News 2002年6月18日 09:56 PM 更新

家電向けHDD――開発は“Microsoftの電話”で始まった

Seagate Technologyが6月3日に発表した家電向け普及型3.5インチHDD「U Series X」。この新しいHDDについて、同社のセールス&マーケティングマネージャーが、その開発経緯や特徴、ターゲット市場などを語った

 Seagate Technologyが6月3日(現地時間)に発表した家電向け普及型3.5インチHDD「U Series X」。この新しいHDDについて、来日した同社CEシニア・セールス&マーケティングマネージャーのRob Pait氏が、その開発経緯や特徴、ターゲット市場などをマスコミ向けに語った。


家電向け普及型3.5インチHDD「U Series X」

 U Series Xは、ゲーム機やオーディオ機器などの家電市場に向けた新設計のHDD。標準容量は20Gバイトだが、MicrosoftのXbox向け特別仕様として10Gバイト版も製造する。現在Xboxは、Western Digital製のHDDを採用している。いつ頃U Series Xが搭載されるのか、またSeagateがXbox用HDDの独占サプライヤーになるかどうかについては、明らかにされていない。

 Pait氏によると、新HDDの開発は約2年前に始まった。「ワシントン州のとある小さな会社――Microsoftと言うのだが(笑)、その会社からの“299ドルのゲーム機を出すからHDDを作ってくれ”という電話があった。それがU Series X開発のきっかけだった」(Pait氏)。


同社CEシニア・セールス&マーケティングマネージャーのRob Pait氏

 「本体が299ドルしかしない製品のHDDを作るのは、これが初めて。そこで、HDDの構成部品でコストダウンが可能なものを全てチェックし、さらに上位HDDに採用されるような高機能を搭載しながらコスト効率の良いHDDデザインを行なうことを模索した。この検証に“Six Sigma”を応用した」(Pait氏)。

 Six Sigmaは、1980年代に品質の悪さから日本のポケベル市場への参入に失敗した米Motorolaが、日本のQC(品質管理)活動を参考にして開発した品質管理手法。General Electric(GE)が1990年代にこれを企業経営全般の改革手法に発展させ、現在では多くの電機メーカーが採用している。「Six SigmaによってSeagateは、HDD内蔵オーディオやHDDビデオレコーダー、ゲーム機などPC以外の新規市場の要求に対応できるようになった」(Pait氏)。

 U Series XではHDDの部品を最小限にするために、容量を20Gバイトという1つだけに限定(Xboxの10Gバイト版は一般への出荷はしない)。リード/ライトのヘッドは1つ、プラッタも1枚構成にして、コスト削減をはかっている。「HDDのラインアップを1構成に絞ったことで、製品テストの回数や検品行程数も減らすことができ、さらにコストを下げることができた」(Pait氏)。

 U Series Xにはコスト面以外にも、静音モーターや薄型プロファイルの採用など、家電市場向けのいくつかの改良が施されている。

 まず、「SoftSonicモーター」と呼ばれる流体軸受け(FDB:Fluid Dynamic Bearing)モーターを使っている点。これは、同社のハイパフォーマンスHDD「Barracuda ATA IV」にも採用されている静音システムだ。動作音は26デシベル(アイドリング時)で、図書館内の音(約30デシベル)よりも静かというレベルだ。

 また、サイズの制約が多い家電製品に対応するため、厚さも約19ミリと従来のHDDから約25%減らしている。これにより、「システムのエアフローが向上するなど、省スペース以外の効果も期待できる」(Pait氏)という。

 U Series Xは耐衝撃性も向上、HDD本体に設けられた「衝撃ポイント」と呼ばれる5箇所の突出部分が、落下や衝撃が加わった時のショックを低減している。「非稼動時には、最大350Gsの衝撃に耐える」(Pait氏)という。


「HDDの薄型化でエアフローが向上する」(Pait氏)

 「HDDの市場は、PCだけの領域ではなくなっている。我々はSix Sigmaを採用することで、新規市場へ迅速に対応することができた。またU Series Xの開発を通じて、より低いコストでHDDを作る技術を得た。U Series Xは、高価なHDDが持つ機能を備えており、低コストながら静音性や信頼性が高いシステムを構築できる」(Pait氏)

 OEM出荷はすでに始まっているU Series Xだが、一般市場向けには8月から本格出荷が行なわれる予定。なお、価格の発表は7月上旬になるという。

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[西坂真人, ITmedia]

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