News 2002年4月23日 05:13 PM 更新

エプソン,重さ1.9キロで2000ANSIルーメンの液晶プロジェクタ

 セイコーエプソンが,3板式液晶プロジェクタでは世界最軽量となる約1.9キロという軽量ボディながら,2000ANSIルーメンという高輝度を実現したモバイルプロジェクタ「ELP-730」を発表した。

 セイコーエプソンは4月23日,3板式液晶プロジェクタでは世界最軽量となる約1.9キロという軽量ボディながら,2000ANSIルーメンという高輝度を実現したモバイルプロジェクタ「ELP-730」を発表した。4月下旬の発売で,価格は69万8000円。


2000ANSIルーメンで1.9キロのモバイルプロジェクタ「ELP-730」

 好調なデータプロジェクタ市場の中でも,人気となっているのが持ち運んで使える“3キロ以下のモバイル機”と,実用的な明るさの“1000〜3000ANSIルーメンクラス”。「この2つの市場ニーズは,2005年にかけてさらに急伸していく。逆に,5キロ以上のデスクトップ・据置型や,1000ANSIルーメン以下の暗いタイプは,横ばいもしくはダウンしていくだろう」(同社)。


“軽量”“明るい”が人気プロジェクタのキーワード

 しかし,現在市場で売られている3キロ以下のモバイル機は,ほとんどが1500ANSIルーメン以下。一方,2000ルーメン以上の明るい製品は,4キロ以上のいわゆるデスクトップ機が中心だ。「“モバイル機は便利だけど暗い”というのがこれまでの定説。屋内で照明を消さずにプロジェクタの画面を投影しようとする場合,やはり1500ANSIルーメン以上は必要となる。軽量でなおかつ明るいプロジェクタが,市場で望まれていた」(同社)。

 小型で高輝度な今回の製品作りに貢献したのは,プロジェクタのキーデバイスを数多く生み出している同社の技術力だ。プリズム,偏光変換,インテグレータ,POP,TFT液晶パネルなど,液晶プロジェクタを構成する要素技術は,ほとんど同社が開発したもの。特に光学系に強いのが同社の強みでもある。「特許取得数も,国内プロジェクタメーカーではトップ。特許の内訳も光学系から機構,回路まで多岐にわたる」(同社)。

 従来製品に比べ小型・短光路化を実現した新開発の「集光型インテグレーター光学系エンジン」や,開口率が20%アップした新スタック構造の「ドリーム2液晶パネル」による高輝度化,高密度実装と回路のシンプル化によって従来電源に比べて半分の重さとなった新開発の小型電源など,キーデバイスに強い同社ならではの新技術が盛り込まれている。


新開発の「集光型インテグレーター光学系エンジン」

 そのほかでは,電源を入れてプロジェクタを置くだけで,スクリーンに投影された縦方向の台形歪みを自動的に補正する「自動台形歪み補正機能」が装備されている。「傾斜センサが本体の傾きを感知し,傾斜量から台形歪みを自動補正する。モバイル機ならではの使いやすさを求めた」(同社)。


電源を入れてプロジェクタを置くだけで,台形歪みを自動的に補正する

 国内のデータプロジェクタ市場は,台数ベースで2000年が対前年比158%,2001年は同123%と,長引く不況下で情報関連機器が軒並み前年割れとなる中,非常に好調に推移している。このような好調なデータプロジェクタ市場の中で,同社は2000年が同190%,2001年が同134%と,いずれも市場規模を上回る成長を遂げた。10数社が競合する激戦のプロジェクタ市場で,同社は30.8%とトップシェアを確保している。「2002年の市場規模は,対前年比138%の16万台と予測されているが,当社では対前年比178%を目指している」(同社)。


国内のデータプロジェクタ市場

 今回の新製品は,社内や社外でのプレゼンテーションや会議,セミナー利用など,主に企業ユーザーをターゲットとしている。一方,ホームシアターへの関心の高まりから,プロジェクタ各社は一般家庭向けにも力を入れ始めている。  今年1月にホームシアター分野への本格参入を発表したものの,すでに家庭用製品を市場投入して成功しているソニーやプラスビジョンなどと比べると出遅れた感のある同社だが,今回の新製品に盛り込まれた軽量・高輝度化のノウハウは,家庭向けにも十分生かせる技術だ。  「ホームシアター向けのプロジェクタは,現在はマニアのマーケットとなっている。しかし今後は,かつてのステレオのようにマニア向け商品から大衆商品へと変わっていくと考えている。ただ,大きな家屋が多い米国や中国の方が,日本よりもさらに大きなマーケットがあると思っており,海外も視野に入れた展開を考えている」(木村登志男専務)。

 なお,輝度が1500ANSIルーメンのほかはELP-730と同機能の「ELP-720」(59万8000円,5月上旬発売)と,2500ANSIルーメンのXGA機「ELP-820」(79万8000円,4月下旬発売),2000ANSIルーメンのXGA機「ELP-811」(69万8000円,5月上旬発売)の3機種も合わせて発表された。

 ELP-730の主な仕様は以下の通り。

型番ELP-730
方式3原色液晶シャッター式投影方式
液晶パネル0.9型ポリシリコンTFT液晶
画素数1024×768×3(横×縦×枚数)
輝度2000ANSIルーメン
コントラスト比400対1
ズーム比1対1.16
台形歪み補正自動補正(縦)
対応ビデオ信号NTSC/PAL/SECAM,D1(480i)〜D4(720p)
対応PC信号VGA/SVGA/XGA/SXGA/UXGA
サイズ276(幅)×190(奥行き)×70(高さ)ミリ
重さ約1.9キロ
価格69万8000円
発売時期4月下旬

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[西坂真人,ITmedia]

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