News 2002年3月29日 09:25 PM 更新

シロウトによるシロウトのためのEOS D60出荷製品版レポート(2)

  • 撮影バッファの改善

 D60はD30の約2倍に相当する画素数を持つが,RAWモードを含む全モードで連続8コマの毎秒3コマ連射を実現している。また処理シーケンスが変更されており,すべての撮影データは一端RAWデータとしてバッファに溜め込まれ,その後,別バッファにJPEGで圧縮(RAWモードではロスレス圧縮)を行いながら転送を行う。

 別バッファに転送された時点で使用されていた1次バッファがクリア,再利用可能になるため,連射を中断するとどんどんバッファが空いていく。2次バッファのデータをCFに書き込み完了しているかどうかは関係なく,1次バッファの空きに応じてシャッターを切れるのは便利。

 秒3コマで完全に連続して撮影できるコマ数は8コマだが,断続的にレリーズするならD60の方が遙かに軽快な操作を楽しめる。

  • RAWデータにMedium Fineのデータを添付

 RAWデータから簡単にJPEGを取り出せるように,Medium FineのJPEGデータを付加して記録するようになった。ただし,付属するパソコン側のソフトはこのデータを有効に活用してくれないため,JPEGデータを抽出して利用する以外の使い道がない。RAWの件に関しては別途報告する。

  • RAWデータコンバータの改善

 RAWデータコンバータが,EOS-1Dと同様の操作性を持つものになった。ただしRAWの現像アルゴリズムは大きな変更がないようで,EOS-1DのRAWコンバータほど高速に変換できない。またホワイトバランスの設定など,様々な面で使いにくく,大量のデータ処理に難点がある。これも別途,項目をもうけて説明する。

  • JPEG記録時の現像パラメータを改善

 D30ではJPEG記録を行う際の現像パラメータは,あらかじめPC側のソフトで設定したセットを記録しておき切り替えるだけだった。しかしD30では現像パラメータのセットをカメラ単体で編集できる。またシャープネス,色の濃さ,コントラスト以外に,肌の色合いをピンク系かイエロー系に振るためのパラメータが新たに加わっている。

  • そのほか

 起動時間が高速化され,電源オンで2秒以内には撮影可能な状態になる。そのほか,画像再生など様々な面で操作性が向上しているため,D30ユーザーがより良いD30を求めて購入するのもアリだと思う。画素以外に良くなったところが多いためだ。

いくつかの問題点

 元D30ユーザーとしては,機械的な部分での不満がある程度解決されただけでも満足しているが,さらにこれだけ解像感の高い絵を記録してくれる。買い換えて損は無かったと思っている。しかし,それでも気になる部分はいくつかあった。

  • RAWコンバータの機能と性能

 D60のRAWコンバータは非常に遅い。偽色緩和をオンにしていると(デフォルトでオン),Pentium 4/1.7GHzで30秒近くかかってしまう。おまけにRAWデータコンバータのサムネイル表示は,画像をキャッシュしてくれないため,スクロールするたびにいちいちRAWデータから画像を生成する。これも非常に遅い。

 D60のRAW/JPEG同時記録はRAWデータにJPEGが埋め込まれた形になっているが,これは逆の方が使いやすいのではないだろうか? JPEGデータとしてsRGBのJPEGを表示できるビューアはたくさんある。それらを使って,RAWのプレビューを高速に行えるメリットは大きいと思う。高速なJPEGビューアで1次セレクションを行えるからだ。RAWデータ自身は,JPEGファイルの巨大なタグデータとして添付すればいい。

 また,RAWコンバータのホワイトバランス調整機能は非常に使いにくい。基本的にプリセットの切り替えとスポイトツールによる白色点指定しか行えず,いくつかの画像に対して指定した同じ色温度を適用する機能もない。

 同一光源で撮影した複数の写真を,RAWコンバータの中で最適なホワイトバランスを探し,それを一括適用したり,ホワイトバランスのパラメータをファイルで保存し,再利用するといった機能があると便利だと思うのだが,現状でそのような使い方はできない。

  • sRGBカラースペースしか利用できない

 デジタルカメラが撮像するCCD(あるいはCMOSセンサー)から生成するビットマップデータには,非常に多くの情報が含まれている。その中にはsRGB以外の色情報も含まれているが,D60はsRGBでの出力しかサポートしていないため,sRGBの外にある色をプリンタなどの出力機に伝えることができない。

 本体に機能追加をしてほしいとは言わないが,せめてRAWコンバータから現像する際には,カラースペースをより広いもの(Adobe RGBなど)に設定できるようにしてほしい。

  • オートホワイトバランス

 おそらくオートホワイトバランスのアルゴリズムにも手が加えられているのだろうが,D30と比べて改善された印象は無かった。その場の雰囲気を残す絶妙なホワイトバランスに調整されることもあるが,反面で寒々しい色へと変換される確立も決して小さくはない。

 正しい評価を得るためには,もっと多くの撮影を重ねる必要があるが,今のところはプリセットやマニュアル設定の方が具合は良さそうに思う。

  • やっぱりD30ライク

 かなり改善され,使い始めは快適さを実感するD60だが,やっぱり慣れてくると快速の高級一眼レフが懐かしくなる。比較的安価とは言え,絶対的な金額では高価なデジタル一眼レフだけに,どうにも納得できない人もいるだろう。

 また,動きものを捉えられるだけのAF性能も欲しいところ。EOS-1Dはオーバースペックだが,D60ではストレスが貯まる。そんなユーザー向けのハイアマチュア向けモデルが,スッポリと抜け落ちている。個人的には納得できたD60だが,こだわり派にはいまだ不満が残るボディ性能ではある。

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関連リンク
▼ キヤノン販売 EOS D60製品紹介ページ

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[本田雅一,ITmedia]

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