News 2002年6月12日 11:13 PM 更新

Kodak会長兼CEOが来日――有機ELなど新市場開拓をアピール

来日した米Eastman Kodak会長兼CEOのDaniel A. Carp氏が、都内ホテルで事業活動の近況などを報告した

 コダックは6月12日、米Eastman Kodak会長兼CEOのDaniel A. Carp氏来日にあたり、都内ホテルで近況報告会を開催。国内の取引先関係者やマスコミなど約1300人を集め、同社の事業活動について説明した。


来日したEastman Kodak会長兼CEOのDaniel A. Carp氏

 「デジタル化の到来で、時代は200年に一度あるかというぐらいのドラマチックな変化を迎えている。そしてデジタル化がもたらす“デジタルイメージング”の世界が、我々にさらなる成長のチャンスを与えている」。

 長い歴史を持つ写真の技術と、デジタル化の流れとが融合した「デジタルイメージング」が、同社のビジネスを広げていることを冒頭で訴えたCarp氏は、同社が狙う「INFO IMAGING」市場を紹介。Information TechnologyとImaging Scienceを組み合わせた同社の造語であるINFO IMAGINGの市場は「全世界で2250億ドル(約30兆円)に及ぶ」という。2250億ドルの内訳は、サービス&メディア分野が1350億ドル、デバイスとインフラの分野がそれぞれ450億ドルずつ。

 「この巨大な市場には多くの企業が参入しているが、1社で6%以上のシェアを持つ企業はまだ現れていない。だからこそ、このINFO IMAGING市場は、Kodakにとって大きなチャンスとなる」(Carp氏)。

 INFO IMAGING市場でのシェア獲得にあたって、Carp氏は次の4項目を最重要戦略として挙げた。

  • Expand the Benefits of Film(フィルムのもたらす利益のさらなる拡大)
  • Drive Image Output in All Forms(あらゆる画像出力の推進)
  • Facilitate Ease of Use in Digital Imaging(デジタル画像の使いやすさの追求)
  • Develop New Business in New Markets(新市場開拓に向けた新規事業の創出)

 特に4番目の新規事業では、日本でも注目が集まっている次世代ディスプレイ「有機EL」への取り組みに力を入れている点を強調。有機ELに関する数多くの特許を保有する同社は、三洋電機との合弁会社「エスケイ・ディスプレイ」を昨年12月に設立。岐阜工場でアクティブマトリックス型有機ELの生産を開始している。


次世代ディスプレイ「有機EL」への取り組みに力を入れている

 「フルカラーで高コントラスト、省電力で動画性能に優れた薄型ディスプレイが有機EL。これに関する特許は数多く取得していたが、生産にあたってのビジネスパートナーが欲しかった。ディスプレイ生産で優秀な技術を持っている三洋電機とのアライアンスで、工場での生産も軌道に乗りつつある。この事業が順調に進めば、有機ELのビジネスはどんどん拡大していくだろう」(Carp氏)。

 ただ、同社が早い時期に取得した有機ELの特許のいくつかは、期限切れを迎えている。この件に関してCarp氏は「特許が切れるというのは、むしろいいこと。技術がオープンになれば、たくさんのプレーヤーが参加してくる。それが、有機ELの市場活性化につながる。しかし、一方で我々は有機ELに関する新しい特許をどんどん取得している。こうした特許力は、この分野におけるKodakの優位性をますます確固たるものとしている」と語る。

 同社の特許取得数は、2000年が900件以上、2001年が700件以上と全世界のトップ20に入る特許取得数を誇る。

 「我々の技術の基盤は、この数多くの特許にある。このような“革新”が、INFO IMAGINGという新市場で競争していくためには必要となる。今、ビジネスは大きく変貌しており、繁栄のチャンスがある。皆さんと一緒に新市場を開拓していきたい」(Carp氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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