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2002/03/20 23:59 更新
コピーコントロール付きCDが先週から発売され、多くの話題を提供している。しかも、実際に施されたコピーコントロール技術が“貧弱”であったため、多くのPCでリッピングなどの行為ができてしまうことが確認されている――というより、あまりの多くの機器でコピーできてしまうといっても過言ではない。
そこで、インターネット関係などのデジタル著作権分野に詳しい田島正広弁護士に、今回のコピーコントロールCDの、法的な関係について話をうかがった(聞き手・構成、北川達也)。
――エイベックスが発売したコピーコントロール付きCDですが、先週発売が開始され、すでに各所で大きな話題となっています。コピーコントロールが施されていることから、リッピングなどを行ってしまうと著作権法第30条の例外規定「技術的保護手段の回避」にあたるのではないかと思うのですが……。
田島正広弁護士(以下、田島氏):今回のケースでは、どうやらユーザーが購入したCD(コピーコントロール付きCD)をPCにいれて、やってみたら記録できたというケースが大変多いようですね。
著作権法第30条第1項第2号は、著作物について技術的保護手段の回避行為を伴わない私的範囲の複製を許していますが、この場合は、コピーを行っても、「回避行為(技術的保護手段を回避したということ)が存在しているといは言えない」可能性が高いです。
というのも、ユーザーは、技術的保護手段を回避しようとして、何かをやっているわけではないからです。例えば、Macintoshなどでは、搭載しているソフトが自動的に作成しているようですね。つまり、ユーザーが、回避行為を行おうとする以前に、リッピングやコピーができてしまっているわけです。
専用ソフトウェアを使用するとか、特別なハードウェアを必要とするとかなら話はべつですが、今回のケースでは、そういったことはないようです。
つまり、技術的な保護手段はかかっているといえるが、技術的保護手段としては、「不十分」だった。そのため、回避行為が行われてない、ということになる可能性が高いのです。
――不十分だったために何も意図せずできてしまうということですか……。それは、コピーコントロール機能と言えないのでないでしょうか?
田島氏:一般の方からみるとそうかもしれませんが、エイベックスとしては、(コピーコントロールを)かけているつもりだと思います。ただ、回避措置を“意図的”にとらなくても、できてしまう、ちょっとひどい言い方ですが、その程度の保護手段だったということです。ですが、何かをかけているのは間違いありません。一応、技術的な保護手段といえるでしょう。
ただし、何も意図せず、リッピングやコピーができてしまうことを考えると、ユーザーが意図せずできてしまう部分をコピーするということは、回避にはあたらないとしか言えません。
――では、技術的保護手段の定義とは、どういったものだと思えばよいのでしょうか?
田島氏:法は、もっと“高度”な技術的保護手段を想定しているはずです。例えば、先ほど説明したように、コピーするためには、専用のハードウェアやソフトウェアが必要になるなどの“特別なもの”を使用しなければできないようなものです。
――というと。DVD-Videoなどのようなコピーコントロールを考慮して規格化が行われたものということになりますね。DVD-Videoなら通常CSSというコピープロテクトが入っていますし、それを外さないとコピーできませんから。
では、具体的に何パーセントぐらいの機器で技術的保護手段が有効なら、よいのでしょうか?
田島氏:それは、個別の行為として見る必要があります。まず、リッピングに専用のソフトやハードウェアを使ったり、なにか“小細工”を必要とするケースが、法が制限しているところの回避行為といえます。
ただし、あまりにも簡単にできてしまうと、それはどうかと思います。つまり、あたり前にできればできるだけ、回避行為にならなくなります。一概にパーセンテージだけでは割り切れないのです。結局、回避行為をどれだけ行っているかが問題となります。
――というと音楽CDのようにもともと技術的保護手段を考慮していなかったものに技術を施した場合は、どう考えればよいのでしょう?
田島氏:今回のように技術的保護手段が施されたものをコピーする場合に複製権の侵害にあたるかどうかをみるためには、2つのステップあります。1つは、回避行為といえるかどうかで、次が、それを知りながらやっているかどうかです。
従来やっていたようにして、コピーができてしまう場合は、回避行為とはいえないでしょう。今回のケースでは、コピーコントロールがあるとユーザーは認識してるが、特段信号の除去ないし改変を行っているとは言えないでしょうし、仮にドライブ内で何らかの改変行為が自動的に行われるとしてもユーザーがそれを意識しているとは思えません。というのも、今までどうりにやったらできたわけですから。
ただし、ごく一部のケースでは、異なります。例えば、何度もいっているように専用のハードウェアが必要だったり、ソフトウェアが必要だったりするケースや“微調整”をおこなう必要があるときなどは、ユーザーが信号の除去ないし改変をそうと知ってやるということになります。
これは、そうした手法を用いれば保護手段の信号を除去“できる”と知ってやるわけですから、複製権の侵害にあたることになるでしょう。
[北川達也,ITmedia]
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