News 2002年3月29日 09:25 PM 更新

シロウトによるシロウトのためのEOS D60出荷製品版レポート(1)

3月30日に発売されるキヤノンのデジタル一眼レフ「EOS D60」。その製品インプレッションをお届けしよう。

 3月30日,2000年に発売されたキヤノンの低価格デジタル一眼レフEOS D30の後継機,EOS D60が出荷される。下手の横好きシロウトカメラマンである筆者は,先代モデルとなるD30を持ち出し,事もあろうかレビュー記事を掲載したことがあったが(12月5日の記事参照),今回もまた,早々にD30を処分。都内が大雨となった3月27日,一足先に出荷版のD60を購入した。シロウトカメラマンの筆者だが,D30での経験を踏まえつつ,D60の使い心地と写りを試してみた。

見た目以上に改善された600万画素モデル

 さて,デザインからもわかるとおり,D60はD30に総画素数約650万,有効画素数約630万の高解像CMOSセンサーを搭載したモデルである。細かなスペックはキヤノン販売の該当ページを参照頂きたい。

 見た目の違いは端子類のカバーが一体になり,紛失しにくくなったことや,“DIGITAL”というロゴが正面右下に入り,エンブレムがD30がD60へと書き換えられた程度。おっと,モードダイヤルの上部が黒からシルバーに変更されたのも違いのひとつだ。パッと見た感じで両者を区別できるのは,デジタル一眼レフに強い興味がある人だけだろう。


モードダイヤルのトップがシルバーに変更されたほか,レンズマウント近くに「DIGITAL」の金属プレートを加えた


D60の背面 シンクロ端子とリモコン端子のキャップはD30では別々だったが,D60では一体化され紛失しにくくなっている

 従って,非常に残念なことではあるが,今ひとつ高級感に欠けるボディの品質感はそのまま。ニコンのD1シリーズやキヤノンのEOS-1Dと比べられるものではない。端子類の配置も全く同じで,PCとの接続に利用するインターフェイスもUSB 1.1のままである(もっとも,1394やUSB 2.0を使いたいなら,それぞれに対応したCFリーダを使った方が高速な転送を行える)。

 ただ,EOS D30で特に不満の声が挙がっていたいくつかの機能,および高画素化に対応するための仕様変更などは,見た目からはわからないほど多数存在する。順に列記していきたい。

  • AF感度の改善

 D30ではオートフォーカス対象物の明るさが,2EV以上でなければオートフォーカスが働かなかったが,今回の製品では0.5EVから動作するようになった。ちなみに現行の中級以上の銀塩AF一眼レフは-1EVぐらいからオートフォーカスが動作可能であるため,これでも1.5EVほど水を開けられている。

 とはいえ,以前とは比べものにならないほど暗い場所でのオートフォーカスは改善された。またオートフォーカスを補助するための補助光ランプも,以前よりも有効に機能するようになったという。

 ただし,明暗を問わずフォーカスフレーム中のコントラストが低いとピントが合わなかったり,ピントを迷った挙げ句にピンが抜けてしまうという症状は(その頻度こそ低くなった気はするが)相変わらず。補助光ランプも位置はそのままであるため,使用しているレンズ次第でケラレやすいのも同じ。

 D30からの買い換えを狙っているユーザーは大きな改善を期待すると肩すかしを食うだろうが,広い心を持って接すれば「おっ?良くなったじゃん!」と思うハズ。1日半,使った感じでは,とりあえずAFで困ることはなかった。

 ただし,相変わらず動きモノには弱く,AI Servoモードで追いかけながらシャッターを切ってみると結構ピン抜けが多い。もちろん,上手な人ならば問題ないんだろうけどね。

  • ファインダー内表示の充実

 フォーカスフレームのスーパーインポーズ表示が搭載された。これまで,フォーカスフレームの選択やピンが来ているフレームの位置表示は,ファインダー画像下の液晶ディスプレイが担当していたが,D60ではきちんとファインダー画像上でフォーカスフレームがピカリと光る。

 そのおかげで空いた液晶ディスプレイ部には,カメラの画像バッファが残り何枚か?を表示するようになった。ついつい無駄にシャッターを押しがちなデジタル一眼レフでは,いざというチャンスにバッファがゼロなんてこともあるものだが,残りコマ数が見えるためそうした無駄な連射をしなくなった。

  • レリーズラグの短縮

 D30はレリーズラグ(シャッターボタンを押してから実際に撮影されるまでの遅延時間)が長目で,高速な一眼レフを使っていたユーザーには不評だったが,D60ではこれが短縮されている。実際にどの程度なのか数値は不明だが,D30と比較すると小気味よく撮影できるのがわかる。実用十分なレベルと感じるが,高級機には敵うほどではない。

  • フォーカシングスクリーンの改善

 フォーカシングスクリーン(レンズからの映像を結像させる半透明スクリーン)が変更され,D30よりもピントの山が掴みやすくなった。解放F値の明るいレンズなら,マニュアルフォーカスも問題なくできる。ただし,普及型ズームなど暗めのレンズでは難しく感じる。もっとウデがあれば問題ないのかも知れないが。

  • ステータス表示パネルが照明付きに

 本体右上のステータス表示パネルにLED照明がついた。D60には照明ボタンが取り付けられていないが,SETボタンを押し下げることで照明をオンにできる。ただし,出荷状態では照明機能はオフになっているため,利用したい場合はカスタムファンクションで設定変更しなければならない。

  • 出力画像のローノイズ化

 1ピクセルあたりのフォトセンサーは小さくなっているが,出力画像のノイズは逆に減っている。同じISO値ならばD30と同等かそれ以下のレベル。ただしD30にあったISO1600がなくなり,最高感度はISO1000になった。ISO800時にもD1xのISO400と同等か,多少落ちる程度のノイズレベルに収まる。

 ISO1600がなくなった理由は不明だが,ISO1000時の画像はノイズレベルこそ低めだが,ダイナミックレンジや階調性が落ちるため,ISO1000あたりが実用上の限界なのかもしれない。

 また長時間露光時のランダムノイズがほとんどなくなっているのが画期的。D30に搭載されたノイズ減算処理によるノイズリダクション機能は,ローノイズ化に伴い削除されている。別途,参考の画像を紹介するが,30秒露光でもほとんどランダムノイズが出ない。

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[本田雅一,ITmedia]