News:ニュース速報 2002年6月11日 06:29 PM 更新

1平方インチに1テラバイトを実証 IBMのナノテク「Millipede」


 米IBMは6月11日、超大容量データを記録する独自のナノテクノロジー「Millipede」(開発コードネーム)を利用し、1平方インチ(6.45平方センチ)当たり1T(テラ)ビットの記録密度を実現できることを実証したと発表した。

 Millipedeは「パンチカードのナノテク版」(IBM)。磁気などを使った従来のデータ記録方式に換え、薄いプラスチックフィルムに個々のビットを表す微細な穴(マーク)をあける方式でデータを記録する。今年2月に都内で開かれた「IBMフォーラム 2002」でも紹介されていた(2月27日の記事参照)。



パンチカードのナノテク版ことMillipede。極薄のフィルムに穴をあけてビットを記録する。マルチアレイ方式(下)によりデータ転送速度を向上させようとしている

 実証に使われたアーム型装置(カンチレバー)の先端部は、直径10ナノメートル(0.01μメートル)の穴をあけることができる。3ミリメートル四方の範囲にアームを1024本(32×32本)使用した実験装置で1平方インチ1Tバイトの記録密度を実現できると証明した。


Millipedeプロジェクトは、走査型トンネル顕微鏡の開発で知られるスイス・チューリッヒのIBM Reserchが進めている。画像は1平方インチ1Tバイトの可能性を実証したMillipedeチップ。7×14ミリのチップ中央に、3×3ミリのデータストレージ領域が見える

 カンチレバーはU字型のシリコン製で厚さ0.5μメートル、長さ70μメートル。長さ2μメートル未満の下向きの先端部を持ち、2次元配列されている。タイムマルチプレックスにより各カンチレバーに個別にアクセスし、並列動作させることができる。



U字型のシリコン製カンチレバー(上)。カンチレバー多数をチップ上に2次元配置する(下)

 読み取りや書き込みなどの動作は、厚さ数ナノメートルのポリマーフィルムにカンチレバーの先端部を接触させることで行われる。書き込みは、カンチレバーに組み込んだ抵抗器を約400度まで加熱し、ポリマーに食い込ませることで行う。読み込み時は抵抗器の温度を約300度に下げ、穴をあけずにデータを読み込める。上書きの際は、新たにあけたい別の穴の縁が古い穴をふさぐことでデータを消去する。10万回超の書き込み/上書きサイクルを実証しているという。

 先端部のデータ転送速度はまだKbps単位にとどまっている(配列全体で数Mbps)が、1〜2Mbpsの転送速度を実現できることが初期実験で示されているという。

 次は7ミリ四方に4096本(64×64本)のカンチレバーを備えた装置を2003年初めに完成させる予定。同装置が実現すれば、10〜15Gバイト程度のデータストレージを一般のフラッシュメモリ程度のサイズに収めることが可能になるとしている。

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