News 2002年4月1日 11:08 PM 更新

1万円台のフォトプリンタをチェックしてきました(1)

神鋼電機が発表したフォトプリンタ「COLOR PET」は,高画質な昇華型熱転写方式を採用しながら,1万9800円という従来機の半分近い価格が話題となっている。同社を訪ねて,話題の低価格フォトプリンタをチェックしてきた。

 神戸製鋼グループの神鋼電機が先日発表したフォトプリンタ「COLOR PET」。画質に定評がある昇華型熱転写方式を採用し,銀塩写真のプリントサイズに近いEサイズ(82.5×117ミリ)のフチなし印刷が可能なスペックを搭載しながら,1万9800円という従来機の半分近い価格が話題となっている。「コンシューマ向け商品の市場投入は50年ぶり」という同社を訪ねて,話題の低価格フォトプリンタをチェックしてきた。


昇華型熱転写方式を採用した1万円台のフォトプリンタ「COLOR PET」

 今回の“1万円台フォトプリンタ”は,“神鋼電機”という,一般ユーザーにはあまり馴染みのないメーカーが発売している点が興味深い。実は,同社は昇華型プリンタのOEM供給メーカーとしては業界最大手。CTスキャンなどの医療用からCAD出力用,印刷のカラー校正(プリプレス)用などに使われているほか,コンビニに設置されている情報端末の印刷システムやDPEショップのデジタルプリントシステムなどに,同社の昇華型プリンタが使われている。特に,若者を中心にいまだに人気の“プリクラ”のプリント機構では,同社が半分以上のシェアを占めている。

 今回の新製品は,業務用の昇華型プリンタで培った技術を,一般家庭向け製品に応用。さらにサーマルヘッドを含めてほとんどの部品を自社で開発することにより,1万9800円という価格を可能にした。「実売では1万円台半ばぐらいになるとみている」(同社)。

 本体の操作部は,印刷ボタンが1つのみというシンプル構造だ。「徹底的なコストダウンをはかるため,印刷枚数や印刷プレビューを確認するためのディスプレイや液晶パネルなどは装備しなかった」(同社)。  画像の確認撮影した画像をプリントサービスや家庭のプリンタで自動的にプリントするための情報を記録することができるDPOF(Digital Print Order Format)に対応しており,デジカメ側で印刷枚数やトリミング設定などを行っておけば,あとはプリンタ任せで印刷できる。


メモリカードを入れ,印刷ボタンを押すだけで高画質デジタルプリントができる

 本体にはPCカードスロットを装備し,各種アダプタを介してメモリカード内のJPEG画像を読み込んで印刷できる。同社で確認済みのメディアはコンパクトフラッシュ,メモリースティック,スマートメディア,SDメモリーカードの4種類。USBなどのPCインタフェースは装備していない。「メモリカードを入れ,印刷ボタンを押す,という2ステップだけで写真画質のプリントができるのは,初心者ユーザーや非PCユーザーにとっては逆に使いやすいのでは」(同社)。

階調豊かな“真の写真画質”が可能な昇華型熱転写方式

 昇華型熱転写方式で銀塩にせまる高画質印刷ができることは以前から知られていたが,同方式のフォトプリンタが実売で4万〜8万円と高価なこともあり,1万円台から買えるインクジェット方式に押されていた。さらに,インクジェットプリンタでも“写真画質”をうたったものも増えている。  しかし,インクジェットの印刷方式は,インクを付けるか付けないかという2値記録によるもの。ドットの集まりで階調表現をしているため,階調数を上げるとその分だけ解像度が低下するというデメリットがある。各メーカーではこれを補うために,ドットを微細化やインク色数の増加,異なるドットサイズインクの混在などの工夫を凝らし,なんとかインクジェット方式で階調を表現しているのだ。

 これに対して昇華型熱転写方式は,1つ1つのドットで色の濃淡が表現できるため,高解像度を保ちながら細かな階調表現ができる。例えば,今回のCOLOR PETでは,256階調(1670万色)の連続階調が表現できるのだ。306dpiという解像度や994×1410ピクセルというプリント画素数などのスペックだけみると,2880dpiをうたうインクジェット方式の方が高画質に思えるが,「1ドットで256階調表現できる昇華型の306dpiは,通常のインクジェット方式では4896dpiに相当する」(同社)。

 実際にCOLOR PETで印刷したサンプルをチェックしてみた。


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[西坂真人,ITmedia]