News | 2002年6月11日 10:08 PM 更新 |
6月11日、「IT生活の新世紀―ブロードバンドとユビキタス時代を迎えて」をテーマにした2002年版「情報化通信白書」が発表された。同白書は、日本情報処理開発協会(JIPDEC)がその年の日本国内の情報化動向をまとめたもので、2002年版で通算36冊目となる。毎回、テーマを設定して全体の動向をまとめる総論、「電子商取引」など各分野の動向を紹介する各論、ならびに統計データから構成されている。
情報化白書を担当したJIPDECの高橋眞理子調査課長は、「2001年は、IT不況の年。暗い話題ばかりだった。それだけに、ユビキタスやブロードバンドといった今後のIT生活の主軸となるテクノロジーには大いに期待したい」と、情報化白書の担当者として感想を述べた。しかしながら、総論の中では、なかなか厳しい指摘が数多く見られる。
例えば、ブロードバンドの普及状況については、「(2005年に3000万世帯という)e-Japan戦略の目標達成も現実味を帯びてきた」としながらも、「現段階でのブロードバンドへのニーズは、これまでの速度と料金に対する不満の裏返しにすぎない」と指摘。さらに、「今後、キラーコンテンツとして何か登場するか、消費者ニーズはリッチコンテンツに向かうのか予想できない。映画や音楽はネットではなくても手に入る。ネットという流通経路が単なる選択肢として追加されるだけという恐れもある」と続ける。
また、情報通信ネットワークが社会インフラになってきたことにより、「システム停止やデータの漏えい、プライバシー侵害など、故意であろうと事故であろうと異常時の被害は非常に大きくなってきている」と警鐘を鳴らす。「タイミング的に2002年版への掲載は間に合わなかったが、みずほ銀行のトラブルや、防衛庁の個人情報収集など、実際に問題が表面化している」(高橋氏)。
情報化白書では総論を、「ITのメリットが十分に具現化されていないことに目を向ける必要がある」と結んでいる。
「外出先から家庭内の機器を操作することは技術的に可能であり、2005年の生活環境に導入されているかもしれない。しかし、実際に普及するかどうかは、生活のニーズに立脚しているかにかかっている。不便、不安や不満を感じていなければそこにニーズはない」(同白書)。
セキュリティ・プライバシー関連に強い関心
また、JIPDECでは白書の作成に際して、「IP-VPN」「VoIP」の導入状況など、企業の情報化の進展具合についても調査を実施した。
同調査によれば、企業におけるIP-VPNの導入状況は、20.7%だった。内訳は、「自前のVPN設備により導入済み」が8.1%、「ネットワーク側のVPN機能により導入済み」が12.6%。また、規模別では、大企業での導入率が高く、従業員数が5000人を超える企業での導入率は46.9%、1000〜4999人の企業が31.0%と、1000人以上の企業で全体の8割を占めた。反対に、100人未満の企業での導入率は12.1%にとどまっている。
一方、VoIPの導入状況は、「既に導入している」と答えた企業が5.9%、「導入の予定である」企業が2.2%。まだ導入率は低調。「検討を行ったが、導入を見送っている」とうい企業も13.8%あった。「導入の検討を行っている」企業は14.4%だった。
また、情報化関連のトピックに関する意識調査を行ったところ、「コンピュータウイルス」がトップになった。このほか、「コンピュータ不正アクセス」「個人情報保護」など、セキュリティ・プライバシー関連の話題が注目を集めており、JIPDEC「セキュアなシステムへの関心の高さが浮き彫りになった」とまとめている。
なお、JIPDECでは調査の実施にあたり、同協会が保有するユーザーリストから29業種、約9700の事業体を抽出。アンケート用紙を配付し、1598の回答を得た。
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[中村琢磨, ITmedia]
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