩さずに,いかに汎用パーツをうまく使っていくかが,エンジニアが大きく悩んだ部分ですね。

ZDNet : 確かに特徴的なデザインへの評価も高いですね。製品化にあたって一番苦労した部分は?

 

国則氏 : 苦労した部分はたくさんありますが,しいてあげるならば液晶を後ろに倒すことができる部分。デザイナーとしては,カーブを描いた本体後ろの部分のデザインにもこだわりがあったのですが,使い勝手を考えると液晶ディスプレイは後ろに30度は倒れて欲しかったのです。

 しかし,カーブデザインの上部分が重くなると,ヒンジの強度も上げなくてはならないし,傾けた時の安定性が悪くなってしまいます。最終的には,デザインと安定性を両立させるために,倒せば倒すほどにカーブの部分がベースに食い込んでいくようなギミックを作りました。メカ担当が何度も図面を引き直すなど苦心した部分です。


傾きが0度(直立)の状態では,下のほうまでキレイなカーブを描いた本体デザイン


傾けていくと,ベース部分がカーブの部分に食い込んでいくことで,デザインと安定性を両立

ZDNet : 本体色は白と黒がありますが,どちらが人気となっていますか。また,ほかのカラーバリエーションの可能性は?

国則氏 : 白のほうが若干人気があるようです。開発段階では白と黒以外にも青やピンクなど数多くのカラーリング候補がありましたが,インテリアの中に置いた場合,スタンダードな白と黒が一番あわせやすかったのです。ただ,白と黒にも明るさや質感など微妙に違うバリエーションを試作して,最適なものを採用しました。今後,色を増やす予定は今のところありません。


開発段階では白と黒以外にも青やピンクなど数多くのカラーリング候補があった

ZDNet : 15.3インチワイド液晶の評価も高いのですが,ワイド液晶の搭載は当初からの予定でしたか。

国則氏 : いいえ。バイオWは,ローアングル・ワイドボディの新感覚デザインは最初からあったものの,ワイド液晶の採用はコスト面から当初は考えていませんでした。しかし,昨年春頃から液晶が値下がりし始めたことや,デスクトップPCならノートPCにないような広い画面を訴求したかったこともあり,大画面ワイド液晶の採用となりました。

 昨年夏ぐらいに液晶の値段が上がるのではという時期があってドキッとしましたが,結局昨年末から今年初頭にかけての液晶価格が底だった時期に生産することができました。そういった意味では,市場投入のタイミングにも恵まれたのかもしれません。最近は液晶の値段が上がっているので,バイオWの企画が半年以上遅くなっていたら,ワイド液晶を採用して,このスペックでこの価格を実現するのは,難しかったのではないでしょうか。

ZDNet : といいますと,今後のバージョンアップでは,価格が上がる可能性もあるということですか?

国則氏 : これはバイオWに限らずデスクトップPC全体にいえることですが,液晶パネルやメモリが不足しており,今年に入ってから部品価格が急騰しています。メーカーとして最大限努力していますが,今の状態が続くとデスクトップPCの価格に反映せざるをえないでしょう。

 この状況は当社だけに限ったことではなく,業界全体で懸念されていることです。これまでのPCは,性能が上がって値段が下がるという図式で展開してきましたが,今年はPC価格が上がる可能性も考えなければならないかもしれません。

ZDNet : バイオWの今後の展開について教えてください。

国則氏 : 2月に発売したばかりなので,デザインに関しては当分このスタイルでいくつもりです。しかし,完全にリニューアルしたカタチでやりたいことは一杯あります。まだ公表できる段階ではないですが,バイオWで提案したPCとAVの融合という路線をさらに加速していくことになるでしょう。とにかく,次期バイオWも,ユーザーがこれまで見たこともないものになるのは間違いありません。

 バイオWを発表した時,あるPC批評家に“キーボード一体型PCなんか売れるわけがない”と一蹴されました。売れない理由として「ノートPCの利便性である可搬性が全くない。一方,デスクトップの魅力であるハイスペックでもない。こんなないないづくしのPCがユーザーに売れるわけがない」というのです。ウェブで開発予告をしたときも,ユーザーからかなり否定的な意見が多く寄せられました。  しかし,最近のPC,特にデスクトップはどのメーカーも同じようなスタイルで,スペックの違い程度しかなかったのも事実です。私自身も,最近のPC業界は刺激がないと思っていました。きっとユーザーも同じように思っていたのでしょう。そこにバイオWが受けた理由があるのかもしれません。

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