News 2002年6月6日 11:59 PM 更新

車載用HDDに求められるものは?

HDDの新しい市場として、車載機器での利用が挙げられている。HDDメーカーの間では、今後の需要の起爆剤との期待も高いが、当の車載機器メーカーはどう見ているのだろうか

 HDDの新市場として注目されている車載用HDDだが、当の車載機器メーカーはHDDをどう見ており、いつ頃どのように搭載が進むと考えているのだろうか。電子情報技術産業協会(JEITA)がこのほど磁気記憶装置に関する調査結果を発表したが、その中で車載機器メーカーの意見が紹介されている。その声を拾ってみると――。

 まず最初にHDDの現在の市場動向を見ると、2001年のHDD全世界出荷台数は1億9195万台。対前年比2%減だった。2000年までずっと右肩上がりだったのが、初めてマイナスに転じている。これはもちろん、コンピュータ需要の減少が原因だ。

 しかしJEITAでは、2002年以降は回復基調に転じ、2004年の全世界出荷台数を2億6998万台と予測している。「大容量化、高速化、ローコスト化などHDDの技術革新は依然としてめざましく、PCでの主要な外部記憶装置としてのHDDの地位は今後も変わらない」(JEITA)。

 しかし理由はPC市場の回復だけではない。ゲーム機や車載用、家電向けなど、非PCの新市場が立ち上がるということも、需要増の理由には含まれている。なかでも特に大きな市場として注目されているのが、車載用HDDだ。

 今回の報告で掲載されている車載機器メーカーの意見は、JEITAが昨年末、カーAV機器メーカーを中心としたに車載機器メーカーを対象に行ったアンケート結果がベースになっている。それによると、車載市場においてHDDが有望な用途としてメーカー側が見ているのは、カーナビ、カーAVシステム、オーディオ、マルチメディア対応車載PCなど。このうちカーナビ/オーディオ分野では2001年からHDD搭載製品が登場しているが、メーカーサイドでは2002〜2004年頃にはそのほかの分野でもHDDの搭載が始まると予測していた。

 車載機器メーカー側がHDDに注目する理由、つまりHDDの長所としては、最も多かったのが「アクセス速度の速さ」。ほかにCD-ROMやDVD-ROMと比べて「データ記録可能なこと」や「単位容量あたりの価格が安いこと」などが挙げられた。

 一方、短所としては、「静電気や温度管理に注意が必要」な点や、「温度範囲が狭くて車載規格に合致しないものが多い」点などを指摘。「車の中は過酷な温度条件になることがあるので、温度範囲はマイナス20度から80度までは必要との意見もあった。そのほかでは、やはり振動が多い車に搭載するため、耐衝撃/耐振動性を懸念する声も多い」(JEITA)。

 車載機器に求められるドライブの容量という問いでは、10G〜40Gバイトというものが多く、特にオーディオ用途では10Gバイト以下の小容量のHDDを望む声が寄せられたという。

 調査を行ったJEITAでは、この調査結果について次のようにまとめていた。「HDDは大容量化が進んでいるため、小容量で低価格の製品が少なくなっているが、低価格なら用途の可能性も広がる。商品サイクルが激しくて製品寿命が短い点も、カーAV機器メーカーがHDD採用を見合わせる理由となっている。HDDメーカーはぜひこのような点を改善してもらいたい」(JEITA)。

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関連リンク
▼ 電子情報技術産業協会(JEITA)

[西坂真人, ITmedia]

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